上野 油彩
F60号(130×97㎝)の大作の油絵です。私、大竹は普段大学で100号以上の作品を制作していますが、天井も高くスペースも広い美大の教室とは違い、アトリエの中で見ると「こんなに大きいのか!」と圧倒されるサイズです。アトリエで60号の油絵を制作されている方は初めて見ました。美大生や作家でもない限り、こんなに大きな作品を制作する事は殆どないと思います。(毎週アトリエへ持ってくるのも大変ですし!)
ボートに寄り添うような犬は持ち主の飼い犬でしょうか。心なしか忠犬ハチ公にも似ています。今は亡き飼い主とよくボートで釣りにでも出ていたのでしょうか?見る人に様々なストーリーを考えさせてくれますね。犬の足元の水面の揺らぎがとても美しく、犬の体もよく観察して描かれています。
暗い色で描かれたボートですが、ヘリに強いオレンジやグレーがキュッと入っているので形がしっかり分かります。ボートの中の座る部分の板もぼんやりとした明暗で描かれていて、作品全体の雰囲気とマッチしています。移り変わって行く空の色も濁らず綺麗に仕上げられていますね。
主役はボートと犬ですが、青や黄、ピンクが入り混じり、それらを水面の上で揺るがしている湖も大きな見所の一つ。様々な色が混じり合う空とそれが写り込んだ水面に対し、手前の地面の色はハッキリと二色に分かれているのも面白いです。全体的に明るい空の色合いの中で、遠景の森や手前のボートとその影の暗い色が入る事により明暗のバランスも取れています。
ちなみに、作者のサインがどこに書かれているかお分かりでしょうか?写真では少々見えにくくなってしまっていますが、実はボートの側面に入れてあるのです。こうした遊び心も上野さんらしくて素敵です!