はざまの庵

分類し難い存在を愛でる覚え書き by aiwendil お気軽にコメントをどうぞ。

<font size="-3">イメージの庭vol.2「脳の中の鼓動」2日目。</font>

2006-02-12 00:40:48 | アートなど
11日(土)は昨日に引き続き、せんだいメディアテークで開催中のショートフィルム上映会、イメージの庭vol.2「脳の中の鼓動」へ行って参りました。
第2日目の本日は、プログラムF(辻直之)、A(teevee graphics)、B(ショートフィルム名作選)、C(貫井勇志「血族」)、そして児玉裕一氏ご本人を迎えた特別プログラムと、計5本の上映。
来場者は昨日よりも多く、児玉氏を迎えた特別プログラムではかなりの座席が埋まっていたようでした。
プログラムAのteevee graphics作品では、見たいと思っていたCMやミュージックビデオが見られて嬉しい限り。NAMIKIBASHI作品も好きですが、むしろ谷篤氏の作品に興味津々になってしまった私です。
ちなみに、明日12日はプログラムC、D、E、A。
プログラムAではゲストに小島淳二氏と谷篤氏を迎えての上映だそうです。

詳細はせんだいメディアテークHP→こちら をどうぞ。


以下、メモ程度にプログラムの個人的感想。ネタバレしておりますので、これから見る予定の方はご注意を。
・プログラムF 辻直之
『3つの雲』『覚めろ』『消えかけた物語たちの為に』『夜の掟』『experiment』『闇を見つめる羽根』
学芸員さんの前説によれば、今回のAからFの6プログラム中でフィルムによる上映はこれだけなのだそうです。16ミリフィルムとのこと。たしかに独特の質感が印象的でした。
内容は、まずは主に木炭画を用いたアニメーション。書いた絵を少しづつ消しながら記録しているらしく、かすかに残った木炭の痕が残像のように不思議な軌跡を描くのが特徴的で面白いなと感じました。
そして、人形と粘土を用いたコマ撮りアニメーションも。どこか異形のミニチュア球体関節人形が登場。特異な世界観を表現しておいででした。
雲と空、そして、男女の交合と子供の誕生、新しい世界への扉と通過儀礼、変容、といったモチーフが頻出しており、一貫して同じ何かを表現しようとしているのかな、という印象を受けました。人によって好悪の分かれそうな作品群だと思います。
ところで、ホワイエには『闇を見つめる羽根』の原画が展示されており、なんと、誰でも自由に手にとって見ることができます。学芸員さんの話によれば「辻さん曰く『絵はどうなってもいいです』とのことですので、ぜひ実物の紙に触って質感を味わってみてください」ということらしいです。太っ腹というか、潔いというか、すごいことです。
私もその原画を見てみました。原画の迫力もさることながら、画面の端にメモ書きや数をカウントしたらしき「正」の文字などが並んでいて、ちょっと微笑ましく感じられました。
・プログラムA teevee graphics
上で書いたので割愛。
・プログラムC 貫井勇志「血族」
自主製作映画が思いがけずハリウッドをも巻き込んだ大作になった、という曰く付きの熱意あふれるフィルム。
現代に翻弄された主人公が誘われるように故郷の田舎村を訪れ、そこで、戦国乱世の死闘惨劇を幻視し、ルーツに目覚める、といった大要(たぶん)。ほとんど無声。説明的な部分は最小限。黒沢フィルムを思わせる造り込みのハイクオリティ作品でした。
コンセプトと熱意がとてもよく伝わ ってきました。描きたかったことは余すところ無く描かれ、その表現は成功しているのだと思います。でも、私の心には響かなかった。残念。
きっと好きな人はものすごく好きなんだろうなと思います。
・特別プログラム 児玉裕一氏 トーク&上映会
児玉氏の手がけてきた、主にミュージックビデオを上映しつつ学芸員の小川氏(大学の同級生だそうです)と雑談を交えながら解説を加える、といった形式のイベントでした。
児玉氏はちょっとシャイだけれどオモシロイものが好き、といった雰囲気の方でした。ほのぼのとして、よく笑う、そんな方です。
児玉氏は東北大学の化学科卒なのだそうですが、いろいろ紆余曲折を経て気付いたらなぜかこの仕事になっていたのだそうです。ご本人曰く『化学自体じゃなく、化学のデザインとかロゴが好きだってことに気付いちゃったんですよね。そうなるともう、デザインとか広告とかそっちのほうに興味が行ってしまって』とのこと。そして、チャンスの連鎖をもたらした、人と人との繋がりのおかげで今の自分があると語ってらっしゃいました。
主に、スネオヘア-やYUKI、YOU THE ROCK、Polysicsのミュージックビデオが紹介されていましたが、その中でいくつか衝撃的な真実が。
なんと児玉氏、ブルースクリーンを使わず、映像を一枚一枚手作業で切り抜きながら編集を行っていたのだそうです。1秒30フレームですから、これ、10秒ぶんの素材を作るのに300枚の画像の切り抜き作業をしなければならない、ということになります。しかも、こればかりではなく、あるPVではわざと3Dソフトを使わずに、2次元で3Dっぽいものを無理矢理作ったこともあったとか。
他にも、同じ映像を2~3フレームずらして、それを手作業でリミックスしたりだとか、とにかくやることが尋常じゃない。ものすごいこだわりです。学芸員の小川氏に『そんなにたいへんなことだったら、ふつうやりませんよね。途中でやめようと思わなかったんですか?』と尋かれる始末(笑)。
しかし、その質問に対する児玉氏の答えはこう。
『何でもそうですが、これをやったら気狂いじゃないか?というようなことをやるといいと思います。』
この言葉には妙に納得してしまいました。
たいへんだから誰もやらないことを敢えてやる。そこに新しいものや良いものが生まれる可能性が詰まっているということなのですね。
科学研究にも通じる真実だと思いました。
他にもいろいろと楽しい解説トーク&映像でした。
とりあえず、眠いので今日はここまで。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>umeさま (aiwendil)
2006-02-13 01:16:12
>umeさま

おおっ、既にお持ちでしたか!
さすが。

ちょっと観、ほのぼの系か?と思ったのも束の間、激しく間違いでした(^^;。
観ていて私はミヒャエル・エンデの「鏡の中の鏡」を連想しました。何故なんでしょう(笑)?

原画は、よく学校の美術室に置いてあるような、水彩画を乾かすスチールワイヤー製のラックに、それはそれはもう無造作に置かれておりました。
下手をすると、誰かが持っていってもわからないんじゃないかという勢いです。
ごく限られた趣味の人間しか来場しないという前提の元に展示しているとしか思えません(笑)。

仙台は有名なアート後進都市。ほんと、ダメなんですよ。メジャーなネームバリューが無いと、とにかく人が集まらない。
現代アートやメディアアートの大規模企画展など望むべくもないです。
今回の企画はそういう意味では大いなる快挙だと思います。
私としては、オープニングイベントのような企画展をもっとやっていただきたいところなのですが、こういう地道な企画をコンスタントにやっていただけるのならそれだけでも満足。
今後ともメディアテークにはぜひともがんばっていただきたいものです。

それにしても、こういう映像作品って観たい人と見せたい人の接続が上手くいっていないような気がします。
潜在的なショートフィルム好きや映像作品好きは相当数いると思うのです。ただ、お互いがお互いの存在に気付いていないだけで。
まずは入り口の機会を設けることですよね。何にせよ、気にならなければ映像を買おうとも思わないわけですし。
観たい人が観られて、見せたい人が見せられる、そんなしくみがあればいいのになと思えてなりません。
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辻直之さんの作品はまさに好悪分かれるんでしょう... (ume)
2006-02-12 08:52:56
辻直之さんの作品はまさに好悪分かれるんでしょうね。私は絵柄に惹かれてDVDを買いましたが、部屋を真っ暗にして見ていたら気分が悪くなってきてあわてて電気をつけた経験が(笑。それでも妙にひきつけられるというか。原画が見られたなんて羨ましい。
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