徳島県三好市名頃集落の駐車場にあった人形
2016年6月3日(金)放送のNHK「ドキュメント72時間」を偶然見て驚いた。徳島市内を起点に延びている国道438号と、その道に接続し高知県の四万十市まで続く国道439号をとり上げていた。この道は、先だってのゴールデンウィークに私が実際に車を走らせていた。ただし徳島市内の国道438号から、439号に入って、祖谷渓に曲がるところまでだったが。
この国道は、全国に名がとどろくほどの酷道439号、語呂あわせで通称ヨサク(与作)と呼ばれていると紹介されていた。たしかに道幅は狭くて、カーブが連続、対向車が来るたびに冷や冷やさせられるわ、片側が切り立った崖だったり、落石はあるわですごい道だった。
番組の中では、山の神とついこの間見たばかりの「かかしの里」徳島県三好市名頃集落が登場していた。ここの住人は驚くことに30人しかいないとナレーションが流れたが、そのうちの1人には、先日の剣山・三嶺縦走時下山した名頃でお会いした。バス停のトイレ掃除をしていたおばあちゃん。集落の30人のうちの1人に会ったわけだ。なにか貴重な体験をしたような気がするが、そんなことはないか。
さてこの名頃集落には、66歳の人形(かかし)制作者(女性)がいらっしゃる。番組にも演出過剰気味で出演していた。180体(番組では180人といっていた)をすでにつくっているというから、ざっと住人の6倍の数だ。それだけの数の人形は、ほとんど(全員か?)集落の住人をベースに作っているとのことで、亡くなっている方が多いことを示唆していた。ちょっと怖い話だ。私は車で移動中に、電柱だったか(?)に張り付いている作業員2体をはじめ、道端のベンチや小屋の中にずらりと並ぶ人形たちを見ては、おもしろいような、怖いような、複雑な気分にさせられた。
番組はこの後、四万十市まで車を進めていくわけだが、私と山の神はかずら橋を目指して、祖谷渓側に右折、ヨサクから離れて県道32号に入った。この道もすごかった。翌日小便小僧を見にるためにこの道の先へと突き進んだのだが、カーブが連続し、ヨサクに匹敵するほどの隘路。対向車とのすれ違いには難儀した。
ヨサク、それは険しい地形にようやくつけられた生活道だ。通行できなければ、生活に支障をきたすという切実な思いから造られた。そんな人を寄せ付けないような厳しい自然の中に住んでいることもすごいが、そこへ通じる道を造ってしまうのもすごい。だからこそ、この道の存在が全国津々浦々に伝わり、その山深さ見たさに、全国から好奇心旺盛な人たちを集めてしまうのだろう。しかし、山の神も私も今のところは、再訪するつもりは毛ほどもない。やはり、ヨサクは怖すぎる。