赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅰ.「ロシア敗北」に言及したワグネルのプリゴジン

2023-04-30 00:00:00 | 政治見解



Ⅰ.「ロシア敗北」に言及したワグネルのプリゴジン
:230430情報


4月24日付のニューヨークタイムズの記事をご覧ください。

――ウクライナ東部では今も激しい戦闘が続いている。一方で、奪われた領土の奪還を目指すウクライナ側の反転攻勢も近いとみられる。

ウクライナ軍参謀本部の23日の発表によれば、ウクライナ侵攻でともに戦っているはずのロシア軍とワグネルの間の緊張が、ここへきて頂点に達している。

発表によれば「大した戦果を上げることができなかったロシア軍とワグネルは、敗北の責任を互いに転嫁しようとしている」という。「どちらも自軍の戦術ミスや被害の責任を相手に押しつけようとし、挙げ句の果てにルハンスク州の村で衝突が起きた」

対立は銃撃戦へとエスカレートし、双方で死者も出たという。事件が発生した正確な日時や死者数といった詳細は分かっていない。―-

今回は、民間軍事会社ワグネルをつくったプリゴジンについて、長年ロシアの政情を分析する方から解説をいただきました。ウクライナ戦争の行方も解説していただきました。



一般的に、日本でロシアはマイナーな存在です。普通の人に、「ロシア人で知っている人の名前を挙げてください」と質問すれば、政治家はプーチンしかでてこないでしょう。少しロシアに詳しくなると、メドベージェフ前大統領、ラブロフ外相、ショイグ国防相などでてくるかもしれません。

ウクライナ侵攻前に知名度が上がったのは、「プーチンのための宮殿」動画を出したナワリヌイでしょう。彼は逮捕され、今も刑務所にいます。

昨年2月24日ウクライナ侵攻がはじまると、ロシアーウクライナに関する報道が増えました。それで、何人かのロシア人の知名度が上がりました。

たとえば、
「プーチンのメンター」といわれる地政学者ドゥーギン。
(娘のダリアが爆殺されて、有名になりました。)
チェチェン共和国の首長カディロフ。
民間軍事会社「ワグネル」のトップ、プリゴジンなど。


▼プリゴジンとは

プリゴジンは1961年、+レニングラード(今のサンクト・ぺテルブルグ)で生まれました。
1980年代は、強盗、詐欺などの容疑で、ほとんどの期間刑務所にいたそうです。
1990年、ホットドック販売を開始し大成功。その金を元手に、食品チェーン、カジノ、水上レストランなどを設立していきます。

プリゴジンの水上レストラン「ニューアイランド」は評判がよく、プーチンが、フランスのシラク大統領や、アメリカのブッシュ大統領を連れてくるほどになりました。それで、今に至るまで、プリゴジンのあだ名は、「プーチンのシェフ」(ポーヴァル・プーティナ)です。

プリコジンは、プーチンとの個人的な関係をフル活用して富を蓄積していきます。プリコジンの会社は、学食やロシア軍に食事を提供する権利を獲得して、大儲けしました。しかし、プリコジンを有名にしたのは、民間軍事会社「ワグネル」の設立者としてです。

彼が「ワグネル」を設立したのは2014年。この年の3月、ロシアはウクライナからクリミアを奪いました。4月になると、ルガンスク、ドネツクの親ロシア派が独立を宣言。

ウクライナ政府は当然これを容認せず、内戦が勃発しました。

プリゴジンはこの年、ワグネルを作り、ルガンスク、ドネツクに戦闘員を送り込んだのです。もちろん、プーチンの命令で作ったに違いありません。

ちなみにロシアで民間軍事会社は違法です。そのため、ウクライナ戦争がはじまるまで、大っぴらにその存在が語られることはありませんでした。

しかし、ワグネルはその後、中南米やアフリカ諸国、シリアなどにも傭兵を送るようになった。それで、ロシア研究者や世界中の諜報機関は、その存在を知っていたのです。

2022年2月24日、ロシアがウクライナ侵攻を開始。ロシアの国営メディアは、「2~3日で首都キーウを陥落させて特別軍事作戦は終わる!」とはしゃいでいた。ところが、戦争はプーチンの予想を裏切って長期化し、世界中の人が、「ロシア軍は軍事力世界2位というが、案外弱い」ということを知ったのです。

ロシアの正規軍はだらしない。そんな中、ウクライナ軍を苦しめているのが、プリゴジン率いる「ワグネル」です。プリゴジンは、正規軍のだらしなさに対する憤りと、自分が大活躍しているという驕りから、次第に増長するようになっていきました。

昨年の11月には、「ゼレンスキーは現在ロシアに敵対する国の大統領だが、ゼレンスキーは強く、自信があり、現実的で、いいヤツだ」と発言しています。これは、ロシアの「公式見解」とは全然違います。

ロシア政府や国営メディアは、ゼレンスキーについて、「ネオナチの麻薬中毒者」と定義している。ところが、プリゴジンは、「強く、自信があり、現実的で、いい奴」といっている。この発言から、プリゴジンが、プーチンへの恐怖心を失っていることがわかります。

戦場で活躍するプリゴジンとワグネル。その一方で、ロシア軍の弱さとだらしなさを批判するプリゴジン。ロシアの支配者層は、プリゴジンを恐れ、疎ましく思っているようです。そして、彼からバカにされているロシア軍との関係も、また悪いのです。


(つづく)



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