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香港の「一人メシ」は楽しい 【連載】藤原雄介のちょっと寄り道㉒

2023-09-16 05:30:29 | 【連載】藤原雄介のちょっと寄り道

【連載】藤原雄介のちょっと寄り道㉒

香港の「一人メシ」は楽しい

 

香港

 


 香港滞在中の私は、お客様、下請け企業、出張者などとの会食がそこそこの頻度であり、美食を堪能する機会に恵まれていた。が、そんな美食のことは、観光ガイドブックに載っているし、下手くそなグルメリポートを書いても読者の反感を買うことが目に見えている。
 そこで今回は、残業で遅くなった日や、たまには一人になりたい日の食事、つまり「一人メシ」について書いてみよう。

 中華料理は、基本的に大人数で何種類もの料理を囲むのが醍醐味だが、一人メシの時には、個人経営の小さなレストランで「帯走(タイゾウ)」と言えば、発泡スチロールの容器に詰めてくれる。私が良く通ったのは、常宿だった Eaton Hotel向かいにあった「牛B仔」という店だ。
 無愛想なおばさんが、最小限の言葉で注文を訊く。弁当ができあがるのを所在なく待っていると、無言でお茶を差し出してくれたりする。無愛想なのではなく、照れ屋なのかも知れない。
 この店でよく食べたのは、酢豚弁当だったが、生憎写真がないので、煮豚弁当の写真を載せておく。

▲常宿の向かいの小さな食堂「牛B仔」で「帯走」と頼むと店のメニューを弁当に仕立ててくれる

 

▲煮豚弁当

 

 香港の街角の至る所に「焼味(シュウメイ)」とか「焼臘(シュウラブ)」の看板を掲げた店がある。焼味とは、下味をつけた肉を釜で炙り焼きにした料理の総称だ。
 その中でも、叉焼や鵞鳥、鶏、鳩などに秘伝のタレを塗って丹念にローストした料理のことを焼臘と呼ぶ。これをご飯や麺に載せ、トロリとした甘いタレを掛けて、ネギ塩の薬味と共にいただく。
 焼臘は元々広東料理だが、台湾やマカオでもポピュラーだ。何種類かの焼き物を選んでご飯に載せてもらうのだが、「三寶飯」といって三種類の肉を盛ってもらうことが多い。
「無茶苦茶旨い!」というのを北京語で、「口福非浅(コウフウフェイチェン)」と言うが、気前よく、厚くカットした肉片を頬張ると、正に「口の福、浅からず!」である。
 日本でもちょっと高級な中華料理屋では、焼臘が前菜として供されることがあるが、大きな皿に薄くて小さな肉片がたったの数切れ。ケチくさく、イヤ、慎ましく並んでいるのをみると、もの悲しい気分になってしまう。

 焼臘は、香港のソウルフードであり、豪快に食べるのが、あるべき姿だと私は勝手に考えている。香港の高級なレストランでも、焼臘を前菜の一部として頼むことはある。
 但し、そんな時は、その後に続く何種類もの料理の為にお腹のスペースを確保しておく為に、「(沢山食べたいけれど)敢えて、少しだけ食べる」のである。
 ああ、まどろっこしい。私の拙い言語能力ではうまく言い表せないが、どちらも少量である事に変わりはないが、「少量」のニュアンスが違うのである。


▲香港では「焼味(シュウメイ)」「焼臘(シュウラブ)の店が味を競い合う。夕暮れ時には、大量に買っていく人も

 

▲ご飯の上に山盛りの叉焼、家鴨、鶏が乗った「三寳飯」。ホテルの部屋で残業しながら食べたものだ


 たまには、フラッと小さな店に入り、麺類を頼むことも多かった。私が一番好きなのは、プリプリッの海老と豚の挽肉のペーストの餡を薄い皮で包んだエビワンタン麺(鮮蝦雲呑麵)だ。雲呑をチリソースや青唐辛子に醤油を掛けた薬味に浸して食べるのが現地流。癖になるおいしさである。
 香港では、麺類を食べるとき、一緒に「油菜(ヤウチョイ)」と呼ばれる青菜を注文することが多い。油菜とは、芥蘭(ガイラン)、菜心(チョイサム)、「通菜(トンチョイ=北京語では空心菜)」等の青菜を、油を加えた熱湯にサッとくぐらせ、オイスターソースを回し掛けるだけの料理だ。
 じつにシンプルな食べ物だが、これを一緒に食べるだけで、バランスの良い食事をしたという満足感が得られる。


▲香港支社の近くにあるエビワンタン麺(鮮蝦饂飩麵)の名店「彌敦道粥麺家(ネイトンチョッミンガー)」

 

▲プリプリッの海老雲呑がたっぷり入った鮮蝦雲呑麺

 

▲油菜


 香港には日本人にとって、変な食べ物が結構ある。下の写真は、「鰻魚套餐(マンユィタオツァン)=鰻定食」だ。奇妙な見てくれではあるが、うな丼とは別の食べ物だと割り切れば、不味くはない。


▲鰻魚套餐


「変な食べ物」をもう二つご紹介しよう。
 北京語や広東語の名称は忘れたが、常宿近くのレストランに通称'Standing Chicken'というふざけた名前の名物料理(招牌菜)がある。羽を毟られ、断末魔の表情で立ち姿のままローストされた鶏だ。「恨めしや~」の声が聞こえて来そうだ。


▲悪趣味極まりないStanding Chicken
 


「この料理、悪趣味だね。何か由来でもあるの?」

 親しくなった店のおばちゃんに訊いてみたら、
「特に意味はないのよ。ウチのシェフが冗談で作ってみたら、評判になっちゃってね」
 と言う。
 この立ち姿のままテーブルに運ばれると、客達がキャーとかワーとか盛り上がり、写真を撮りまくる。ひとしきり撮り終えたら、食べやすい様にカットしてくれるのだが、味はというと、何の変哲もない普通のローストチキンだ。
  
 最後にご紹介するのは、陝西省西安地方の名物料理ビャンビャン麺だ。幅広のもっちりした麺で、豚肉、餃子、ニンニクフレーク、刻みネギ、ごま、香菜(パクチー)など様々なトッピングで楽しむ。
 ビャンビャンとは、麺を打つときの音のオノマトペである。この「ビャン」という音を表すためだけに使われる冗談みたいに画数の多い漢字がある。なんと58画で、最も画数の多い漢字に認定されている。この漢字を空で書ける中国人は殆どいない。

▲「ビャン」という漢字は58画もある


 香港でビャンビャン麺が食べられる店の一つが、佐敦(ジョーダン)にある「有緣小敍=Yau Yuen Siu Tsui」だ。この店の名物は、ロバの肉だ。どんな味かと訊かれてもうまく説明できない。私は、単に「ロバ肉を食べたぜ!」と自慢する為に食べただけだ。辛さは小辛、中辛、大辛、特辛から選べるが、日本人は中辛までにしておくのが無難だろう。


▲ロバ肉のビャンビャン麺


▲同僚たちと「有緣小敍」の前で

 


                                    

  

【藤原雄介(ふじわら ゆうすけ)さんのプロフィール】
 昭和27(1952)年、大阪生まれ。大阪府立春日丘高校から京都外国語大学外国語学部イスパニア語学科に入学する。大学時代は探検部に所属するが、1年間休学してシベリア鉄道で渡欧。スペインのマドリード・コンプルテンセ大学で学びながら、休み中にバックパッカーとして欧州各国やモロッコ等をヒッチハイクする。大学卒業後の昭和51(1976)年、石川島播磨重工業株式会社(現IHI)に入社、一貫して海外営業・戦略畑を歩む。入社3年目に日墨政府交換留学制度でメキシコのプエブラ州立大学に1年間留学。その後、オランダ・アムステルダム、台北に駐在し、中国室長、IHI (HK) LTD.社長、海外営業戦略部長などを経て、IHIヨーロッパ(IHI Europe Ltd.) 社長としてロンドンに4年間駐在した。定年退職後、IHI環境エンジニアリング株式会社社長補佐としてバイオリアクターなどの東南アジア事業展開に従事。その後、新潟トランシス株式会社で香港国際空港の無人旅客搬送システム拡張工事のプロジェクトコーディネーターを務め、令和元(2019)年9月に同社を退職した。その間、公私合わせて58カ国を訪問。現在、白井市南山に在住し、環境保全団体グリーンレンジャー会長として活動する傍ら英語翻訳業を営む。


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