新日本フィル「トパーズ」公演に行ってきた。
今回の聴きどころは、何といってもメインに置かれたマニャールという作曲家の交響曲だろう。フランスのブルックナーと言われているそうで、そんなことも知らなかったが、果たしてアントンKもそう感じるのかどうか、何の予習もしないまま錦糸町へ向かった。
アントンKの趣味の一つである音楽鑑賞は、今はその大部分がクラシック音楽になってしまった。昔は多岐にわたってよく出向いてライブや演奏会に行ったもの。レコードやCDもとりあえず手に入れて、聴き倒し、気に入らないと処分することを繰り返していた。もともとクラシック音楽は、親父の趣味であり、幼少の頃から随分聴かされていたようだった。ようだったというのは、後日談であり、アントンKがまだ意識してない時代から、親父のひざに座り一緒に音楽を耳にしていたらしい。ただ親父と決定的に違うのは、楽曲の聴き方の違いで、親父の聴き方は、ありとあらゆるクラシック音楽の作曲家の録音の収集が主体だった。影に隠れた多くの作曲家の作品のレコードを、もちろん輸入盤で手に入れ、よく自慢げに話してたっけ。しかしアントンKは全く聴き方が逆で、一つの作品を色々な演奏家で鑑賞し、その相違を楽しんでいた。だからアントンKの鑑賞レパートリーは中々広がらないでいたのだ。もし親父が存命だったら、マニャールなんて言ったら、きっと驚嘆したに違いない。そんな懐かしさを感じながらホールを目指していた。
さてそのマニャールの交響曲第4番だが、まず思いのほか聴きやすかった印象をもった。フランス音楽というと、ラヴェル、ドビュッシーあたりを想像してしまうが、総じてテーマも解りやすく4楽章の構成なので古典的とも言えるかも。フランスのブルックナーと言われる由縁は、おそらく第4楽章中間部以降のことで、フーガやコラール主題の出現や、弦楽器の上にロングトーンで管楽器が鳴るといった構成から来ているのではないか。確かにそう思えなくはないが、やはり似て非なるものと感じた。和音の響きがやはり異なり、転調による高揚感や自然を感じさせる空気感は残念ながらなかったように思う。流石にいつもは暗譜で指揮する上岡氏も、今回は譜面台を置いていたが、それでもこの楽曲が身体に染みわたっているかのように、流麗に指揮を取り高貴な美しさを醸し出していた。そして何といっても、今回はいつにも増してオケ全体の意気込みも物凄かった。譜面を見た訳ではないが、楽曲の構成が難解で、とても演奏しづらいのではないかと思えた。ソロパートが交互に現れたり、ハープが雄弁に奏でたり、ティンパニがリズムをリードしたりと、あらゆることをマニャールは書きたかったのか。こういった印象も、実演奏を体験したからこそで、録音だけではここまで明確にはならないのではないか。
前半のモーツァルトの「パリ」、ラヴェルのピアノ協奏曲、そしてアンコールをも含めてもなかなかの秀演であり、今回のプログラムは、かなり玄人好みの印象をもった。
第601回 新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会「トパーズ」
モーツァルト 交響曲第31番ニ長調 K297 「パリ」
ラヴェル ピアノ協奏曲 ト長調
マニャール 交響曲第4番 嬰ハ短調 OP21
アンコール
ラヴェル 組曲「鏡」第2曲~悲しげな鳥たち
ボワエルデュー 歌劇「白衣の婦人」序曲
指揮 上岡 敏之
ピアノ クレール=マリ・ル・ゲ
コンマス 崔 文洙
2019年3月22日 すみだトリフォニーホール
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