今月から新シリーズが始まった東京のオーケストラ。いつも聴いている新日本フィルも同じで、今回は本拠地トリフォニーで定演を聴いてきた。ホール内の感染対策は万全に思え、消毒、検温、換気など、出来うる考えられることは全て自然の流れの中で行われていた。こちら側も(来場者側)、その行程が当たり前になりつつあり、何の違和感も無くなってきたように思える。少なくともアントンKにはそう思え、日常と化してしまった。
今回の定演は、もともとシャルル・デュトワが来日して指揮する予定だったそうで、海外からの渡航が未だ適わないため、指揮者が急遽変更になり、沼尻氏となったようである。アントンKには沼尻氏初体験となり、大好きな「オルガン付き」がトリフォニーで聴けるということで初日公演に出向いてきた。
沼尻氏の指揮、前半ではまだどことなく緊張感が感じられたが、それも音楽が進むにつれて解けていき、オケとの疎通も上手く回っていたように感じられた。協奏曲では、ピアノによく付けていたし、ソロの音色とのバランス感覚は流石だった。メインの「オルガン付き」では、音楽の流れを重視して、時にはオケを開放し壮大な絵巻を繰り広げていたが、解釈上、特に印象に残るポイントは無かった。後半の譜面上FFからのアッチェルランド、そしてGGからのテンポは、定説通りだったと思われる。しかし、オケはよく鳴っていた。第2楽章後半のオルガンとの全奏部分でも乱れず、各声部がよく聴きとれたし、第1楽章後半は、静かにオルガンとなる部分に「祈り」を感じた。当然この部分では、コンマスの崔氏の響きを根底としたハーモニーも美しさが際立っていたことを記しておきたい。なおこの演奏会、コンマスを2名置くといった珍しい配置だった。その意図は定かではないが、チームワークは確固たるものに感じたのである。
新日本フィルハーモニー交響楽団 第624回定期演奏会「トパーズ」
ストラヴィンスキー カルタ遊び
リスト ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S124
サン=サーンス 交響曲第3番 ハ短調 OP78 「オルガン付き」
アンコール
ドビュッシー 花火
指揮 沼尻 竜典
ピアノ 實川 風
オルガン 石丸 由佳
コンマス 崔 文洙 / 西江 辰郎
2020年9月18日 すみだトリフォニーホール