竹内正右さんの「ラオス秘密戦争」
今春、米ウィルソン・センターのテーマに
▲モン特殊攻撃部隊(『ラオス秘密戦争』より)
▲モンの指導者バンパオ将軍(『ラオス秘密戦争』より)
世界中の機密情報がデジタルアーカイブに
米ウィルソン・センターは、2025年春のテーマの一つとして「ラオスの秘密戦争」を選びました。米国の外交政策や世界情勢を研究・分析し、政策立案者やステークホルダーが世界の動向を理解できるように支援するのが同センターの目的です。
とくに同センターのデジタルアーカイブは、世界中から集められた国際関係、外交に関する独自の資料や機密文書にアクセスすることができるので、世界中の研究者やジャーナリストの利用者が少なくありません。
ところで、なぜ同センターが「ラオスの秘密戦争」を今春のテーマの一つにしたのでしょうか。
1975年4月に南ベトナムの首都サイゴンが共産勢力によって陥落した4カ月後、ラオスも共産化されました。それからちょうど50年経ったこともあるでしょう。それはともかく、このテーマにもっとも詳しい人物が、本ブログにたびたび登場するフォト・ジャーナリストの竹内正右さんです。
共産化されたラオスから西側ジャーナリストのほとんどが逃げるように去りました。しかし、竹内さんは居座り続けます。こうして「ラオスに竹内あり」という伝説が世界中の東南アジア・ウォッチャーの間に広まりました。
帰国後もラオスから目を離すことがなかった竹内さん。ベトナム戦争中、CIAに協力した少数民族モンに注目します。共産政権からの弾圧から逃れるため、約23万人ものモンがアメリカに移住しました。竹内さんは彼らを追ってアメリカへ。こうして『ラオスは戦場だった』『モンの悲劇』の著書を世に問います。
同センターに資料提供した竹内さん
そして昨年5月1日、日本語と英語を併記したデジタル本『ラオス秘密戦争:インドシナ戦争の源を追った唯一のフォト・ジャーナリストの記録(The Secret War in Laos)』を出版します。
本ブログでも「モン族を追い続けたフォト・ジャーナリスト 竹内正右さんが和英併記のデジタル本で世界に問う!」というタイトルで紹介しました。
同書は、出版直後から東南アジアを取材してきた世界中のジャーナリストや研究者に注目されましたが、米ウィルソン・センターも関心を持っていたようです。
早速、同センターから竹内さんが接触しました。今春のテーマの一つに選ばれたことを受け、竹内さんはこれまで公表されなかった貴重な写真や文献などを同センターに提供してきました。
ビエンチャン陥落後も隠密裏に取材し、アメリカ在住のモンにも聞き取り調査と写真撮影を精力的に行ってきた竹内さん。ラオス現代史の数少ない目撃者の資料は、きっと世界中の東南アジア研究家やジャーナリストの注目を集めることでしょう。(山本徳造/本ブログ編集人)
その内容は―
[目次]
まえがき
第1部 秘密戦争
第2部 共産主義者の勝利のあとで
第3部 ラオス退役軍人会の息子たちはイラク戦争に
あとがき
Contents
Preface
Ⅰ A Secret War
Ⅱ After the Communists took power
Ⅲ Sons of Lao Veterans join the Iraq War
Postscript
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【竹内正右(たけうち しょうすけ)さんの略歴】
フォト・ジャーナリスト。1945年、旧満州国吉林生まれ。早稲田大学では山岳部に所属。1970年に卒業後、ラオス、ベトナム、カンボジアの激動するインドシナを取材する。とくにラオスでは1973年から82年まで撮り続けた西側のフォト・ジャーナリストとして有名。1975年にビエンチャンが陥落するが、その歴史的瞬間に立ち会う。ベトナム軍のカンボジア侵攻を取材中の1979年、ポルポト軍に捕まる。その後、スリランカ暴動、フィリピンのアキノ暗殺とマルコス政権の崩壊、ビルマ・クーデター、天安門事件、チベットなどを取材。1989年からCIAに協力したラオスの少数民族、モン族を追ってアメリカへ。著書は『ラオスは戦場だった』(めこん)、『モンの悲劇』(毎日新聞社)、『ドキュメント・ベトナム戦争1975』(パルコ出版・共著)など。著作以外では、NHK・BSドキュメンタリー「ケネディの秘密部隊―ラオス・モンのパンパオ将軍」(1999年)、「ダライラマ亡命の21日間」(2009年)を制作・出演した。