そろそろ寝ようかとしたところ、冬でもないのに屋根から雪が落ちるような音がした。「ザザー、ガラガラ」とガルバリウム鋼板を滑るような音がして、フッと音が消える。冬であれば何の疑問も持たなかったのだが、今は夏である。屋根から滑り落ちるようなモノはないはずだ。
まあ、なんかの音がそんな風に聞こえたんだろう、と、深くは考えずに2階に上がる。階段を上がったところにある窓が開いている。まあ夏だから、夜に窓を開けてあっても当たり前なのだが、いつもとは開けている場所が違う。反対側である。網戸のない方の窓が開いていた。
オレよりはやく2階に上がったのは息子である。「寝る」と言って階段を上がっていったのは20分ほど前だろうか? 何を思ったかいつもと反対側の窓を開けていたのだ。まあ、そういうときはある。買ってきた豆腐をうっかり冷凍庫にしまって凍み豆腐にしたことはオレだってあるし。
そんなわけで網戸のない窓から外をのぞくと、屋根に隠れて見えない地面から「ニャーン」と寂しげな声が聞こえる。サチの声であった。窓から首を出して「サチ」と呼ぶと「ニャーン」と返事をする。
ウチのネコは完全室内飼いで、基本的には外に出さない。掃除のときにうっかり窓が開いていても、恐る恐るタタキに降りるくらいなので、よほどのことがない限りスタコラサッサと逃げていくことはないとは思うものの、屋根から落ちたワケなので、それなりに心臓バクバクになっていることだろう。
慌てて階段を降り、玄関を開けたらすぐ近くにいた。
「おお、サチ」と声をかけて素早く抱き上げ、ウチに入れた。いやあ、パニック起こして逃げなくて良かった。
息子に注意しようかと思ったが、すでに熟睡していたようだ。
さすがに落ち着きのないサチを撫でたりさすったりして落ち着くまで待つ。本人も盛んに毛繕いをして落ち着こうとしていた。いつもはきれいな足の白い毛が、黒く汚れていたので「滑ったのね」と思った。
大体落ち着いたところでオレも寝ようと、階段を上がって、もう一度反対側の窓を開けて屋根を確認してみる。薄暗い街灯の光に照らされて、屋根にふた筋の跡が付いていた。滑ったんだねぇ・・・。
雨でわずかに濡れた屋根は、ネコでも堪えられないほど滑るものなのだな。そしてあの雪の落ちるような音は、雪じゃなくてネコだったのね。
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