杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

キャロル

2016年02月12日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2016年2月11日公開 イギリス・アメリカ 118分

1952年ニューヨーク、クリスマスを間近に控えて街は活気づき、誰もがクリスマスに心ときめかせている。マンハッタンにある高級百貨店フランケンバーグのおもちゃ売り場でアルバイトとして働く若きテレーズ・ベリベット(ルーニー・マーラ)。フォトグラファーに憧れてカメラを持ち歩き、恋人のリチャード(ジェイク・レイシー)から結婚を迫られてはいるが、それでも充実感を得られず何となく毎日を過ごしていた。
そんなある日、おもちゃ売り場にキャロル・エアード(ケイト・ブランシェット)が6歳の娘リンディへのクリスマスプレゼントを探しに訪れた。テレーズはエレガントで美しく魅力的なキャロルから目を離すことができなかった。キャロルもその視線に気づいた。そのままキャロルの応対をするテレーズはプレゼントを一緒に選び、イブまでに届くように手配をした。その際キャロルが手袋を忘れていってしまう。テレーズはすぐに手袋を自宅へと郵送した。するとキャロルから百貨店に電話がかかってくる。
御礼にとランチに誘われたテレーズは、翌日、キャロルに指定されたレストランで初めて話をして向きあう。愛のない打算的な結婚生活を送っていたキャロルは離婚することが決まっているという。その週末、郊外のニュージャージーにあるキャロルの屋敷に招待され楽しい時間を過ごしていると、突然別居中の夫ハージ(カイル・チャンドラー)が帰宅する。クリスマスイブにリンディを迎えに来るはずたったのが日程を早めて来たのだ。そこで争いになる二人。無理矢理キャロルも連れていこうとするハージだが、頑なに拒絶をするキャロル。離婚の意思は変わらない。ついテレーズに八つ当たりをしてしまったキャロル。険悪な雰囲気のなか、泣きながら家に戻るテレーズ。すると、ちょうどキャロルからの電話が鳴った。謝るキャロルはテレーズのアパートを訪れる約束をして電話を切った。
翌日、弁護士に呼び出されたキャロル。離婚したくないハージは、リンディの共同親権から単独親権へと変更し申し立てをしてきた。
キャロルと親友のアビー(サラ・ポールソン)との親友以上の親密さやテレーズとの関係を理由にして、母親としての適性に欠けるという口実で、ハージの元に戻らなければ二度とリンディには会わせないと脅してきているのだ。審問まで当分の間は娘とは会うことを禁止されてしまうキャロル。その夜、クリスマスプレゼントの高価なカメラを手にテレーズのアパートを訪れた。そして魅かれあうふたりは、心に正直に生きようとして、思いつくまま西へと向かう旅に出るのだが──。(公式HPより)


パトリシア・ハイスミスの小説「ザ・プライス・オブ・ソルト」の映画化です。
テレーズ役のマーラが第68回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞しています。

同性愛の物語ですが、まだ社会的に認められる前の時代なのでそこには秘密のベールがあります。上品なキャロルと若く美しいテレーズのカップルは眺めているだけでも眼福でした。彼女たちの年齢差はどのくらいだったのかなぁ?初めて二人が結ばれるシーンではやっぱりキャロルが導き役なのね

キャロルの性癖は愛のない結婚後に生じたのか、それとも生来だったのかはっきり描かれていないのですが、当時の道徳モラルに外れていたことは確かです。ハージは仕事優先で妻は自分の付属物のお飾りと思って生きてきたような人物です。妻が異性と浮気していたら烈火のごとく怒って復讐するタイプかな?
アビーとの仲も(現在は終わっているのに)ずっと疑っていて、それは同時に嫉妬でもあるのね。

夫の執着とは反対に、キャロルはとっくに醒めています。離婚というのは何も持たない主婦にとっては生活の基盤が無くなることでもあるけれど、彼女は生家も裕福で個人の財産もあるのでしょう。娘を引き取って暮らしていける十分な背景があるからこその決断です。

恋人の積極的なアプローチに戸惑いを覚えていたテレーズがキャロルと出会ったことで、彼女の中に今までなかった感情が沸きあがります。洗練されたキャロルへの憧れ以上の気持ちです。キャロルの不幸な状況を知ったことでその想いは更に強くなります。恋人から誘われていた欧州旅行はのらりくらりとかわしていたのに、キャロルからの誘いは即答でYES。この違いが端的にテレーズの気持ちを表しています。

旅行中に知り合った男性は妙に親し気に話しかけてきますが案の定・・・という展開。
夫がキャロルの不道徳な不貞の証拠を掴むために送り込んだ探偵だったのね
それを知ったキャロルはかけがえのない娘のために夫の元に帰るという選択をしますが、若いテレーズにはキャロルの真意がわかりません。このあたりは二人の年齢差が出てしまいますね。

キャロルとアビーの仲もテレーズには理解しきれないようです。
不幸な結婚生活に同情して芽生えた愛情はやがて友情へと昇華したといったところかしら?
気持ちは変わるものだと諭すアビーに反発を覚えるテレーズはまだ十分に若いのよね。

自分の道を模索するテレーズは、ニューヨーク・タイムズに勤め始めます。
一方、キャロルは自分に正直に生きるため、また娘自身の幸せを考えて、娘の親権を手放す決意をします。その代り面会権は譲れないと主張するの。これは客観的にみても正しい判断だと思いました。

映画の冒頭のシーンは、身辺を整理したキャロルがテレーズを呼び出した夜です。そこから二人の出会いに遡って進んでいく物語が再びその夜に戻るのです。愛していると伝えたキャロルを一度は拒絶したテレーズでしたが、別れたあとに自分の気持ちと向き合いキャロルの元へ向かうの。現れたテレーズを見たキャロルの表情が何よりも雄弁に語る結末でした。

映画の冒頭にキャストの名前が流れた分、エンドロールはじっくり余韻に浸るには短めでした。

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