杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

最強のふたり

2012年09月05日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2012年9月1日公開 フランス 113分

スラム街出身で無職の黒人青年ドリス(オマール・シー)と大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)。およそ接点のないふたりが、パラグライダーの事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てのドリスを採用する。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──相容れないふたつ世界を生きてきたふたりだが、偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。互いを受け入れ始めたふたりにとって、毎日はワクワクする冒険に変わり、静かに深い友情が生まれていく。ドリスの宝石強盗の前科を忠告されてもフィリップは毅然と答える。「彼は私に同情していない。そこがいい。彼の素性や過去など、今の私にはどうでもいい事だ」と。ドリスには自然な思いやりが備わっていて、フィリップはそれを肌で感じていたのだ。だが、ドリスの弟が兄を頼ってやってきた時、フィリップはドリスに家族のために自分の時間を使うよう忠告する。ドリスは自分の人生を始めるが、フィリップは再び孤独に陥っていき・・・。


公開前から評判が良かったのと上映館の少なさからか、けっこう混んでいました。
予告を観た時はハリウッド映画かと思っていたのだけど、フランスなのね。そう思って観るとなるほどエスプリの効いた人間ドラマでした

妻を亡くし、自らも事故で首から下が麻痺して介護が必要なフィリップは、同情や義務で介助されることに少なからぬ不満と鬱屈を抱えています。そのイライラを介護人にぶつけるため次々と介護人が辞め、新たな人を雇わねばなりません。面接でお行儀のよい応募理由を述べる者たちの中で、ドリスは異色の存在でした。不採用証明を貰えば失業手当が貰えるから応募したという彼に興味を持ったフィリップは、この時ドリスの飾らない人柄を無意識に見抜いていたのかな

スラムに暮らし大家族で風呂もゆっくり入れないドリスにとって、フィリップの屋敷は別世界。何しろ自分の部屋に風呂が付いてるフィリップの世話は大変だけど、元々面倒見の良い彼にとっては逃げ出したくなるほど辛い仕事でもありません。何より彼らはウマが合ったのです。断固拒否していたう○この掻き出しでさえ、後に引き受けたりもするんですから

ワゴン車の後ろに車椅子ごと乗せるのは荷物みたいで嫌だとフィリップが事故前に乗っていた高級車の助手席に座らせたり、夜中に発作を起こした彼を街に連れ出して落ち着くまで付き合ったりするエピソードが出てきますが、そんな風に自然な気遣いのできる優しさを持つドリスに、フィリップは使用人としての枠を超えた友情を感じていきます。文通相手に高尚な文学的比喩を並べるより、電話で告白しろとけしかけたり、「耳は感じる」と答えるフィリップをはちょっといかがわしいマッサージに連れて行ったりはまさに男の友情だね

ドリスのために彼を解雇したフィリップですが、信頼出来る友を失いみるみる焦燥していく様は無精髭と生気を失った瞳に表されます。見かねたフィリップの使用人(ドリスは彼らとも和気藹々の関係を築いていました)に呼び出されたドリス・・・映画の冒頭のシーンはここに繋がるのね
波音を聞きながらただ傍にいるだけで、フィリップには最高の癒しです。ラストでは海辺のでドリスによるサプライズも用意されていて・・・ちょっと出来過ぎな感はありますが、ハッピーな結末に

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