杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

真実

2020年06月06日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2019年10月11日公開 フランス 108分

フランスの国民的大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)が自伝本「真実」を出版し、それを祝うためという理由で、アメリカに暮らす脚本家の娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)が、夫でテレビ俳優のハンク(イーサン・ホーク)や娘のシャルロット(クレモンティーヌ・グルニエ)を連れて母のもとを訪れる。早速、母の自伝を読んだリュミールだったが、そこにはありもしないエピソードが書かれており、憤慨した彼女は母を問いただすが、ファビエンヌは意に介さない。しかし、その自伝をきっかけに、母と娘の間に隠されていた愛憎渦巻く真実が次第に明らかになっていく。(映画.comより)

 

是枝裕和監督が、初めて国際共同製作で手がけた長編作品ということで話題になったっけ。

母と娘の間に隠された真実を巡る物語ということですが、特に衝撃の「真実」が隠されていたわけじゃなく、良い意味で日本的な情緒を感じる作品でした。

女優として生きることを最優先してきたファビエンヌと、娘のリュミールの間には表に出さない確執があります。母の愛をファビエンヌのライバル女優でもあったサラに求めたリュミエールは、監督と寝て役を奪い、結果としてサラを自殺に追いやった母を許せないでいます。

その母が自伝を出すということで、内容が気になり出版祝にかこつけて母のもとを訪れたリュミエールでしたが、書かれていたのは真実には遠い作り話。長年献身的に尽くしてくれている秘書リュック(アラン・リボル)の存在には一言も触れられていないし、父親のピエール(ロジェ・ヴァン・オール)は死んだことになってるし、もちろんサラとの真相もありません。抗議する娘に母は「私は女優よ」と言い放ちます。

リュックが突然暇を申し出て、リュミールは渋々母の撮影現場に同行することになります。自分の存在が軽んじられているという理由で辞めたリュックですが、母娘の絆を取り戻させようとする思惑が伝わってくる描き方でした。

彼女が出演するのは、地球では2年しか生きられない病気のため宇宙で暮らす母が何年かに一度地球に住む娘を訪れるという設定のSF作品です。母親役のサラを彷彿させる若手女優マノン(マノン・クラヴェル)や、30代を演じるアンナ(リュディビーヌ・サニエ)とのシーンが本ストーリーと並行して進みます。 

夫のジャック(クリスチャン・クラエ)は料理好きで家事担当?夫婦仲はよろしいようで

家族の食事のシーンではハンクに対しても辛らつな批評を浴びせるファビエンヌですが、不思議に嫌味がないのは、やはり人柄ということかな。

シャルロットはリュミールからおばあちゃんは魔女と噂されていたと聞かされ、興味津々で魔法が使えるのかと問いかけます。庭で飼っているカメの名前とお母さんのお父さんの名前が一緒だと知って、カメがおじいちゃんだと信じ込んでしまうエピソードが微笑ましいです 例えお金の無心にやってきたとしても、そこは実の父親、ピエールとリュミールの関係は良好のようだし、現夫のジャックとも波風はなさそうです。このあたりはフランスらしいさばけた感がありました。

特に大きな出来事もなく淡々と進むのですが、SFのストーリーと現実が次第にリンクしてきて、遂にリュミールは母への不満や恨みをぶつけるます。ファビエンヌは、サラに感じていたのは自分を脅かす女優としての存在の他に、リュミールをとられたという嫉妬心だったと告白します。リュミールの記憶の中で不在だった母は実際にはちゃんと存在していて、娘を見守っていたんですね

自伝の中身はともかくとして、これがきっかけで長年の母娘のわだかまりが融けたのかな リュックも戻ってきて、ファビエンヌの我儘も健在で、たぶん人生なんてこんなことの繰り返し


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