現在「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2014」としてミューザ川崎にてイベントを開催しているが、プログラムを見てみると、インバルが都響を振ってブルックナーを演奏するので、聴きに行くことにした。
インバル=都響といえば、今年の3月に聴いたマーラーの「1000人」が忘れられない。20年以上前に初めて聴いたインバルのマーラーの印象を塗り替え、圧倒的なまでに衝撃をこのアントンKに与えた演奏は、おそらく生涯語り継いでいく演奏会だと思っている。そんな想いも冷めやらぬこの時期、今度はブルックナーの第7だ。やはりインバルは90年代に、フランクフルト放送響を振ってブルックナーの交響曲全集を制作したが、この時は、当時はまだ聴いたこともなかった第8番の初稿のCDで世間を驚かせた。今でこそハース版、ノヴァーク版はもちろん、多岐にわたる譜面も出そろっているし録音もあるから、何も感じなくなったが、たった20数年前は、まだ音として聴いたことがなかった訳だ。インバルは、第8に続き第3でも初稿で録音し、その時の印象も今も思い出深い。
そんなインバルだが、もちろん過去にも都響や、来日時のフランクフルト放送響との組み合わせでブルックナーは聴いている。第1番や第2番といった初期の交響曲は、昔から実演が珍しいからかかさず出向いて聴いていたが、キリッとしまった演奏表現は、当時から楽曲とマッチして好感をもっていた。
さて数年にわたる都響とのマーラーチクルスを終え、ひとしきりついたインバルは、どんなブルックナーを聴かせてくれるのかワクワクして会場に向かった。このミューザ川崎のシンフォニーホール、座席配置には違和感があるものの、新しいホールとあって響きは素晴らしいものがある。残響3~4秒という理想的なものだと思うが、当日のブルックナーも煩雑にある全休符箇所での響きが素晴らしく、これを聴いただけでも来た甲斐があったというもの。最近絶好調の都響ならではの演奏で安心して鑑賞できた。しかし肝心のインバルの解釈には、多少なりとも違和感をもってしまった。少なくとも以前の演奏より、より細部にこだわった緻密な演奏になっていて、それはそれでよいのだが、どちらかというと楽曲が小さくなってしまった感がある。演奏タイムのことではない。起伏が大きく即興性に富んでいたためなのか、スケール感が小粒に感じてしまった。アダージョでもホルンの強奏、スケルツォ主部でのトランペットの強奏など新しい発見もそれなりにあり面白かったが、今やブルックナーの第7でこの程度の内容では、ビクともしない身体になってしまった、ということなのか・・・
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ワーグナー ジークフリート牧歌
ブルックナー 交響曲第7番 ホ長調(ノヴァーク版)
エリアフ・インバル指揮
東京都交響楽団
2014年7月30日 ミューザ川崎シンフォニーホール