2023年5月26日公開 120分 G
須藤依子(筒井真理子)は「緑命会」という新興宗教を信仰し、祈りと勉強会に励みながら心穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、十数年前に失踪した夫・修(光石研)が突然帰ってくる。自分の父の介護を依子に押しつけたままいなくなった修は、がんになったので治療費を援助してほしいという。さらに息子・拓哉(磯村勇斗)は障害のある恋人(津田絵理奈 )を結婚相手として連れ帰り、パート先では理不尽な客に罵倒されるなど、自分ではどうしようもない苦難が次々と依子に降りかかる。湧きあがってくる黒い感情を、宗教にすがることで必死に押さえつけようとする依子だったが……。
「かもめ食堂」「彼らが本気で編むときは、」の荻上直子が監督・脚本を手がけ、震災、老々介護、新興宗教、障害者差別といった現代社会が抱える問題に次々と翻弄される家族の姿を描いた人間ドラマ。(映画.comより)
ホームレス役でムロツヨシも少しだけ登場しています😁
ごく普通の専業主婦だった依子。マスクや水の本数限定売りなど原発事故が起こった直後と思われ、TVで流れる放射能のニュースに胡散臭気にケチをつける夫と、ダラダラしている一人息子を映し出します。
寝たきりの舅のおかゆは水道水で作り、自分たちは買ってきた水なところに、彼女の非頃の舅に対する鬱屈した感情が読み取れます。この舅、隙あらば胸に手を伸ばしてくるしな~~😖 きっと元気な頃も色々迷惑かけてたんだろうなと。
綺麗に手入れされた庭には美しい花々と鉢の中のメダカ。ところが庭で水まきをしていたはずの夫が突然いなくなります。口では放射能なんかと言いながら、実はビビッて一人逃げたらしい。😓
場面は変わりそれから数年後。
枯山水に作り替えられた庭の手入れをしながら、新興宗教“緑命会”に入信し、祈りと勉強会に勤しむ依子の前に、失踪していた夫が現れます。
舅の介護を押し付けたまま姿を消した夫は、癌になったと言って当然のように家に上がり込み高額な先進医療費をせがみます。半年前に亡くなった舅の遺産の権利は自分にあると言い出す始末です。(依子さん、実は舅が亡くなる前に遺言してもらっていてしっかり遺産は自分のものになってるらしいが)
もし自分だったらこんな夫は即叩き出しますが、依子は失踪以前と変わりなく世話をします。目線は冷たいし最低限の会話しかしないけどね😓
隣人(安藤玉恵 )の飼い猫が庭を荒らし、パート先では、難癖をつけて商品を半額に値切る客(柄本明)に大声で怒鳴られ、帰省した息子は障害のある彼女を結婚相手として連れてきます。息子に頼まれて彼女を東京名所に案内した後で、依子は「息子と別れて」と彼女に言いますが、逆に弱みを突かれてしまいます。(母親って息子には嫌われたくないのよね~~😣 )
湧き起こる黒い感情に苦しむ彼女に、“緑命会”の「師」(キムラ緑子)は修行と思って我慢するよう諭した上で特別な効果があるという高額な「水」を勧め、依子は飛びつきます。(完全にマインドコントロールされてるなあ)依子の家には会から購入した「水」が溢れていて祭壇にも水が置かれ舅の位牌などは引き出しに仕舞われたままなの。😅
ホットフラッシュで辛そうな依子にパート先の同僚(木野花)が声をかけてきます。体を動かした方が良いと水泳を勧めた彼女とプールで会って話をするようになり、「師」の教えとは逆に、自分の気持ちを溜め込まないで発散させる方が良いと助言されます。この彼女、プールで倒れて入院するのですが、独り暮らしの家に残してきた二匹の亀の世話を依子が引き受けて部屋を訪れたところゴミ屋敷状態。地震で荒れた部屋にショックを受けて以来片付けられなくなったんだそうな。依子は彼女に部屋の片づけをさせて欲しいと申し出ます。年は違うけれど、二人はきっと心を許せる友人になっていくよね。💛
会の主催するホームレスへのボランティア活動の場で、メンバー(江口のりこ、平岩紙 )から夫への献身を称賛され複雑な胸中の依子。
夫の治療費を出す代わりに彼を会に連れていきますが、夫はその場をうまく取り繕ってしまいます。(会の歌とその振り付けが何とも怪し気で、本人たちが真面目で真剣なだけに余計に笑えます。)
夫の病状は悪化していき依子は介護に追われることに。そんな彼女に師は新たな「水」を勧めようとします。決して商売としてでなく善意から出ているだけに始末に悪いのよね。この時の無表情の依子がこ・・こわいぞ。😱
夫が亡くなり、出棺の際に葬儀屋が誤って棺を枯山水に落としてしまいます。大変な失態なのに棺から腕が出てしまっている図は笑えます。固まる息子の横で彼女は遂に声を出して笑ってしまうのです。
息子が依子に「もう自由になればいい、昔やってたフラメンコとかまたやれば」的言葉を残して戻っていった後、依子は押さえつけていた感情を爆発させたかのように、雨の中、喪服姿でフラメンコのステップを踏みます。白の襦袢が次の瞬間赤に変わっていたのが印象に残りました。
枯山水の庭は依子の心の平安を保つための一種の儀式でありストッパーでもあった気がします。それが崩された時、夫や息子の呪縛から解き放たれて一人の女としてリセットしようと決意した姿がこの踊りに込められているように見えました。