蒸気機関車の撮影をする場合、まず欠かせないのが煙の存在だ。架線の下を走る車両とは違って、被写体の一部として煙もカメラを構える構図に大きく影響する。撮影の基本、何をどう撮るか?から考えても、アントンKの場合、蒸機撮影に煙は必須となる。臨場感や迫力は、その画像から一気に伝わるし、時に心を熱くするほどの力を持つだろう。昔友人が、迫りくる蒸機を撮影しながら、「五感がしびれる~っ!」と叫んだことがあったが、まさに現場はそのような状況に置かれる訳だ。
撮影ポイントも蒸機が被写体の時には、あらかじめ煙の上がりそうなポイント、発車シーンや上り坂などを下調べしてから現地へ臨むことが多い。このあたりは、国鉄時代の蒸機を知らないアントンKからすると、なかなかハードルの高い撮影に感じてしまうのだ。そして、蒸機撮影を目指すようになってから、まず思い知らされたことは、自分の思うようにはいかない、という当たり前のことだった。予想に反して、思うように煙が出ず何度失敗したことか・・・また晴れや曇り以上に、風が大敵で、風によって煙が流されてしまい、惨敗するケースも今までに多々あった。こんなだから、逆に思い通りにシャッターが切れた時の充実感はとても大きく感じてしまうのだ。
さて掲載した画像は、釜石線を往くD51 498 銀河号。今月運転を終えることとなったC58 239の前身は、D51が出張して何度となく走っている。20年以上前まで遡るが、当時は御多分に漏れず機関車正面に大きなヘッドマークが装着され、いつもやる気を削がれた記憶が蘇る。がしかし、風光明媚な岩手の山中、とてつもなくスケールのデカい釜石線という路線の魅力は、そんな些細なことを吹き飛ばしたのだった。地図を見れば一目瞭然だが、長大トンネルや連続勾配がひたすら続き、蒸機にとっては過酷な路線だったはず。この当時は、陸中大橋からの連続勾配には、ディーゼル機関車重連(DE10)で補機が付いて登っていた。
1999-09-12 9603 D51 498 釜石線:足ヶ瀬付近