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旧吉田家住宅:柏市

2018年01月18日 | 古民家っていいなぁ。(千葉県内)

吉田家は代々名主の役を務める大型農家で、建造物は、江戸末期から明治期前半にはほぼ現代と同様の構成となりました。

名字帯刀を許された士分格の家柄・豪農・商家といった3つの側面をもった大型民家の屋敷構えが特徴です。
現在の屋敷構えは、銅版画(明治27年)に描かれた姿がほぼそのまま残っています。

敷地面積6,518坪(21,511㎡)という広大な土地に、建築面積330坪(1,178㎡)の邸宅が建っています。

平成22年には、敷地内の8棟(主屋、書院、新座敷、向蔵、新蔵、道具蔵、長屋門、西門)が国指定重要文化財になりました。

「主屋」。寄棟造、茅葺。左側が土間、中央に張り出している「帳場座敷」、その右に式台のある玄関。

平成16年に柏市に遺贈され、修理工事の後、平成21年11月に「旧吉田家住宅歴史公園」として開園しました。屋敷前面に広大な芝生広場もあり、文化と自然をゆったり満喫できる公園です。
生け垣・板塀の後ろに見える建物は、元は醤油醸造場があったところで跡地は現在も吉田家の方がお住まいです。

主屋(1,854年築)。国指定重要文化財(※以前の建物からの建て替え)
およそ20mにもおよぶ構えの巨大な茅葺き民家。重厚な茅葺屋根は軒先で厚みが1mもあるそうです。

主屋の3間飛ばしの差鴨居と大黒柱(高さ約7m)

主屋の小屋組み。防火対策として漆喰を塗った梁。下には昔、5連のカマドがあったそうです。

主屋の右側に「式台」を設けた武家風の「玄関」(10畳)

この玄関は来客専用で家人、使用人は使用できません。

真ん中に突出した「帳場座敷(3畳)」。琉球畳が敷かれ、外から室内が見えにくいよう緑のガラスが使用されています。

土間から見て右が「店」、左が「台所」、奥が「茶の間」。梁も大黒柱も格段に太いものが使用されています。

右側が「長屋門」(1,831年築)、左は「向蔵」

 
門入り口の左右には、“馬つなぎ”と思われる三角形の石が等間隔にが並びます。

全長25m、幅5mにも及ぶ巨大な「長屋門」です。

門構えは総欅造り。門扉は欅(けやき)の一枚板で、門柱と「八双金具」で支えられています。門前の」「ソメイヨシノ」は樹齢80年といわれています。
※八双金物(はっそうかなもの):門扉・板戸などに打ち付ける装飾用の金具。

長屋門西蔵・東蔵(米蔵)の内壁は白漆喰仕上げの真壁で、米俵などで壁が傷まないように内壁全体に斜め方向に板が張り詰められています。

長屋門西蔵には、「長屋門カフェ」があり、喫茶・休憩スぺースとして活用されています。

敷地内から見た長屋門。唐草瓦と鬼瓦に吉田家の家紋「剣片喰(けんかたばみ)」が使われています。

「新蔵」(1,833年築)。国指定重要文化財 ※向蔵と同時期に建設
木造2階建て。柱に厚板を落とし込んだ板倉構法。1階の壁はねずみ漆喰、2階は白漆喰仕上げ。
“ねずみ漆喰”とは漆喰に灰を混ぜたもの。徐々に水分が抜け色が薄くなる。

主に農具類を納めていおり、壁にかけられている梯子なども当時のものです。現在1階は展示室として活用されています。

「向蔵」(1,833年築)。敷地内に現存する唯一の土蔵。2階建てで主に宝物類を納めており、𠮷田家の蔵の中でも最も格式の高い上質な造りとなっています。

「向蔵の鬼瓦」。吉田家の家紋「丸に剣片喰」の左右と下に波模様がデザイン。大棟は「青海波積み」


 
「書院」(1,854年築)。(主屋建替え時に新築)

書院庭園の「アオギリ」。青桐は中国では鳳凰が住む樹とされ、松戸の「戸定邸」などにも植栽されています。
 
12畳半の前座敷(西室)と同じく12畳半の奥座敷(東室)からなります。
奥座敷(東室)には床の間と脇に「付け書院」が設けられ、三方に120㎝の広縁を設けた正統派の客座敷です。

花菱組子の欄間。

釘隠し。他に「柏の二ツ葉」と「鶴」の釘隠しもありました。今ついている物はレプリカだそうです。

新座敷へ渡る廊下。絨毯が敷かれ、窓はサッシになっています。

「新座敷(西室、東室各2部屋)」(1,865年築)。家人の住まいなので書院に比べると質素な造りになっているそうです。

庭園の入口。奥に見えるのが「書院」です。

書院から見た「書院庭園」。左側に「アオギリ」が植栽され、中央に「七重の塔」が据えられています。

南東から見た書院庭園。奥が書院。右側に「松の木の庭門」が見えます。

平成24年9月には庭園及び屋敷林などが「旧吉田氏庭園と」して「国登録記念物(名勝)」に登録されました。

新座敷前の枯山水の庭園

吉田家は大規模な農業を営みながら代々名主の役を務め、穀物商を営むなど在郷商人として成長。
江戸後期には醤油醸造業に進出し、醤油の醸造は大正11年(1,922)に経営権を野田醤油㈱(現キッコーマン)に譲渡し廃業するまで、約100年間営んでいました。
1,826年からは幕府の軍用馬を放牧する「小金牧」の管理にあたる「牧士(もくし)」を務め、士分格の地位(名字帯刀、乗馬、鉄砲所持)が与えられていました。


旧吉田家の入園料は、60歳以上(大学生、高校生も)は100円とありがたい料金です。(大人:200円、中学生以下・障害者:無料)
今年開園10年目を迎え、総来場者数12万人を突破しました。「華之井市場」や「富士見軒森シェフのランチ」、「箏の演奏・体験」、「写真展・ 教室」などの催しも多彩です。
所在地は常磐道柏I.Cから約4Kmです。
(解説の一部は、公式HPより。詳細は公式HPをご覧下さい)

<追録>


 
長屋門前の「ソメイヨシノ(染井吉野)」が咲いた時の写真が見つかりました。