『鳥ってすごい!』 樋口広芳(ヤマケイ文庫)
また鳥の本を読んでしまった。著者は鳥類学者で、ハチクマの研究者。ハチクマは、猛禽類なのだが、ハチを主食としている。ハチといっても成虫を食べるのではなく、幼虫やさなぎを主に食べているらしい。体から何か化学物質を発するのか、ハチの巣へ降り立つと、ハチの動きが鈍くなるようだ。攻撃が弱まれば、巣をつついて、お食事タイムになる。ハチにとっては恐ろしい天敵となる。
ハチクマもすごいがそれより何より、この本で驚かされたのは、カラスのエピソードだ。都市部に棲むカラスは、食糧に事欠かない。毎日のように人間が路上に出す残飯や生ゴミをたらふく食べ、一部をどこかに貯食している。自然に暮らす鳥が、一日中、あるいは年がら年中、エサ探しに忙殺されているのとはわけが違う。うらやましいことに都市部のカラスはもう食べる心配がなく、生活に余裕があるのだ。そこで何が生まれたか? 人間のように貧富の差ではない、念のため。余暇ができて、「遊び」が生まれた。冗談だと思うでしょう。しかし、研究者によって、カラスが遊んでいるとしか思えないシーンがいくつも目撃されている。
汚い話だが、おとなしいシカにいたずらをするのをある研究者は目の当たりにしている。シカのあの丸いコロコロした糞をくちばしでつまんで飛んでいき、シカの背中にちょこんと飛来。シカがまったく相手にしないと、シカの耳にその糞を詰める。たまったもんじゃないね。シカもやられ放題とは情けない。それだけではない。公園にやってきては、滑り台を何度もすべったり、雪が積もれば、斜面を楽しそうに滑降するカラスも目撃されている。そういえば、滑り台のカラスは、私も見た気がする。何をしているのだろうと不思議に思ったものだ。さらには、空中で小枝や小石を落とし、サッと飛んでそれを空中キャッチするカラスや、テニスボールを使って、人間がプレーするのを真似るような動きをするカラスがいるとしている。
余暇ができたカラス。これから人間のように文化を生み出すのだろう(笑)。
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