Ⅰ.プーチンは習近平に勝利の可能性を潰された
:230414情報
昨日に引き続き、ロシア問題に精通しておられる方のプーチンと習近平の関係について解説をしていただきます。
ゲラシモフ総司令官の苦戦
ロシア―ウクライナ戦争について筆者は、「歴史の教科書に載るであろう『大きな戦い』が近づいている」とお伝えし、予想通り「大きな戦い」がはじまった。
-2月13日、 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は13日、懸念されていたウクライナでのロシアの新たな大規模攻撃がすでに始まっていると述べた。 ウクライナ侵攻から1年が近づく中、ロシア軍は13日、ウクライナ東部のバフムトを攻撃。NATOの事務総長は、長い間恐れられていたロシアの大規模攻撃が始まったとの見方を示した。―
では、その後の戦局はどうなっているのだろうか?
「大きな戦い」は、今もつづいている。だが、ロシア軍は、プーチンが願ったような戦果をあげていない。
プーチンは1月11日、ロシア軍のトップであるゲラシモフ参謀総長を、ウクライナ特別軍事作戦の総司令官に任命した。ロシア・ハイブリット戦略生みの親で、世界的に有名な戦略家がいよいよウクライナ戦争の指揮を執るーー世界中の軍幹部が、「ゲラシモフの戦い」に注目した。
そして、ロシア軍は、大きな戦果をあげつつあった。
3月8日、NATOのストルテンベルグ事務総長は、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトが、「今後数日中にロシア軍によって陥落する可能性がある」と語った。この時点で、ロシア軍はかなり優勢だったのだ。
しかし、英国防省は3月25日、バフムトで、ロシア軍が激しい人員の損失によって「失速している」との分析を発表した。プーチンは、ゲラシモフに「3月末までにドンバス(ルガンスク州、ドネツク州)を完全制圧しろ」と命じた。しかし、ゲラシモフは、プーチンに与えられたミッションを期限内に完遂できなかった。
習近平に武器弾薬の支援を求めるプーチン
なぜ優勢だったロシア軍は、劣勢に転じたのか? それには三つの要因が挙げられる。一つは、ロシア兵士の士気の低さだ。自国の領土を防衛しているウクライナ軍の士気は高い。一方で、他国を侵略しているロシア軍の士気は低い。
プーチンは、「この戦争をはじめたのは西側とウクライナだ」とフェイク情報を拡散し、ロシア国内のテレビ世代をだますことには成功している。しかし、前線で戦う兵士は、戦闘が「ウクライナ領内で起こっていること」を知っている。「なんのための戦争なのか」意味を見いだせない。
しかも、動員で連れてこられて人たちは、超短期間の訓練しか受けていない、いわば素人だ。
二つ目の理由は、人員不足。
プーチンは昨年9月、「部分的動員令」を出した。ロシア国防省はこの時、「30万人を動員する」と発表した。それでも、人員が足りなくなってきている。
三つ目は、武器弾薬の不足。「BBC NEWS JAPAN」3月6日を見てみよう。
- イギリス国防省は5日、ウクライナ侵攻を続けるロシアの予備役が、弾薬不足のために「シャベル」を使って「接近戦」を行っている可能性が高いとの見方を示した。英国防省の最新のアップデートによると、ロシアの予備役が2月下旬、「『銃器とシャベル』のみで武装して」ウクライナの陣地を攻撃するよう命じられたと述べたという。―
ウクライナは、欧米から、ほとんど無尽蔵の武器支援を受けることができる。一方、国際的に孤立しているロシアに武器を提供してくれる国はほとんどない。たとえば、トルコのエルドアン大統領は、「独裁者つながり」でプーチンと良好な関係を保っている。だが、そのトルコは、ロシアの敵ウクライナに無人機「バイラクタル」を輸出している。そしてこの無人機が、ロシアの戦車部隊に壊滅的打撃を与えている。
その一方で、トルコは、ロシア軍に無人機を提供することを拒否しているのだ。困ったロシアは、イラン製の無人機を輸入している。
日経新聞2022年10月27日。
- イランの最高指導者ハメネイ師は最近、自国の軍事用ドローン(無人機)の効果を称賛した。ウクライナ政府や欧米諸国によると、イラン製のドローンはロシアに売却され、ウクライナの大都市を爆撃するのに使われている。 -
武器弾薬にいたっては、さらに悲惨だ。ロシアは、北朝鮮に輸出した物を買い戻している。
東洋経済1月1日。
- 2022年11〜12月にかけて、ロシアが北朝鮮にかつて販売した武器・弾薬などを北朝鮮から買い戻したという証言も出てきた。東洋経済の取材に応じたビジネス面で北朝鮮と関係が深い中華系実業家によれば、「携帯型の武器や弾薬などを北朝鮮からロシアが買い戻した」という。―
欧米から全面的に支援を受けているウクライナ。ロシアが支援を受けているのは、イランと北朝鮮。ロシア軍が劣勢なのも理解できるだろう。「ゲラシモフの戦略以前」の問題だ。
しかし、3月20日、プーチンにこの劣勢を挽回するチャンスが訪れた。世界第2の経済、軍事大国・中国のトップ習近平が、モスクワにやってきたのだ。
(つづく)
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