【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(57)
夕方4時40分ごろから東の空に大きな月が出始めた。窓から見える満月が何とも奇麗だ!
俳人であれば、この感動をどのように詠むのだろう。エッセーを書くことになってもう1年以上になるが、私はぐだぐだと日頃の出来事を綴ることしか出来ない。
故郷での同窓会には新幹線を利用しての出席なので、出かけたついでに、関東勢が中心となった有志8人で三重県のイルミネーションで有名な「なばなの里」に行った。園内の木々に装飾電球が施されたのを見上げながら進んでゆく。
やがて数多の電球で出来た光のトンネルがあり、それを通り過ぎると、国内最大級のスケール、クォリティも最高峰のイルミメーションが現れる。この秋からのメインテーマは「さくら」で、花鳥風月がモチーフ。次々と彩が変わって日本の景観、四季を表現するのだ。その全体風景を見るために、少し高い所に設置した場所からの眺めは壮観であった。
長島温泉で1泊し、次の日は名古屋である。「なごや観光ルートバス」に乗り、最初は名古屋城で降りた。正面入り口から入ると、天守閣の金の鯱と同寸だというものがあって、城をバックにして記念撮影を勧めていた。
それを横目にして、実は歴史にもお城にも詳しくないが、本丸御殿が400年前の姿を昨年6月に蘇らせたということで見学する。まだ木の香りがする中、狩野派の見事な襖絵の数々を見た。どこに行ってもアジア系の観光客が多いが、スマホのカメラでの撮影に余念がないようだ。
次いでトヨタ産業技術記念館へ。入り口の近くに、綿の木があった。トヨタと言えば車と思うが、当初は紡織からだったのである。綿から糸撚り機にかけて糸を作るが、その機械がどんどん進化していく様子が実演されて面白い。その機械の変遷、そして自動車の部品製造機械など、順を追って見学できる。
モノつくりの楽しさを子供から大人も楽しめるように、最新の織物までのテクノロジーに目を見張る。常に最先端の技術発展に目を向けた姿勢から、次世代の車産業へと躍進していった。時代の先駆けを心がける企業では、産業ロボットへの取り組みもあるのだろう。AIを駆使したロボットのヴァイオリンの演奏は、見学者の目を惹く。
こうした見学は、目新しいことを知ることの喜びもあるが、同級生との遠慮のない会話は常に笑いが優先している。日頃の生活でのドジ話を誇らしげに語り、夫との食い違い話などは、大いに共感を得るものだ。帰りの新幹線での会話の締めくくりは、次に会う日の約束をする。
さて、家に戻れば、これからの予定を再確認してその準備に入る。まずは、白井健康元気村のパークゴルフ大会だ。天気予報では良好なので一安心し、参加される方の過去の実績などを参考にして組み合わせをする。メールの点検も忘れてはならない。9日の元気村の「村会」と公園清掃にも参加することに。
手作り教室の先生から「ギャラリーウォークへの出品」の依頼がある。これは白井市内の何か所かを拠点にして、市民の制作品(陶器・手芸品・絵画など)を展示・販売をするらしい。我が家の近くには「彩美」というギャラリーがある。他にも「けやき」とかあるようだが、私たちの参加場所は、「清戸のちえのわ」という所だ。これから制作するのは間に合わないが、今までの手持ちの作品から、出品できるものの点検をする。
11月10日は、私の住まいの「秋まつり」があったが、9日、10日は白井市市民音楽祭。10日はコーラス部として参加した。エントリーは5曲あって、練習日毎に録音し家事をしながら聞くことを繰り返し、楽譜を見ながら注意点に気を配ってきた。まぁ、うまく出来たのでは、と自画自賛しておこう。
この両日は天皇陛下即位の国民祭典が盛大に挙行されたことで、関心事はそちらに比重が大きくなる。録画も怠りなくしたが、厳かな行事が繰り広げられていく中、ミーハーな私は「嵐」の奉祝曲が何といっても関心事となる。天皇のライフワークが「水」ということで『Ray of Water』(水に差し込むまばゆい光の意)が歌われた。
東日本大震災の復興ソング『花は咲く』の作曲家・菅野よう子であることは、まずは関心と安心がある。作詞はNHKの朝ドラ「ひよっこ」の脚本家・岡田恵和なのも、なるほどと思わせる。正装し緊張の面持ちの嵐の5人が「♪君が笑えば世界は輝く」と、歌い始め、分かりやすい詞での歌声は、心に響き始めた。
テレビの画面が時折天皇や皇后に変わるが、にこやかな面持ちから、歌の持つ意味合いを汲み取られたのか、雅子皇后の目が潤み始めるのがわかる。「なんて良い歌なのだろう」と、私もすっかり魅了された。雅子妃の涙は皇后の決意と今までのことも含めての感慨であろうか。
♪大丈夫 水は流れている 大丈夫 海は光っている
大丈夫 君と笑っていこう 大丈夫 君と歩いて行こう
最後のほうの「大丈夫」と繰り返される詞だが、安らかな気持ちと元気になれる、覚えやすい曲になっている。私も歌えるようになりたい。これからも、毎日何かしらの行事があって出歩くことが続くことだろう。何とか元気に過ごしたいものだ。