青空に白い月

ゆったりゆるりと生きましょ~よ

絵の中の記憶

2007-12-22 20:58:45 | アート・文化

自分で書いた絵を見返すと、書いた時の記憶が中に入っている。

今でも記憶が絵の中に閉じ込められているけれど、入院中に書いた二十数枚の絵の中には、今の数十倍も数百倍もの記憶がある。

それは今書いているような絵と違い人物は一つも無く、主に線で書いた病院内の風景や想像で書いた絵。

それは今見てみると下手だし、ただの薄っぺらいB5のメモ帳にシャーペン一本で書いてあるもので、とてもここに載せられるような絵ではない。

でも私にとってその絵には、その時の風景も感情も時間までが閉じ込められている。

それは決して楽しい記憶ではない。

ただ辛いだけの最悪な記憶。

今でもそのノートを見ると泣いてしまいそうだ。涙は一生出ないけど・・・

今までも何度も入院してきたのに、退院してから思い出すなんてことは無かった。

それは入院していた記憶を呼び戻す媒体が無かったからだろう。

でも私はそれを、絵という嫌な記憶が甦るには最悪な形として、知らず知らずに残してしまった。

絵にはたくさんの記憶が埋まる

その時、私はそれを知らなかった。

退院して何日か経った時、私は何気なくそのノートを開き、一生忘れられないくらいのショックを受けた。

ノートと一緒に記憶までが一気に開かれたのだから。

不安を抱えて書いたことも、寝れない夜に小さな明かりの下で書いたことも、いつもの窓も、休日に外来の椅子に座って書いたことも、点滴をしながら眺めた外の風景も、とにかく全部。

私はその時から、絵や写真や他にもいろいろ見る視点がちょっとだけ変わった。

綺麗、きたない、うまい、下手、もちろんそれは大事な事だけど、それより何より私はその中にある記憶や感情を見てみたい。

心がある作品には必ず記憶や感情が閉じ込めてある筈だ。

それが例え嫌な記憶であったとしても・・・

私にとって最悪な記憶が刻まれたそのノートは、決して忘れることの無い記憶のノート

自分にとってとても大事なものなのです。

絵には深く記憶が刻まれる

見ようと思えばきっと見えます。