宮沢賢治と父政次郎の関西旅をたどる撮影をしたのは、もうすっかり記憶も遠くなった10月のことである。それから早二ヶ月弱。16日の金曜日に東京で撮影があった。今回はセリフのある芝居で、それも花巻弁で喋らなくてはならない。
フィルムコミッションのTさんから電話が来て、企画書を読み、方言のセリフを喋ってるところを撮影し、それを送ってキャスト決定、といろんな手順を踏んできた。
決まってからも、台本が送られてきて「花巻弁に直してください」「いやいや、オレはネイティブではないので、直されたセリフをそれらしく読むことは可能ですが、直すのは難しい」などというやりとりもあって、方言になったセリフが送られてきてから、この間解散してしまった現代時報のIさんにセリフを読んでもらって、練習などしていた。
これがなかなか覚えられない。
などとやってるうちに、制作会社からもセリフの音源が送られてきた。聞き覚えのある声だ。たぶんOさんだろう。めんこいテレビ「山海漬」で長いことナレーションを担当していたOさんだ。
聞き比べてみると、結構イントネーションも違っていて「さてどうしたものか?」と考えながら練習したりした。どちらのバージョンでも読んでみたが、それぞれ言いやすいところと言いにくいところがある。悩んだ末「あんまり気にしないことにしよう」となって、おおよその台詞回しを確定した。
そんな練習の甲斐があったのかなかったのか。それを確認しに、というかまあ、お仕事なのでちゃんとやらないといけないんで、久しぶりの東京に乗り込んだ。
撮影場所は埼京線の渋谷駅からほんのすぐそこにあった。
渋谷までの道のりは、えきネットで検索すると、大宮から湘南新宿ラインか埼京線を使うルートを案内された。なるほど、それが効率が良いわけか。何となく渋谷というと、東京駅まで行くイメージだったのだがそうではないらしい。
それに従って、会場までのルートを見ると、まあ最適解であった。集合時間は昼の12時30分。案外ゆっくりで、盛岡発の新幹線は8時50分。朝から雪かきしなければならないような天候だったので、用心して7時55分山岸発の山田線に乗り込むことにした。ホームまで行くと、ご近所で、演劇関係と新聞関係のお二人が並んで待っている。とりあえずごあいさつをして、最後尾に並んで待つ。乗り込んでみると、初めて見るような混雑ぶり。山田線でこんなに混んでいることがあるなんて! 朝のラッシュ時はこんな状態なのね。定時で運行されていたようで、順調に盛岡駅まで運ばれる。あ、切符は車掌さんから買うんだけど、Suicaが使えるようになっていた。
渋谷駅からOLD HAUSに行く途中に昼を食べ、グーグルマップを頼りに現地にたどり着くと、渋谷の真ん中に異空間!
ビルに囲まれて取り残されたように古民家が建っている。前回もここで撮影をしたので、賢治役のNくんは落ち着いた様子で先に到着していた。オレはと言えば、つい興奮してしまい。あちこちを探索し、何枚か写真も撮ってみた。
とまあこんな感じである。
肝心の撮影は、やはり演劇の人間なので、何回も繰り返し合わせないとまともなセリフが出てこない。というか、覚えてられない。テイクを重ねることには抵抗はなく、やればやるほど安定感は出てくる。とはいえ無限にできるわけではないので、なんとかこなしたという感じ。
3つのカメラで数回、ランスルーで撮り、正面から表情を撮るためにさらに数回。途中失敗しながらもわりと順調に進んだ。
賢治と政次郎が言い争う場面なのだが、オレの花巻弁が、なんとか聞き苦しいモノでないことを祈る。
その後関西旅行の寝起きの場面などを撮影し、予定よりだいぶ早く終了。二本くらい早めの新幹線で帰ってきた。ちょうど息子が帰ってくる予定だったので、盛岡駅で合流できた。
さてどんな仕上がりになっていることやら。放送は3月くらいの予定だという。