Ⅱ.日中友好50年~史上最悪の外交的敗北 :230422情報
昨日に引き続き、中国問題を歴史的に研究されている方の解説と、その方が引用する門田隆将氏の『日中友好侵略史』から、中国という国家の実像をあぶり出します。
■3.「なにか仕組まれているような気がした」
田中政権の誕生が昭和47(1972)年7月6日、そして9月29日には北京を訪問し、共同声明で日中国交正常化が発表されました。一方、アメリカは電撃的なニクソン訪中を田中訪中の7ヶ月前に果たしたものの、正式な国交樹立は7年後の1979年でした。
米国の7年に対し、田中政権は3ヶ月。国際的な外交常識から言っても、異常な「拙速」でした。
北京の迎賓館に到着した田中角栄首相と大平正芳外相の一行十数人を、周恩来首相が出迎えて、一人ひとりと握手していきました。大平の秘書官・森田一は、その時の驚きをこう語っています。
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中国側は秘書官の名前も全部、わかっていたんですよ。だって、周恩来さんは、僕に〝森田さん〟と言ったんです。事前に勉強しているんですよ。一人一人について全部わかっているような感じでしたね。途中で、この交渉を通じて、なにか仕組まれているような気がしたのは事実ですね。[門田、p221]
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後に、門田氏は森田氏にこう聞いています。
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「中ソ対立が極限まで達し、北京や上海では、当時、ソ連の核攻撃に備えて避難訓練もおこなわれていました。また、文化大革命による破壊で、あらゆるものが機能不全になり、中国全土が〝荒野〟と化していたことはご存じでしたか」
森田の答えは、こうである。
「いま分析すると、中ソ対決の情報が欠けていたと思いますね。それに文化大革命で中国が荒廃しつくしていることも知りませんでした。橋本中国課長がそういう情報を取っていなかったか、上げていなかったかということでしょう。[門田、p221]
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ソ連との対立、文化大革命による荒廃と、日本を味方につけ、日本の力での経済再建を切実に必要としてのは中国でした。一方、日本は「欧米に遅れるな」という程度の動機しかありませんでした。これほど拙速に動く必要はなかったのです。
この立ち位置を全く生かせなかったのは、外務省の橋本中国課長が中国側の状況の「情報を取っていなかったか、上げていなかったか」でした。
取っていなかったとしたら信じられないほどの無能の極み、上げていなかったとしたら、日本の国益よりも中国の国益を優先する「背信」です。
■4.「賠償を放棄するというのも、彼らのやり方なんだよ」
訪中前に田中が心配していたのは、戦争の賠償問題でした。とてつもない金額を要求されたら、日中国交正常化への国民の期待も一挙に失われ、それを旗印にしていた田中政権が吹き飛ぶことは間違いありませんでした。
その状況を把握していた周恩来は、公明党の竹入義勝委員長を北京に招待しました。公明党・創価学会は中国がかねてから重点目標として、池田大作・名誉会長には120以上の名誉教授などの称号を贈りつづけ、また竹入委員長も、周恩来首相自ら日中国交の希望を伝えていた人物でした。
周恩来は竹入と会って、直接、賠償問題を持ち出しました。「毛主席は賠償請求権を放棄すると言っています。賠償を求めれば、日本人民に負担がかかります。そのことは中国人民が身をもって知っています」と言って、日清戦争後に日本に払った賠償の重さを語りました。
後に竹入はこう書いています。
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私は五百億ドル(注=十五兆円以上)は払わなければと思っていたので、全く予想もしない回答に頭がクラクラした。周首相は「田中さんに恥をかかせませんから、安心して中国に来てください」と自信たっぷりにいった。[門田、p160]
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竹入の帰国後、この報告を受けて、田中は訪中を最終的に決断したのです。
この点について、佐藤慎一郎・元拓殖大学特任教授は門田氏にこう語っています。佐藤教授は、辛亥革命で孫文を助けた山田良政、純三郎兄弟の甥で、満洲や支那大陸に深く潜行して晩年の純三郎を助け、戦後も内閣調査室で中国情報の分析をおこなって、時々の総理大臣に中国情勢の解説を行った人物です。
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賠償を放棄するというのも、彼らのやり方なんだよ。これで際限なく日本から資金を引き出せるわけだからね。一度で終わらせるのではなく、延々とつづけさせる。実際、日本が中国に対して出すお金には、かぎりがないでしょ。こういう彼らのやり方を知らないまま田中と大平は中国に乗り込んだ。日本にとって、この交渉は本当に悔やまれる。[門田、p259]
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(つづく)
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