赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

Ⅱ.プーチンは習近平に勝利の可能性を潰された

2023-04-15 00:00:00 | 政治見解



Ⅱ.プーチンは習近平に勝利の可能性を潰された 
:230415情報


昨日からの続きです


プーチンの要請を拒否した習近平

習近平との首脳会談。プーチンの目的は、一つしかない。すなわち、習近平を説得し、中国から武器弾薬を提供してもらうことだ。ところが、習近平には、まったく違う思惑があった。なんだろうか?

習近平には、「ロシア―ウクライナ戦争を和平に導きたい」という野心がある。では、なぜ、中国は、ロシアとウクライナの和平を願うのか?

それは「プーチンを救うことで、習近平自身を救うため」だ。どういうことか?

中国の戦略観では、「二匹のトラの戦いを山頂で眺める賢いサル状態」を最上とする。現状は、どうだろうか?

プーチン自身が断言しているように、「ロシア―ウクライナ戦争」の本質は、米国とロシアの戦いだろう。まさに「二匹のトラ」が戦っている。そして、「賢いサル」である中国は、山頂でそれを眺めている。中国は今、最良のポジションにいる。

実際、中国はこの戦争最大の勝ち組だ。

この戦争で、欧米日とロシアの経済関係が切れた。欧州は、ロシアからの石炭、原油、天然ガスをほとんど輸入しなくなっている。結果、中国はロシア産の資源を激安で買うことができている。「The Moscow Times」3月20日付は、中国が、ロシア産天然ガスを、欧州向けよりも70%安い価格で輸入していることを報じている。

さらに、制裁でドルもユーロも入手できなくなったロシアは、資源を「人民元」で中国に輸出している。では、ロシアは、資源輸出で得た人民元をどうするのか?

もちろん中国製品を購入する。要するに、ロシアは、「人民元経済圏」に組み込まれてしまった。つまりプーチンは、ウクライナを侵略するという愚かな決断によって、ロシアを「中国の属国」にしてしまったのだ。

この動画を見ていただきたい。

注目していただきたいのは、習近平とプーチンの目線だ。習近平は、プーチンを一直線に見つめている。一方、プーチンは、習近平と一瞬目をあわせると、すぐ下を向いてしまう。ロシアでは「目を見て話すのがマナー」であるにもかかわらずだ。

習とプーチンは、いまや「皇帝と属国の長」の関係になっている。習近平はあくまで「チャイナ・ファースト」
筆者は、この戦争がはじまる前から、「ロシアの大戦略的敗北は不可避」と主張してきたが、予想通りの展開になってきた。

このように、中国は現状、ロシア―ウクライナ戦争でもっとも得をしている国だ。ロシアの「弱体化」についても、中国への依存度が高まるので、中国は大歓迎だ。

しかしその一方で、ロシアがウクライナに「敗北」すると困ったことになる。なぜか?

ロシアがウクライナに完敗し、プーチンが失脚したと仮定する。そして、親欧米派のロシア新大統領が誕生したとしよう。その新大統領は、ロシアの間違いを認め、クリミアと昨年9月に併合したルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州をウクライナに返還する。

さらに、賠償金の支払いも約束する。ここまでいけば、欧米と日本は、対ロシア制裁を解除するだろう。欧米日とロシアの経済関係は改善され、ドルとユーロの使用が再開され、ロシアは、「人民元経済圏」から離脱していく。

最悪のシナリオは、ロシアの親欧米新大統領が、「反中包囲網」に参加することだ。習近平は、このような最悪の事態を招かないために、「和平の仲介役」を買って出た。

中国政府は2月24日、12項目からなる停戦案を発表している。

停戦案の中には、〈(8)戦略的リスクの低減。核兵器の使用及び使用の威嚇に反対するべきだ〉など、一部「反ロシア的内容」も含まれている(核兵器をもたないウクライナは、核兵器を使うことも、威嚇することもできない)。

しかし、2項では、「軍事ブロックの強化、拡大」(つまりNATO拡大)に反対。10項では、欧米日によるロシア制裁に反対している。

要するに、この停戦案は、「ロシアを救う内容」になっている。そして、習近平が停戦案を出してきた理由は、「戦争に負けてプーチンが失脚したら困るから」だ。

習近平は、プーチンに「中国の停戦案を認めろ」と要求した。習は、プーチンの承認を得たうえで、ゼレンスキーとも会談し、より具体的な話に移行したかった。

ところがプーチンは、中国の停戦案について、「西側とウクライナの準備ができていない」といった。要するに、西側とウクライナを「ダシ」にして、中国の停戦案を遠回しに拒否したのだ。彼は、「武器さえあれば勝てる」と信じているのだから。

そして、プーチンは、「武器をくれ!」と習に迫った。しかし、習は了承しなかった。なぜか?

中国がロシアに武器を供与するようになれば、欧米日から制裁を科される可能性が出てくる。世界GDPの2%以下のロシアのために、世界GDPの約半分を占める欧米日との関係を犠牲にできない。習近平は、どこまでも「チャイナ・ファースト」なのである。

こうして、プーチンが「中国製兵器」によってこの戦争に勝利する道は閉ざされた。そしてウクライナの反転攻勢がはじまる。ロシア―ウクライナ戦争は、これからどうなっていくのだろうか?

「大きな戦い」は、まだつづいている。しかし、ロシア軍の大攻勢は、兵力と武器弾薬不足で止まってしまった。これからは、ウクライナ軍の反転攻勢がはじまるだろう。

なぜプーチンは、ゲラシモフに「3月末までにドンバスを完全制圧しろ」と命じたのか?

期限を切ったことには、理由がある。3月末になると、英国、ドイツ製の戦車がウクライナに届き始めると予想されたからだ。

そして、実際、戦車が届き始めた。

「NHK NEWS WEB」3月28日。

- ウクライナのレズニコフ国防相は27日、自身のSNSでイギリスの主力戦車「チャレンジャー2」などを受け取ったことを明らかにしました。レズニコフ国防相は「1年前には、パートナーの支援がこれほど強力なものになるとは誰も考えられなかった。ウクライナは世界を変えた」と書き込み、欧米の軍事支援に感謝の意向を示しました。
ウクライナへの軍事支援をめぐって、ノルウェー軍は20日、8両の「レオパルト2」がウクライナに配備されたと発表しています。また、ドイツは27日、18両の「レオパルト2」を引き渡したと明らかにし、ウクライナ軍の軍備の強化が進んでいます。―


戦車を得たウクライナ軍は、反転攻勢の準備を進めていく。「大きな戦い」の第2幕がはじまろうとしている。


(了)


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