ここ最近聴くことがなかった上岡敏之のCDを入手した。曲目は、ブルックナーの第4交響曲。あまり予告もなく突然発売になった感がある。
指揮者上岡敏之といえば、もう7年前になってしまうが、ヴッパタール交響楽団と来日した時の演奏会を思い出す。みなとみらいホールで聴いたブルックナーの第7のことで、まずその個性的な演奏にぶっ飛んでしまった。曲の出から、極端にテンポが遅く、しかも弦の伴奏も聴こえないくらいピアニッシモであった。展開部に入っても、速度はあまり動かないので、これでは永遠に終わらないのではないかとまで思えたくらい。実際、この時の演奏は、トータル90分を越えていたのではないかと思う。
こんな演奏会で度肝を抜かれてしまったアントンKであったが、それ以降、上岡は、読響、新日本フィルその他のオケで指揮しているようだったので、一度足を運ぼうと思って数年経ってしまった。そんな矢先での新譜である。まだ数回しか聴いていないので、隅々までわかっていないことが多いが、基本は、前作第7番(CD録音)のアプローチとあまり変わらない印象を持った。どちらかというと、よく考えられて指揮しているというよりも、その場の雰囲気で、即興でやってしまう印象をもつ。具体的にはしないが、第1楽章では、かつて聴いたことのないくらい音楽が止まり、心配させられる箇所もあったが、展開部でのオルガン的な重奏は、鳥肌がたつ。この辺のバランス感覚は流石で、全楽章においてその雰囲気作りの妙が感じられる内容だった。こういった内容だから、一部のパートが際立つような解釈はなく、従ってここは決めて欲しいポイントでも決まらず、ここだけはちょっと不満が残る。思っていた通りの個性的な内容であるため、初心者にはあまり勧められないが、聴きこんだ方々ならブックリストに加えられても良いのではないか。上岡氏の今後の活躍に期待したいと思う。
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ブルックナー 交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」~ハース版
上岡敏之 指揮
ヴッパータール交響楽団
EXTON OVCL-00546