杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ゆれる

2007年05月15日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2006年公開 119分

写真家の猛(オダギリジョー)は、母の一周忌で帰郷した。父(伊武雅刀)と折り合いの悪い彼だが、温和な兄・稔(香川照之)とは良好な関係を保っている。翌日、猛は稔、そして幼馴染の智恵子(真木よう子)と渓谷へと向かった。智恵子が見せる「一緒に東京へ行きたい」という態度をはぐらかして、一人で自然へカメラを向ける猛。そんな彼がふと吊橋を見上げた時、橋の上にもめている様子の稔と智恵子がいた。そして次の瞬間、そこには谷底へ落ちた智恵子に混乱する稔の姿だけがあった…。(goo映画より)

公開時、作品への評価はほどほどに高かったと記憶してます。映像がゆれて気持ちが悪くなったという感想も耳にしていたので、敢えてDVDまで待ちましたが、全然そんな「揺れ」は感じなかったなぁ

「ゆれ」はむしろ、兄弟の心の中に存在していました。
いつも自分のことは二の次で、家族のために温和な役回りをしてきた兄と、自分勝手にやりたいことをしてきた弟。この二人が、幼馴染の智恵子を巡って、心の中にそれぞれの葛藤や嫉妬を抱え込み、吊橋での惨事に収束していった気がします。

弟は兄の気持ちに気付きながら智恵子に手を出し、兄もまた、そのことに気付きながら知らぬふりをする。事件の後も、互いに本心を隠し、疑い、弟は兄を破滅に導いてしまう。しかし、真実は弟自身も気付かぬ心の奥底に潜んでいた・・というところでしょうか

裁判シーンでの検察官役のキムにぃこと木村祐一のポーカーフェイスの喋り口がとてもインパクトがありました。しかし、あんな風に「被害者」の全てが法廷に曝されるのって・・ヤダなぁ

結局、弟が目撃したことの「記憶」は物事の真実を捉えてはいなかった、とみて良いのかしら?そして、7年経って、子供の頃の思い出のビデオを見ていて突然そのことに気付く弟。慟哭。そして和解への序章・・・

閉塞した暮らしの中で息が詰まりそうになっていた兄の気持ちが切なかったです。人って、ある日突然、切れちゃうんだなぁ。いや、突然じゃなくて、毎日少しずつ、少しずつ壊れていくのかもしれないね。だけど、そうして壊れた後に再構築できるのもまた人というものなんだねぇ・・・。

弟を見つけて微笑む兄の顔をバスが隠すラスト。あれからこの兄弟は新しい関係を築いていけるんだと信じたい、そういう再生への希望を示した終わり方でした。

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