杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

ゲーテの恋 ~君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」~

2012年09月30日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2011年10月29日公開 ドイツ 105分

1772年、ドイツ。法律を学ぶ23歳のヨハン・ゲーテ(アレクサンダー・フェーリング)は、博士号取得の試験に落ちて父親から田舎町ヴェッツラーの裁判所で実習生として働くように命じられる。上司のケストナー参事官(モーリッツ・ブライブトロイ)は、ゲーテに厳しく接するが、陽気で自由奔放なゲーテは、同僚のイェルーザレムとすぐに仲良くなり、舞踏会でシャルロッテ・ブッフ(ミリアム・シュタイン)と出逢う。彼女の印象は最悪だったが、ミサで歌うロッテに再会した瞬間、恋に落ちる。イェルーザレムとロッテの住むヴァールハイムを訪ねたゲーテは、彼女の弟妹たちとも打ち解けて楽しい時間を過ごす。舞台に憧れる文学好きのロッテと作家になることを諦めきれないゲーテは、魂の深い部分でも共鳴し合う。しかしロッテを見染めたケストナーが、彼女の父に縁談を申し込み、家族のためにロッテはこの縁組を受け入れる。ロッテへの贈り物を届けに彼女の家を訪れたゲーテは彼女がケストナーと婚約したことを知り打ちのめされる。そこへ追い討ちをかけるように、人妻との恋に破れたイェルーザレムが自殺。口論からケストナーと決闘することになったゲーテは投獄され、獄中で小説を書き上げ、ロッテに贈る。「若きウェルテルの悩み」という題名のその物語を読み終えたロッテは、ある決意を胸にゲーテのもとへ向かう……。

文豪ゲーテの若き日の物語ということで、「若きウェルテルの悩み」そのままの秘めた恋が描かれます。
若き日のゲーテは陽気な自信家で友人と酒場に繰り出しては酔い潰れて帰るような奔放な毎日を送っています。作家になろうと作品を出版社に送る、ということは試験勉強なんてしてないでしょうから落第も当然でも当の出版社からは才能無しと突き返され、父からは作家の夢は諦めて田舎でまじめに弁護士になるための修行をしろと命じられます。

元々頭は悪くないので、裁判所での仕事は卒なくこなすゲーテは次第にケストナーから認められ片腕と頼りにされるようになるの。まさか二人の想い人が同じ人物であるとは思いもせず、ケストナーのプロポーズの言葉の相談にのるゲーテ。しかし、婚約祝いの場に鉢合わせした瞬間、二人は悟ってしまうのです。若いゲーテが打ちのめされ憔悴する様子は可哀想ではありますが、ケストナーの苦しみもきちんと描かれているのがです。
ロッテの愛がゲーテにあると知りながら、ケストナー自身もロッテを諦められない、これこそが愛の切なさですもんね

それにしてもロッテは、一見奔放な性格に見えるしゲーテより年下かと思われますが、自分の置かれている立場を冷静に把握し、恋の激情に流されることなく判断のできるとても聡明な女性なのね。彼女の選択によってゲーテという作家が世に出ることができたのですもの。現実に叶わぬ二人の恋が、物語となることで永遠に読み継がれ人々の記憶に残っていく。これこそがロッテにとっての夢の実現ということなのかもしれません。その気持ちはわかるなぁ

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