はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">スタジオジブリの「ゲド戦記」。</font>

2006-07-30 23:53:58 | さもないこと
東京帰り、思ったより早い新幹線に乗れたので、思いつきでスタジオジブリの映画「ゲド戦記」を観て参りました。
絵は綺麗で技術もすごい。
が、しかし、私にとってはあまり心に響かない作品でした。
原作は切り離して考えても、とにかく作品のトーンがばらばらに感じられて、見ていて何だか恥ずかしかったです。
悪くはないのですが、なんとも形容に困る作品だと思いました。



<font size="-3">東京遠征7/30。</font>

2006-07-30 23:33:42 | アートなど
上京最終日の今日は、美術関連の展示をふたつ見て参りました。

まずは、品川の原美術館で開催中の「束芋 ヨロヨロン」。(原美術館のサイトは→こちら 重いサイトなのでナローバンドの方は注意。)
先週トップランナーで取り上げられたためもあってか、開館時間直後だというのに大盛況のにぎわいでした。
代表作「日本の台所」をはじめ、新作「公衆便女」など、6つのインスタレーションと複数のドローイングが展示されていました。
日本の都市文化と身体へのグロテスクな視点が特徴的。非常に個性的なアニメーションが、これまた個性的な舞台装置の中で映写されている作品群は圧巻。
今回の展示を見て、5年前の横浜トリエンナーレ2001で赤レンガ倉庫会場にあった作品が束芋氏の作品「日本の通勤快速」であったことに今更ながら気付きました。当時は名前をまったく意識していませんでしたが、斬新な舞台装置が印象的だったことはよく憶えていたのです。
毒を含む表現も特徴の一つ。一度見たら忘れられないこと請け合いです。
ところで、この展示を見ていて感じたのが、束芋氏は生命をグロテスクなものとして捉えているのではないか、ということです。たとえば頻出する身体パーツのモチーフ。変容を伴い、常に過剰なほどに生々しく表現されています。この方の根源的な意識では身体組織は気味の悪いものとして理解されているのかな、という印象を受けました。
そこでふと思ったのが、生物学における生命現象の描写との対比です。たとえば日常的にナマの組織や臓器を扱っている臨床家にとっては、生体組織は『システマティックで驚きに満ちた柔軟で美しいもの』として認識されていることが多いと思います。術野メモなどもリアルはリアルなのですがどこか無機的な印象を受けること多々。生々しい現実の生体を見ている人間よりも、イメージとして生体を想像している人間のほうが過剰な生々しさを描いてしまう不思議。面白い逆転現象だと思いました。
生命の受け取り方も人それぞれなのだなと感じ、少々釈然としない気分になりました。

さて、次に訪れたのは丸の内の宮内庁三の丸尚蔵館で開催中の「江戸の花鳥画 若冲を中心に」第4期展示。
今期は伊藤若冲の動植綵絵30幅のうち6幅と、「旭日鳳凰図」、そして酒井抱一の「花鳥十二ヶ月絵」などが展示されていました。
「動植綵絵」6幅の内訳は以下の通り。
「老松白鳳図」「向日葵雄鶏図」「大鶏雌雄図」「群鶏図」「池辺群虫図」「貝甲図」。
前回の第3期展示でも圧巻!だった若冲ですが、今回の展示もまたひときわとんでもない描写の傑作揃い。
「群鶏図」では呆れるほどのディティールとデフォルメーションにクラクラし、これは絶対に生物そのもに興味を持っていないと描きようがないに違いない、と思っていたら、「池辺群虫図」で完全に不意打ちをくらいました。
昆虫、節足動物、両生類、爬虫類・・・・。
ありとあらゆる虫たちが配された画面。蝶やトンボ、バッタ、蛙はまあいいとしましょう。しかし、画面下に目をやれば、なんとハサミムシやカマドウマ、オケラやゲジゲジまでいるではありませんか。
これら目にした瞬間、思わず涙が出そうになりました。本気で感動してしまったからです。
いわゆる不快昆虫、害虫と称される生き物たち。しかしその描かれ方は精緻にして的確。気味悪さを強調するようなこともありません。華やかな昆虫たちと何ら差別されることなく対等に描かれています。
『これはもう、本物だ。』と思いました。生物への愛情と的確なまなざし。こんな視点を持って絵を描いている人間が日本にいたという事実にすっかり嬉しくなってしまいました。
生物学に携わるすべての人間は、若冲の「池辺群虫図」を見ておくべきだと思います。いや、冗談ごとではなく本当にそう思います。
四の五の悩む余地なくただ単純に、生命は驚異に満ちた素晴らしいものだ!ということがすこーんと伝わってきます。
束芋氏の作品を見て釈然としなくなっていた気分をいちどにひっくり返してくれました。
思いついて、作中の生物たちの種類をメモしてきました。
私が認識できた種を以下列挙。
ジョロウグモ、クロアゲハ、シャクトリムシ、タテハの幼虫、アゲハ(春タイプ)、クロイトトンボ、オニヤンマ、カナブン、アブラゼミ、アキアカネ、ヒョウタンムシ、ヤマカガシ、ショウリョウバッタ、トノサマガエル、ガマガエル、アマガエル(灰色に擬態したもの)、アカハライモリ、トカゲ、カナヘビ、カブトムシ、オタマジャクシ、ナメクジ、カタツムリ、スズメガの幼虫、キリギリス、ウマオイ、スイッチョン、カマキリ、ミノムシ、カマドウマ、コオロギ、ハサミムシ、ゲジゲジ、ヤスデ、ムカデ、ジグモ、オケラ、ミミズ、クロヤマアリ、アブ、ハエ、トノサマバッタ、マルハナバチ、ヒシバッタ、モンシロチョウ、ジガバチ、ホタル・・・・・。
このように、尋常じゃありません。
虫好き必見です。

「貝甲図」もすごかった。若冲さん、なんでこの貝を知っているんですか?と問いたくなるような種類の貝までが、とにかくこと細かに描かれているのです。画面右端にツノガイを発見したときは、驚きを通り越して思わず笑ってしまいました。降参です。
陸前高田市の貝のミュージアムは、この「貝甲図」のレプリカを飾っておくべきだと思います(笑)。
そういえば、会場でたまたま一緒になった学生さんらしき二人連れ。自ら日本画を描かれるのでしょうか、単眼鏡で絵を観察しながらしきりに「すげー! 花の上の蜂、すっげー綺麗! 切れがある!」「あの羽根! ありえない! ありえない! おかしいよ、この人!」と絶賛していたのが印象的でした。この方々のコメントには私も同感です(笑)。

見るたびに新たな感動を生む若冲の「動植綵絵」。1期と2期を見逃したことが悔やまれてなりませんが、残りの第5期を楽しみにしたいと思います。
なお、「池辺群虫図」が見られる第4期は8月の6日まで。
少しでも興味のある方はぜひ足を運ぶべき! どうぞお見逃しなく!

ちなみに、ラーメンズの第11回公演「Cherry Blossom Front 345」のフライヤーに使われている絵は、この「池辺群虫図」をモチーフにしたパロディーだと思うのですが、言及されている方を見かけないので気になっています。どなたかご意見をお聞かせいただければ幸いです。

一昨日、上野の国立博物館でも若冲関連の展示(プライスコレクション)を見てきたわけなのですが、若冲の作品を見るのが目的ならば三の丸尚蔵館の展示に軍配を上げたいです。とにかくひとつひとつの作品の密度が濃い。不自然に混むこともありませんし環境も快適。
あまり宣伝されていませんので、本当に見たい人が見に来ているといった印象を受けます。
若冲のとんでもない絵をじっくり見たい方には上野よりもこちらがおすすめです。



<font size="-3">東京経由横浜遠征7/29。</font>

2006-07-30 01:15:03 | アートなど
昨日7月29日は、東京で芝居一つと横浜で展示を少し、そして友人との会食を楽しんで参りました。

まずは、東京下北沢駅前劇場で上演中の QC3000「脳内DISCO bug」14時公演。
オクイシュージ氏の放つ、アドリブと台本の境界融合を目指したコント集です。
私は久ヶ沢徹氏ご出演ということで足を運びましたが、期待以上の臨場感に満ちた舞台にニヤリ。どのようなゆらぎを持っていたのか、複数回見届けられないのが残念でなりません。
存在感のある空気を持った5人の役者さんたち。気になる存在が増えてしまいました。(そして、佐藤貴史氏はほんの少しだけ音尾琢真氏と似ているような気がしたのは私だけでしょうか。)
ところで最近、いろいろな創作物を見ていて感じるのが、都市生活に立脚した文脈が非常に多いということです。制作者が都市で生活している以上あたりまえのことなのかもしれませんが、なにか世の中の落とし穴を象徴しているようで釈然としない気分になります。もう少しひきつづき考えてみたい問題です。

さて、次に、横浜の新港地区で開催中の「OPEN STUDIO Vol.2」 のリベンジ鑑賞。前回見逃した数作品を滑り込みで拝見してきました。
気付いてみれば『なぜ前回気付かなかったのだろう』という映写位置。ひょっとすると、柱の出っ張りが前回の私の立ち位置からの視界を偶然塞いでいたのかもしれません。なお、見逃していたのはスライドショー作品3つ。以下ひとくち感想&勝手な解釈。
「bottom line」 : 視点対象の固定と周囲の変化。変わらないものと変わるもの。潔い。
「風景の箱」 : 風景をXYZ軸から捕捉し、直方体として表現。非常に面白い。とても好きな作品です。
「ビヴラート」 : 床面すれすれに映写される小さな小さな扉。まるで異界にでも通じていそうに見えてしまいます。縮尺が変わるだけでこんなにも印象が変わる不思議を実感。大好きな作品です。書庫の片隅にでもこっそり映写しておきたいなあと夢想してしまいました(笑)。

bottom lineにニヤリとし、風景の箱に感心し、ビヴラートに心をつかまれました。あぶなく見逃すところだったこれらの作品、出会えて本当に良かったと思います。
ふと思い返せば、私は極端な縮尺の、小さな作品が好きなようです。三重県立美術館で階段の隅にみかけた小さな小さな螺旋階段のオブジェ。横浜トリエンナーレ2001でみかけた小さな小さな扉。昨年のトリエンナーレ2005で観たさわひらき氏の映像作品「trail」。そして、今回拝見した扉の映写作品「ビヴラート」。いずれも、別世界や別の規範の気配を感じさせてくれるとでもいいましょうか。どこか懐かしさと憧れを惹起させるような心地良さを与えてくれる作品だと思うのです。
小動物たちを見ていても感じることですが、小さなものに宿る存在感は、独特の確固たる世界を築き得る要素なんではないかと思えます。

さて、最後に大学時代の友人と久々の会食。
話題は多岐に。以下、特に面白かったことだけキーワードで。
西ナイル熱と日本脳炎の抗体交差性について。
アメリカのBSEリスク評価の恣意性について。
プリオンの立体構造について。
鳥インフルエンザのバックミューテーションリスクと暴露群のポピュレーションについて。
パンダちゃん展について。
仔パンダの可愛らしさがズルすぎることについて。
クマの体重測定について。
イタリアのスリについて。
サラリーマンNEOについて。
ヨコハマEIZONEについて。

これだけ広範囲に話の通じる友人に感謝。
ごくごく個人的に嬉しいことも多く、たいそう充実した本日でした。