■「広島・長崎 原爆投下」『ドキュメント第2次世界大戦1』コスミック出版
企画 CINEMA LIFE LTD.
日本降伏直後に、広島・長崎に入ったアメリカ調査団の報告と宣伝を兼ねたフィルム。
爆心地から建物までの距離、建っている方角、材質、等によって破壊度を検証しているところが尤もらしい。ちなみに、消滅した大半の建物の間に例外的に残った建物にスポットを当てていること、工業施設や交通施設の破壊に焦点を絞っていること、人間の被爆状況については、視覚的にも言語的にもなんのレポートも含まれていないことに注目すべきである。とくに長崎の描写では、爆発高度を調整したがゆえに、地上での被爆はほとんどなかった、と述べている。
広島にいて被爆したドイツ人牧師(ジョン・ジーマス)にインタビューして「客観的な」印象を求めているところが面白い。はじめ日本人はアメリカ人を軽蔑していたが、B29による本土空襲が始まると、技術力に尊敬の念を抱くようになった、という観察は面白い。戦争体験者に私が聞いた範囲でも、当時の国民の意識はその通りだったようである。
ジーマスの言にあったが、総力戦という前提のもとで原爆投下が正しいかどうかという問題と、総力戦そのものに対する倫理的問いかけは区別されなければならない。国民感情からすると、私たち日本人は、「原爆投下は悪だった」に違いないと思い込む。しかし、前提や視点によって見方が全然違いうることは意識せねばなるまい。日本より遥かに激しく長期にわたる空襲に耐えたドイツと、戦争末期の5ヶ月間に集中的に爆撃された日本とを比較することで、「無差別爆撃」について考えるとよいだろう。
参考図書
A・C・グレイリング『大空襲と原爆は本当に必要だったのか』河出書房新社
大内建二『ドイツ本土戦略爆撃』光人社文庫
前田哲男『戦略爆撃の思想―ゲルニカ・重慶・広島』凱風社
ロナルド・シェイファー『アメリカの日本空襲にモラルはあったか』草思社
ロナルド・タカキ『アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか』草思社
↑ ここから2007年前期の「アメリカ圏研究」&「文学講義」
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企画 CINEMA LIFE LTD.
日本降伏直後に、広島・長崎に入ったアメリカ調査団の報告と宣伝を兼ねたフィルム。
爆心地から建物までの距離、建っている方角、材質、等によって破壊度を検証しているところが尤もらしい。ちなみに、消滅した大半の建物の間に例外的に残った建物にスポットを当てていること、工業施設や交通施設の破壊に焦点を絞っていること、人間の被爆状況については、視覚的にも言語的にもなんのレポートも含まれていないことに注目すべきである。とくに長崎の描写では、爆発高度を調整したがゆえに、地上での被爆はほとんどなかった、と述べている。
広島にいて被爆したドイツ人牧師(ジョン・ジーマス)にインタビューして「客観的な」印象を求めているところが面白い。はじめ日本人はアメリカ人を軽蔑していたが、B29による本土空襲が始まると、技術力に尊敬の念を抱くようになった、という観察は面白い。戦争体験者に私が聞いた範囲でも、当時の国民の意識はその通りだったようである。
ジーマスの言にあったが、総力戦という前提のもとで原爆投下が正しいかどうかという問題と、総力戦そのものに対する倫理的問いかけは区別されなければならない。国民感情からすると、私たち日本人は、「原爆投下は悪だった」に違いないと思い込む。しかし、前提や視点によって見方が全然違いうることは意識せねばなるまい。日本より遥かに激しく長期にわたる空襲に耐えたドイツと、戦争末期の5ヶ月間に集中的に爆撃された日本とを比較することで、「無差別爆撃」について考えるとよいだろう。
参考図書
A・C・グレイリング『大空襲と原爆は本当に必要だったのか』河出書房新社
大内建二『ドイツ本土戦略爆撃』光人社文庫
前田哲男『戦略爆撃の思想―ゲルニカ・重慶・広島』凱風社
ロナルド・シェイファー『アメリカの日本空襲にモラルはあったか』草思社
ロナルド・タカキ『アメリカはなぜ日本に原爆を投下したのか』草思社
↑ ここから2007年前期の「アメリカ圏研究」&「文学講義」
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