5
しばらく時が経って、大学のあった場所には、
スーパーと銀行とマンションと図書館と公園と中学校が並んだ。
一つの小さな町ができた感じだ。
大学の敷地は、実は広かったんだなあとしみじみと思った。
こわい守衛さんのいた赤い門も、今見るとどこにあったのか定かではない。
6
思い出は繰り返し、やってきては、去ってゆく。
この文章を打つまでにかかった20年と、これからの20年。
その時間の長さにすこし茫然とする。
あるかもしれない20年後を思いつつ生きることも、たまにはいいのかもしれない。
そう思いながら僕は、明日抜くべきワインを頭の中で3本にまで絞り込むことに成功した。
あと、もう一息だ。
(どうせ3本飲むのだから、それ以上絞り込むことにはあまり意味がない、
と人は言うかもしれない。けれど意味のないことも、また楽しい。)