夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

「何をしでかすか分からない男」ペテン師トランプの再登場

2024-11-09 09:28:09 | 社会

NHKより

 事前の世論調査報道を覆して、ドナルド・トランプが47代アメリカ大統領選に圧勝した。さっそくマスメディアでは、トランプが行うであろう政策をまじえて、トランプ評が盛んに掲載されている。政策としては、大統領選で繰り返し訴えた移民強制送還、輸入品への新たな関税の導入、気候関連規制の凍結、連邦保健機関の改革などが行われるだろうということである。それに加えて、多くの批評の中で、言葉に表れているかは別にして、トランプに対する共通した認識は、「何をしでかすか、その時になってみなければ、分からない」という予測不可能性である。

ペテン師トランプの再登場
 それは主に、トランプが、選挙戦で大声で語ったのは、「脱線と誇張と虚偽話、最終盤のトランプ氏演説一段と奔放に」とロイターの記事(10/30)にあるように、相手の候補をこき下ろすためのものが多く、どこまで本心で語っているのか疑わしいからであり、実際には、その掲げた政策の実現可能性は極めて低いからである。
 それは、例えば移民の強制送還でも「巨大な収容所を建設し、前例のない規模で大量国外追放を実施し、国境警備隊員を数千人増員し、軍事費を国境警備に注ぎ込み、1798年の外国人敵対者法を発動して麻薬カルテルや犯罪組織の構成員と疑われる者を法廷審問なしで追放すると誓っている 」が、「不法移民を具体的にどのように取り締まるのか、またその計画に資金をどのように投入するのかという質問には答えていない。 」(POLITICO11/6)し、移民を取り締まる国境警備隊を増加させること自体が困難なことに加え、(POLITICO11/6)移民が低賃金労働者としてアメリカ経済を支えているので、反対する者も多いなど、その実現には、多くの障壁がある。また、「3兆ドル相当の米国製品輸入すべてに10~20%の一律関税を課し、すべての中国製品に60%の関税を課す」(同上)と 言っているが、それは、中国のみならず、EUや日本などの西側同盟国とも「世界的な貿易戦争を引き起こす」(BBC11/6)恐れがあり、アメリカ共和党内からも大反対の声が上がるだろう。

 このように、トランプは選挙で勝つためなら、「何でもあり」の公約をまき散らす、所詮ペテン師なのである。
 
「何をしでかすか分からない男」の最も危険なこと
 トランプの当選で日本の石破茂も含め、世界各国の首脳は電話等で祝意を伝えた。しかし主要国の中で、ロシアのウラジミール・プーチンは、直接祝意を伝えなかった。中国の習近平国家主席が7日、祝電を送ったことと比べれば大違いである。プーチンは、ロシア南部ソチでの国際会議で、質疑に答える形で「私はアメリカ国民から信頼される国家元首であれば、どのような元首とも協力すると言ってきた」(NHK11/8)と述べ 、祝意と対話の用意があるという意思を示しただけである。2016年のトランプ第1期の大統領選勝利には、プーチンは他の国の指導者より早く祝意を表明したことと比べても大違いである。
 西側マスメディアは、プーチンはハリスよりもトランプが好ましいと考えていると報道していたが、実際には、プーチンはトランプの人間性を疑っているのである。
 プーチンが示した祝意に拘わらず、2017年にトランプが大統領に就任してからは、ロシアには制裁を強化し、ウクライナへはジャベリンミサイルを供与したのである。 11月6日、クレムリンの報道官ドミトリー・ペスコフ氏は トランプに対し、「我々が話しているのは、直接的にも間接的にも我が国に対する戦争に関与している非友好的な国だということを忘れてはならない」 (アルジャジーラ11/7)と言ったが、それは、ロシア政府全体のトランプに対する不信感を表している。
 要するにロシア政府は、ハリスの政策は予測可能だが、トランプは予測不可能であり、多くの西側メディア同様に「何をしでかすか分からない男」と見ているのである。

 トランプは、度々「ウクライナ戦争を1日で終わらせる」と豪語しているが、どうやって終わらせるのかについては、まったく口にしない。しかし、トランプはロシアとウクライナは交渉すべきと主張しているが、そのヒントが垣間見えることがある。
 ロイター は6月5日、「ドナルド・トランプ米大統領の主要顧問2人が、大統領選挙でトランプ氏が勝利した場合、ウクライナにおけるロシアの戦争を終わらせる計画をトランプ氏に提示した。計画には、ウクライナが和平交渉に参加した場合にのみ米国から武器が提供されると伝えることが含まれている。同時に、米国はモスクワに対し、交渉を拒否すればウクライナへの支援が強化されることになる、と警告するだろう、とトランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官の一人、キース・ケロッグ退役中将はインタビューで語った。」と報じている。
 その後も、西側メディアで数多く報じられているのは、トランプはゼレンスキーとプーチンを交渉のテーブルに着かせようとしているのは間違いないということである。その交渉の条件は「ウクライナは領土の一部を放棄し、一定の軍事力の強化をアメリカは支援するがNATO加盟は諦める。ロシアは、占領したウクライナ東部の一部を返還し、今後の侵攻をしないと確約する、というものになるだろう」という。そして、トランプは戦争をやめさせた勝者として、自らを誇る、というものだ。
 確かに、この推測の信憑性は高い。しかし、この条件は、ウクライナ側が今まで固執し、徹底した抗戦を続けてきた理由の「領土の不可分」を認めないものであり、ゼレンスキーが飲むとは考えられない。アメリカの支援がなくても、ヨーロッパ諸国の支援が増大すれば、戦闘は可能だと主張するだろう。また、この案にヨーロッパ諸国は反対するのは目に見えている。
 和平案が通らなければ、「何をしでかすか分からない男」は、正反対の強力な軍事力の行使を模索する。「力による平和」を合い言葉にしているトランプが選択するのは、交渉がダメなら「力」の行使である。トランプは、バイデン政権がしなかったこと以上の決断するだろう。まず、バイデンが認めなかった、ゼレンスキーが再三要求した長距離ミサイルのロシア深部への攻撃を許可する。また、アメリカ共和党内の強硬なタカ派が主張してきたように、米軍の直接派兵である。ロシアを軍事力で圧倒し、屈服させ、「戦争を1日で終わらせる」。上記のキース・ケロッグは、ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで、トランプはかつてプーチンに「もしお前がウクライナを攻撃するなら、お前は信じられないくらい激しく攻撃する。モスクワのど真ん中でお前を攻撃してやる」と言ったことがあると語っている。
 このシナリオが、実行された時に起こることは、言うまでもない。核大国同士の世界大戦である。
 「 何をしでかすか分からない男」ペテン師トランプは、本当に何をしでかすか分からない。
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