大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆来署依頼書

2014年04月01日 13時01分40秒 | 労働基準
人の心は魔物。

入社面接のときは「普通」を装って、「普通」に入社してきても、
そのうちに、社長の知らないうちに「本性」が現れだす――。

日々、労使紛争に触れていますと、「人」の本質といったものを考えさせられます。

人には優れた面もあるし、劣っている面もあります。
心の持ちようも人さまざまで、恩を忘れ、利己ばかり思い定めて
この世を利のままに生きようとしている人も、少なからずいらっしゃいます。

大抵そんな方は、入社のときは「お願いです。私を雇ってください」と頭を
下げてくるのですが、そんな謙虚? におだされて雇ってしまう「失敗」をすると
後からとんだことになります。

「自分は、妻子をかかえて大変ですから雇ってください」
「この人は他に行くところがないので雇ってあげてください」
「子供がいます。働かないと食べさせてあげることができません」

などと言われ、優しい心を社長さんが持ったからといって、そもそも
利己的にのみ生きている人には通じません、社長さんの心は斟酌しません。
これ、現実です。

ある会社では、「この人雇ってください」と薦められて、雇って1年。
同僚とけんかして有給休暇を全部使い切って退職。
その後は、お定まりの「未払い賃金請求」とやらのお手紙を出してきた人がいました。

手紙を出すということは、もう労基署へ行っていると思ってください。

社長さんが、その要求は認められませんなどとお手紙で返事をすると、
即刻、所轄労基署から「来署依頼書」が舞い込みます。

これ、お定まりのパターンです。

――「来署依頼書」。なんて、心臓に悪い表題でしょう。
しかも、具体的には何も書かれていず、「労働基準法の規定する措置の
履行状況確認のため」などと抽象的な表現で来署を命じてきます。
(労働基準法104条の2第2項)。

監督官は、労働者から労働基準法違反に関し「申告」があると、
その確認のため、使用者に報告・出頭命令を出すことができます。
それが、たとえ根も葉もない労働者の「言いがかり」であったとしても――。

初めての経験ですと、こんな来署依頼書などが来ると、ドキッとするでしょう。
「怖いので、社労士さんに代理をお願いしたい」とすぐに電話を
掛けてくる方もいらっしゃいます。
私などは、「可哀そうに」と、つい同情してしまうのですが……。

まあ、大抵、100%近く、「社労士さんに代理をお願いしたい」とか
「労基署と話し合って、何がいけないのか分かりませんが、兎に角解決していきたい」とか
社労士のところに飛び込んで来る社長さんは、誠意のある方とお見受けします。
問題を解決するために、誠心誠意、包み隠さず、努力されます。
うちに依頼される社長さんたちは、ほとんどがこのパターンですので、
問題もこじれることもなく、すーっと終焉に向かいます。

ところが、「来署依頼書」なるものを受け取って、頭にカーっと血が
のぼり、相手を恨んでみたりするような社長さんですと、どうでしょうか。
そういう方ですと、お金を払ってまで社労士に解決を依頼する発想は
ないかもしれません……。

いずれにしても、最近の人は老若男女問わず、自分が働いていた職場に
「勉強になった」「仕事を覚えられた」とか少しも肯定的にとらえず、
後ろ足で砂をかけて辞めていくようなことを繰り返している人が
増えたような気がします。

もちろん、砂をかけたくなるような会社もあるかもしれませんが、
見ているところ、ごく「普通」の会社にも、恩を仇で返すような発想の人が
増えたような気がします。

怪我の方もだいぶよくなり、長引いている風邪の方もなんとか終焉に
向かいそうです。そんな時、またしても「来署依頼書が来たんですけど……」
なんていう電話が鳴ると、身も心も業務復帰。

さてさて、もひとつ頑張ろうか、と思う今日この頃ではあります。

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