【連載エッセー】岩崎邦子の「日々悠々」(76)
志村けんさんの訃報ニュース。仰天というか、やっぱり駄目だったのか。小さな子供から大人まで誰をも明るく笑わせ、喜ばせ楽しませてくれ、人々に心のオアシスを与え続けてくれていた。残念で残念で残念でならない。
「桜隠し」となった3月29日の日曜日、満開の桜を雪が隠すというその風情を、自慢のカメラに収めて、一句、吟じるのも一興もの。だが、東京の桜名所に人の姿はまばら。それは雪のせいではなく、週末の都心への外出自粛が出ているためと思われる。
新型コロナの怖さは、高齢者も中・高年・若者も認識の甘さがあった。無症状であっても、ウイルスに感染している可能性があることを、心に響かせねばならない。一向に収束の兆しさえも見られず、それどころか日々刻々と新型コロナウイルスの感染者数は、世界のあちこちで驚異的に増え広がっている。
日を追うごとに、マスコミを通じて知るニュースで、今まで知らなかった単語が並ぶ。すでに、パンデミック(世界的大流行)やクラスター(集団感染)については、知り得た。もっと過激なオーバーシュート(爆発的感染)や、ロックダウン(都市封鎖)とした危機感を伝える言葉が使われるようにもなった。
都内へは不要不急の外出自粛だけでは手ぬるいのではないかと、識者が伝えている。ロックダウンに関しては、国としても各都市圏においても、おいそれと実行できないのは、相当の経済への打撃が大きいという懸念があるからだろう。
白井市の公民館や各施設なども5月半ばまで使用禁止されたこともあり、私も友人たちも密接・密集・密閉の環境の恐れがある所には、なるべく参加しないように、自粛生活は2月半ば頃からしている。孫(娘の長女)は日本のI大学で寮生活をしているが、春休みとなって3月6日に我が家にやってきた。
久しぶりにアメリカへ帰ることになり、娘からのリクエストによる買い物の数々をしたり、しばらくは食べられないからと、回転ずしに行ったりして過ごし、9日には成田からアメリカに飛び立っている。
すでにアメリカ西海岸ではコロナ騒ぎが大きくなっている。私たちは諸々のことを、心配をしたのだが、孫が飛行状況を検索してみると、搭乗便は客のキャンセルは沢山出ているが、欠航にはなっていない。座席はガラ空き状態であることで、左右前後に誰も来ない席を確保したのだそうだ。
ニュージャージー州のニューアーク空港には早めに到着し、入国審査もアメリカ人だからか、日本から到着ということも不問のまま、2週間の自宅待機の要請もなく、あっという間に通過出来たという。娘も孫も私たちの杞憂など介していない様子だった。が、幾日もせずアメリカのコロナ感染騒ぎは、東海岸のニューヨーク州で爆発的な感染(オーバーシュート)が出始めて、大変なことになってきたことが、娘から報告されてきた。
ニューヨークの措置は、日本より厳しい。けっして「自粛」なんてものではない。不要不急の外出禁止(夜間は外出禁止)が3月12日から始まったのだ。娘が言うには、せめてもの救いは、11日にマンハッタンでミュージカルを家族で観劇できたことだ、と。日本のテレビでも放映されていたが、いつもいつも賑わいのあるタイムズ・スクエアの閑散とした風景に、驚きを隠せない。アメリカは州によって自粛や禁止に違いがある。
娘たちが住むニュージャージー州では昼間は自粛で、夜間外出禁止に関しては、ニューヨークと同じ。次女はニュージャージー州の大学で寮生活をしている。アメリカの学校は日本のような春休みは無く、今年のイースター(4月12日)で、4~5日ほど休みとなるが、コロナ騒ぎで急に寮を追い出されて、それぞれの自宅へ。海外からの生徒にはどこかに斡旋したようだが……。
日本のニュースによると、各大学の学生寮は「病人の収容所」になるとか。私には真偽のほどは分からない。自宅待機になってから次女の授業はオンラインでされており、勉強には支障はないという。
長女がアメリカに行った当初の予定の中には、西海岸のロサンゼルス行きもあった。日本での英会話のバイト先の照会らしいが、ロスで会社を立ち上げる人からの要請があったという。コロナ騒ぎはアメリカ国内の飛行移動は、もちろん論外となって、この話は宙に浮いてしまったようだ。
こうして、長女も次女も自宅での自粛生活が始まった。ニューヨークと違って昼間の散歩くらいは許されている。マーケットの様子は、一時トイレット・ペーパーが無くなったが、すぐに解消して騒ぎはない。
客の入場には密着を避け間隔をあけることと、レジも一つ置きになっているとか。日本ではマスク不足が叫ばれているが、マスクより使い捨ての手袋をしている人が大半だという。医療に関わって飛沫感染の恐れには、マスクが重要である。接触感染(つり革・ドアノブ・手すり・スイッチなど)の防御の方がより大切として、マスクより手袋での防御の方が優先しているようだ。
長女は今、日本のI大学の3年生である。これからの勉学はどうなるのだろう。この大学の特徴で、あちこちの国からの留学生が多いので、オンラインで授業ということになるようだ。4月に日本に戻る予定だった飛行便はキャンセルをした。
日本の今は海外からの入国制限がされており、アメリカからもその対象になっている。コロナ騒ぎが落ち着き、入国制限が解けて、孫が日本に帰ることが出来ても寮生活には戻れないらしい。まだ私物などが置いたままであるが、その時は我が家で対応する覚悟も必要と思っている。
刻々と変わるコロナ情勢の中での私たちの自粛生活。テレビを見る時間が長くなりそうだが、今までよりも食生活には細かく配慮し、運動不足にも留意したい。そして気に入りの布での手仕事も頑張ろう。
感染のリスクは高齢者にあることは、重々承知している。若い人の中には、無関心か、「自分は大丈夫」という傲慢がクラスターを引き起こす原因を作っているのかも。もっと関心をもってもらいたい。ネット配信で歌声を聞かせるアイドルが「どんな夜も明けない夜はないから」と言う。海外に居る有名アスリートたちも、こう言う。「今は家に居よう」と。