やっとのことで、ミケランジェリの「皇帝」を入手した。
過去のライブ音源を正規のCDとして世に出してくれるAltusというレーベル。中々魅力的なCDを次々と発売してくれるので、アントンKも当初このレーベルが出来た時から注目していた。特に、自分自身が東京で聴いたコンサートのライブ音源をかなりクリアな音でCD化して発売した時は興奮したもの。印象に残っていた箇所が、明らかになったり、また逆にこんな風だったかな、とガッカリしたり・・いずれにせよ、懐かしくまた貴重な音源だろうと思う。
そんなAltusレーベルだが、今回は74年10月のミケランジェリとチェリビダッケとの共演の皇帝を手に入れた。この二人の巨匠、生前はどちらも録音嫌いで有名。特にピアニストのミケランジェリは、キャンセル魔としても有名だったよう。しかしそんな汚名を諸ともせず、ここに広がる音楽は、かつてないほど素晴らしい光景に飛んでいた。いかにもベートーヴェンを思わせる構成感にとんだ演奏とは一角をおいているが、ミケランジェリのデリケートな音色の皇帝は、この曲の素晴らしさを再認識させられる。チェリビダッケも、ピアニストに絶大な信頼を置いていることが聴いてとれる。いつもなら自己主張を伴う解釈も控えめであり、どちらかというと大人しい演奏といえる。しかし、晩年のスケールに負けないくらいの演奏内容で、特に第3楽章後半、ピアノとオケの掛け合いは、何とも興奮する一番の聴きどころだろう。もし機会があれば是非一度聴いてみて頂きたい。最初にブラームスの「悲劇的序曲」も入っている。
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ブラームス 悲劇的序曲 OP.81
ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 OP.73 「皇帝」
セルジュ・チェリビダッケ指揮 フランス国立放送管弦楽団
アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ (ピアノ)
1974年10月16日 シャンゼリゼ劇場 ライブ録音 ALT285