2023年3月3日公開 イタリア 84分 G
イタリアの風光明媚な丘陵地帯を見下ろす丘の上にある、小さな古書店。店主のリベロ(レモ・ジローネ)はある日、店の外で本を眺めていた移民の少年エシエン(ディディー・ローレンツ・チュンブ)に声を掛ける。好奇心旺盛なエシエンを気に入ったリベロは次々と店の本を貸し与え、エシエンは、リベロが語る読書の素晴らしさに熱心に耳を傾ける。本の感想を語り合ううちに、2人は年齢や国籍を超えた友情を築いていく。(映画.comより)
ユニセフ・イタリアが共同製作として参加していて、「イタリアの最も美しい村」と言われるチビテッラ・デル・トロントが物語の舞台です。幕間のように挿入される美しい景色に癒され、老人と少年の年齢や国籍を超えた本を通しての交流に心温まります。
小さな古書店の店主リベロは、隣のカフェ店員のニコラ(コッラード・フォルトゥーナ)と毎朝挨拶を交わし、ちょっと風変わりな客たちを迎える毎日を送っていました。
ある日、店の外に置かれた本をじっと見つめる移民の少年エシエンに気付いて声を掛けたリベロは、「本は買えない」と言う彼に「貸してあげるから明日返しにおいで」と好きな本を選ばせると、彼はミッキー(ディズニー)のコミックを一冊持っていきます。
翌日約束通りに本を返しにきたエシエンは、本に興味津々の様子。彼を気に入ったリベロは今度はコミックではなく「ピノキオの冒険」の物語を貸します。
その後も、リベロは次々と店の本をエシエンに貸し与えます。
本を返しにきたエシエンに読んだ本の感想を聞きながらその内容を読み解くリベロにエシエンは熱心に耳を傾け、いつしか二人は友情で結ばれていきます。
リベロが貸し与えたのは「イソップ寓話集」「星の王子さま」「白鯨」「シュヴァイツァーの伝記」「アンクル・トムの小屋」「白い牙」「ロビンソン・クルーソー」「ドン・キホーテ」などコミックから始まり、児童文学、小説とジャンルは広がっていきます。
エシエンは「ピノキオ」の感想を聞かれてキツネたちが面白くコオロギは煩わしいと答えましたが、これはとても子供らしい視点の感想です。「イソップ」では肉を落とした犬の話が面白いと言ったり・・本の感想を通して、リベロは善と悪の存在や、困難に立ち向かう智恵や勇気、自由を求めて差別と闘う人々 の存在を教えていきます。彼らの関係は友であると同時に師弟のようにも映りました。
古書をゴミ箱から捜し出して売りにくる男性(せどり屋みたいな感じ?)に、 今では絶版になっている自分のかつての著書を探し求める大学教授や、革命に傾倒している客、古書の収集家(モーニ・オヴァディア )など、店には様々な人がやってきますが、リベロはどの客にも穏やかに対応していました。
何やら病気を抱えている様子のリベロは、最後に「世界人権宣言」をエシエンに贈ります。閉店を告げる張り紙を見つめるエシエンに声をかけたのは二コラです。
二コラもまたリベロの大切な友人でした。いつもリベロを気遣い、彼に恋の相談をもちかける、いかにも陽気なイタリア男です。彼の恋するキアラ(アナマリア・フィッティパル)は金持ちの家の家政婦をしていて、二コラの求愛を婚約者がいると嘘をついて逸らしていましたが、それは彼の愛情が本物かどうかを試していたわけで・・ちょっと小粋な恋物語も挿入されていました。
特に何かが起こるわけでもなく、淡々とした日常の中でのリベロとエシエンの本を通じた交流がさりげなく描かれるだけなのですが、とても穏やかな気持ちにさせられます。それでいて、本を読むことで人生が豊かになっていくことをこの作品はしっかり伝えてもいます。