《注目の書籍》
名言名句で読む日本人の歴史
~一日一言の教養
名言名句探究会/編、さくら舎/刊
定価 2200円
聖徳太子、西行、北条政子、豊臣秀吉、徳川家康、松尾芭蕉、吉田松陰、明治天皇、中村天風、湯川秀樹、土光敏夫、美空ひばりといった日本の歴史に名を刻む有名人がなんと323人も登場するので、まさに読み応えたっぷり。一冊で何冊も読んだ気になること請け合いです。
外国の名士の発言や文書に記された名言を載せた書物は少なくありません。ところが不思議なことに、日本人の名言を集めた本はというと、数えるほどです。過去から現在に至るまで、日本は世界に誇るべき素晴らしい人物を数多く輩出してきました。にも関わらず、彼らの名言をなぜ広く伝えてこなかったのでしょうか。
先の大戦で日本は敗北したので、日本人は「日本及び日本人」に自信を失ってしまったのか。それとも明治維新からの「欧米に追い付け、追い越せ」という発想が未だに残っているからなのでしょうか。
でも、よく考えてください。世界に先駆けて、現代にも通用する小説『源氏物語』などを生み出し、短歌や俳句を詠む庶民が大勢暮らしている国、それが日本なのです。
日本に布教にやって来た宣教師のフランシスコ・ザビエルは、日本の民度の高さに驚きました。「今までに発見された国民のなかで最高であり、日本人より優れている人びとは異教徒のあいだでは見つけられないでしょう」と、イエズス会への書簡に記しています。
イギリス人女性探検家のイザベラ・バートは、不潔極まりない朝鮮を経て、明治維新後の日本へ。新潟・山形・秋田、北海道といった日本奥地を紀行しました。礼儀正しい日本の庶民、そして清潔で治安の良い日本に触れて、アジアへの見方が一変します。
他の多くのアジア諸国が欧米の植民地になったにもかかわらず、日本は独立を守り通しました。それどころか、大東亜戦争で自らの血を流しながらアジア・アフリカの独立を手助けしたのです。
これほど文化水準が高く、他人を思いやる人々が暮らす日本。そんな日本に誇りを持ってもよい筈なのに、なぜか戦後の日本人は自信を無くしたように思えてなりません。
日本の文化や伝統を大切し、日本人であることに誇りを持つ子供たちが沢山育ってもらいたいものです。そのためにも、神代の昔から現代に至る有名人の名言名句を取り上げた本書は、きっと役立つことでしょう。
最後になりましたが、この本を編集した「言名句探究会」を主宰する倉持哲夫さんは、私が畏敬する先輩の一人で、同じ職場の同僚でした。倉持さんは後に講談社インターナショナルでも辣腕を発揮し、数々のベストセラーを世に出します。
余計なことかもしれませんが、私の著書も2冊出していただきました。いずれにしても、皆さんにぜひ読んでもらいたい一冊です。(本ブログ編集人・山本徳造)
【倉持哲夫さんの略歴】
昭和21(1946)年、埼玉県浦和市に生まれる。早稲田大学政治経済学部を卒業後、浪曼(出版社)編集部を経て、講談社インターナショナルへ。編集長として辣腕をふるう。現在、日本文化・東洋思想・武道・宗教・精神世界・歴史・文学・経営・経済・建築・自然・政治・国際関係・社会・芸術・芸能・ファッション・教育・語学など幅広いジャンルの書籍(和書、英文書、対訳書)と雑誌などの企画編集・執筆・翻訳活動を行っている。日本タオイズム協会理事。