韓国旗とアメリカ国旗を振るユン大統領支持者(エコノミストOnlineより)
ユン・ソンニョル大統領の支持者は、デモの最中に必ず韓国旗の太極旗とアメリカ国旗の星条旗を振りかざす。この支持者たちには年長者が多く、朝鮮戦争の記憶も鮮明に残っているのかもしれない。このことは、韓国では未だに冷戦が色濃く残っていることを表している。
トランプ支持者との同一性
ユン大統領支持者は、驚くほどトランプ支持派に似ている。第一にマスメディアよりも、SNSなどのネット情報を信用している点である。そもそも、ユン大統領自身が、YouTubeの情報に影響され、戒厳令を発令した可能性が高い。与党のキム・ウン 元議員ですら「(尹大統領が)YouTubeを見るのはもうやめてほしい。このままでは私たちは皆死んでしまいます。沢山の方々の声に耳を傾けてほしいです」(TBS news degital12/14)と言う。熱狂的トランプ支持者も、マスメディアをまったく信用せず、SNSの情報を基に行動していることが知られているが、ユン・ソンニョル個人も含め、その支持者もSNSを過度に信用しているのは間違いない。
さらに、ユン大統領支持者には、キリスト教福音派が多数いるのも、トランプ支持者と共通している。キリスト教福音派は、キリスト教右派を代表しており、そのイメージやレトリックから、アメリカを理想的なキリスト教社会と見做している。それに敵対するものは、すべて共産主義者であり、「悪」evilなのっである。(トランプも度々、民主党の政策を「共産主義」と攻撃している。)その同じ論理から、韓国の野党は、「共産主義者の手先」であり、「北朝鮮の手先」なのである。ユン・ソンニョルが、「北朝鮮からの攻撃がある」として、戒厳令を発令したのも、野党を「北朝鮮の手先」と見做していることによる。
トランプは、「偉大なアメリカを取り戻す」と言うが、ユン大統領支持者にとっても、「漢江の奇跡」と呼ばれた韓国の著しい経済成長期があり、その時代に「いい思い」をした層が、ユン大統領支持者だと考えれば、彼らにとって、その「良き時代」を潰したのが、民主派である。その末裔が今の野党に当たる勢力であり、彼らが野党に激しい反発心を持つのは理解しやすい。
色濃く残る東西冷戦
第二次世界大戦終結後、朝鮮半島は北がソ連軍、南はアメリカ軍が駐留し、1950年から1953年まで、朝鮮戦争が勃発したが、アメリカは、それ以前の1948年から、イ・スンヒ(李承晩)を大統領に据え(表向きは選挙があったが、すべてアメリカの管理下で行われた。)、反共産主義の旗印の下、独裁政権を容認し、全面的に支援した。アメリカでは常に、国家の安全保障が民主主義に優先するので、独裁政権であろうと国益のためには支援するのである。
1960年には、民主派はイ・スンヒ政権を打倒したが、1961年に軍事クーデターで政権を掌握したパク・チョンヒ(朴正煕)は、アメリカの絶大な支援を背景に、独裁政権と経済開発を推し進めた。その結果が、「漢江の奇跡」であり、その高い経済成長は、1988年ソウル・オリンピックを開催するまでに至っている。それは、反共・極右勢力にとっては、「偉大な」な時期であり、パク・チョンヒの娘であるパク・クネが2013年に大統領に就任できたのも、この反共・極右勢力の強い後押しによる。ユンの与党支持者は、野党支持者よりも、年齢が高い。それも、年齢が高いほど、「偉大な」な時期の記憶が鮮明だからである。その人たちにとっては、アメリカはその時代を取り戻す大いなる見方なのであり、アメリカの星条旗は、彼らの守護神なのである。
1月19日、ユン・ソンニョルは内乱罪の容疑で法執行当局に逮捕されたが、ユン支持派の怒りは収まらないだろう。今後、どのような展開になるのかは、まったく予想がつかない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます