日々の事から

日々のあれこれ   by Kirari

読書記録📖

2022-03-20 18:04:19 | 
『あとかた』 千早茜 著 2022.3.20読了

表紙に小さい女の子の編み込みをした後ろ姿が描かれている。
でも、内容は全く想像をしないストーリーだった。

『ほむら』『てがた』『ゆびわ』『やけど』 『うろこ』 『ねいろ』の6話が書かれている。
登場人物の一人一人のストーリーを淡々と展開していくイメージの文章で、どれも『うーん...』と考えさせられる感じだった。
ちょっと一般的には体験できない強烈な人が多く登場したけど、世間にはこういう人たちはいそうだな、と感じる。自分が生きた環境とは重ならないし、自分はそういうとこでは生きられないなって思うような場所。

自分の存在価値とはなんだろう。
私は全くわからない。 親が厳しいばかりで、個性を認めてくれなかったからだ。
親が厳しく育てたからといって、正直役立ったことはなかった。
親の世界など小さな範囲である。思い込みで作った理想を押し付けられたって何も役に立たないのだ。
世間一般に通用することを教えて、あとは個性を尊重することが子育てには良い効果をもたらす、と私は思うよ。子供が成長した頃には、親の経験なんて時代遅れなんだから。

それぞれの人生を幸せに過ごして欲しい。あなたたちの良い面を伸ばせる場所に居てね...登場人物たちにはそういう感想を抱いた。フィクションだけど。


※ 画像は撮り忘れたようです...

読書記録📖

2022-03-13 15:40:51 | 
『しょっぱい夕陽』 神田茜 著 2022.3.13読了

『エフの壁』『肉巻きの力』『バナナの印』『もえぎの恋』『かみふぶきの空』の五話が入っている。
どのストーリーも中年の悲喜こもごも。読み終わった後で帯を見たら『48歳年女・年男たちの5つの奮闘』と書かれていた。
身近な世代で共感を覚えるが、ますます自分はどこにでも居る存在なんだろなーっと実感した。
目立つことをやっている人も、同じ調子で生きていけるわけがない。周囲も飽きるし、本人も持久力ないだろうし。そう思うと自分流で生きていくのが無理がなくていいだろう。
目立たなくても自分はこれ。
職場ではこれ。
スーパーではこれ...。
演じ分ければ大抵のことは済んでいく。
本来の自分を知るのは、本当に近しい人だけで良いのではないだろうか?
適度に社会と繋がる自分を演じ、自分の世界観は漏らさず守っていく。
先回読んだ本のように、平凡さが大事である。

神田さんらしく、ドキドキする場面が多かった。平凡な生活を書くストーリーせも、読者に『え。これ、どーなるの?』と思わせてくれるところが神田さんだ。
これも読みごたえある1冊だった。


読書記録📖

2022-03-08 12:04:53 | 
『平凡』 角田光代 著 2022.3. 8読了

平凡っていうのは最も難しい。そして手に入っていると、『もっと良い状況があると思う』なんて欲深く思ってしまう人もいるだろう。
斯く言う私も、5年くらい前にある状況に巻き込まれ平凡を逃してしまった。本当に『得難い平凡』を意識し始めた頃だった。困った人がいたので、平凡を感じられる自分は余裕があると勘違いした。他人を救うなんて状況には手を出すべきではない典型例だ。全く憂うべき事態。お陰で振り回され、体調も崩し、なのに一方的に巻き込んだ当人は幸せを掴むっていう由々しき事態。なんで私がダメージを受けるわけ?未だに理解できないのだ。

平凡って手放すと取り戻すのに苦労をする。しかも巻き込んだ奴が幸運を掴むなんて割に合わない。地獄に堕ちろと繰り返し頭に浮かび、そんなこと何度も思っていたら、こっちに病巣ができていた。人を呪うと、何とかっていう物質が出ているらしいし、老衰で死ねるタイプの人間じゃないと癌とか普通に変異しちゃうらしいよ。
だから、人に温情は禁物だね。つくづく馬鹿馬鹿しいから。

眠れないとか悩んでいるとか言ってたって、こっちの都合は顧みないのだ。メンタルとかのプロに任せとけばいいよ、そんなやつの対応は。
今の職場にも居るけど、ある程度の雑談しても改善されないから放置である。以前と共通して感じるのは、他人がどう捉えるか想像することができないようだ。30過ぎてあんなでは発達障害だろうと思う。自分のことばっか話し、ひと様の時間を何時間も無駄にして平気で、自分はいかに大変か努力してるか。
見かねた人から非難されると『○○さんにこう言われたからしないようにする』だとか。子供か。
平凡を身につけるべく努力すべきだ。他人はどういうタイプがいるか、他人はどうしてそういうことをしているのか、気づいても気づかない振りをすることも大事である...そんなことが解るようにならないと。
自分の意識がすぐに外側と触れるひとはダメだね。残念ながら。


感想とは言い難くなってしまった。この本にも色んな『平凡』が書かれている。世の中、色んな奴がいるもんだ。
読書が好きなので、自分以外の人間の思考を学ぼうと、たくさんの本を読んできた。
文章は言い切り系な感じであっさりしてるが、まあ、雑然とした人々のドキュメンタリーって思えばこんなもんかな。
角田光代さんは、アンソロジーみたいな本でしか読んだことがなかった。ある知人が好きで読んでいると聞いていたのだが、読もうと思う機会がなかった。
次はどうしようかな。



読書記録📖

2022-02-26 21:09:58 | 
『わたしの良い子』 寺地はるな 著 2022.2.26 読了

妹が産んだ男の子を姉が代わりに育てる話である。
姉はすごくドライな人で、人としてあるべき一般常識を他人に押し付けない性格のようだ。
私もそういう考え方には違和感を持つ方なので同調できるかと思いきや、『や。そこは言った方がいいんじゃない?』とか、『え、それでいいの?』と思う場面がしばしば。まあ、いろんな考え方の人がいるってことかね。小説だから、実際いるかもわからないし。
心配になるのは、妹の言動である。周囲の考えを押しきって父親のいない子を産んだ上に、姉に預けてなんで平気で好きなことやっているんだ。
完全に無責任な態度に腹が立つ。
あと、姉の学生の頃の同級生だった男。夫婦で地元に戻って子育てを始め、自分達は幸せで立派な家族ですアピールをするが、妻は完全に情緒不安定で娘も級友に意地悪をするっていう...
私も意地悪をする級友がいたが、親が理不尽を押し付けるとそうなるんだよねー。
親の前でお利口にしてる子って、本当に恐ろしい。
『わたしの良い子』なんて、そんな親の押し付けがましい子育て本かと思ったが、そうでなくってホッとした。
乳児から2年生になるまで母親が一緒に住んでくれなかった男の子が、2年生になって一緒に住めることになってどう成長するか心配になってしまうが、これは小説。
帰って来た母を一心に見つめる少年の眼を信じて祈ろう。



読書記録📖

2022-02-23 23:16:09 | 
『水を縫う』 寺地はるな 著 2022.2.12 読了

男の子が縫い物をしてはいけないの?
男の子が料理に興味を持っちゃいけないの?
男の子がピンクの服着ちゃいけないの?

そんな昨今のジェンダーとか話題になりそうな問いがしたくなる。
男の子が縫い物をしなかったら、王様の仕立て屋は女ばかりだった?
男の子が料理しなかったら、有名レストランのシェフは女ばかり?
男の子が明るい色の服を着たって、似合うと思うよ。

何も特別なことじゃない。
既に前から実績のある人たちが頑張ってるじゃないか。
偏見を持つ人は、心が狭いことに気づいてほしい。

小学生の頃、弟が赤い半ズボンをはいていたら、しつこくからかった男子がいた。
私は5歳年上なので、チビに対して酷かと思ったが、『そんなにしつこく言うなら、お前、大人になっても絶対赤いズボンはくなよ! ズボンだけじゃないぞ!赤いもの着るなよ!』と怒鳴り付けたことがあった。
色差別より、性根が腹立たしかった。
赤い半ズボンは、収入が少ない家計をやりくりした結果、母が弟に手作りしてはかせていたズボンだったのだ。
あいつ、赤を着ずに済んだんだろうか。訊いてみたいものだ。

話が逸れたが、この小説は素敵だ。
縫い物が好きな男子の話。
残念だったのは、この男の子の母が、夫の良さをカバーできず離婚しているところ。
でも、全体によくまとまっている。
家族というもの、それぞれ足りないところを補ってまとまった感じ。