山崎 油彩
佐藤です。本日は土曜午後大人クラスより山崎さんの油彩作品をご紹介します。
山崎さんにとってはこれが一枚目の油絵という事なのですが、初めてとは思えない程、細部まで丁寧に描き込まれた見応えのある作品です。
モチーフは青い瓶と植物、林檎、ポット。青・緑・赤・黄色と、分かりやすい色のついたモチーフです。慣れていないとベタベタした油絵具はメリハリのない混色になってしまうことが多い為、初心者の方にはできるだけ色味の違うモチーフを選んでもらうようにしており、山崎さんにもこちらをお勧めしました。
瓶は単純な四角形ではなく、四辺が丸みを帯びています。角度のついた楕円形は歪みを感じやすく、違和感が無いように形を取るだけでもかなり難しいのですが、しっかりと安定感のある形に描かれていますね。基礎デッサンが習得できていることが分かります。
私がこの作品を拝見した時に最も目を惹かれたのは、山崎さんの繊細な色彩感覚です。
ホーロー製ポットには林檎の赤や植物の緑色が映り込んでおり、黄色に深みを出しています。中でも特に強い光が当たっている蓋付近には、膨張色である赤が置かれており、それによってポット表面の緩やかな丸みが感じられます。
敷き布には赤みがかった青、シアンのような鮮やかな青、黄みがかった青など、各モチーフの色を反映した多彩な色が使われており、それもまた布の立体感の演出に一役買っています。
こういった複雑な色合いを作るためには、勿論モチーフをつぶさに観察して細かな映り込みや反射光などを認識する必要がありますが、観察しさえすれば出来る…というものでも無く、「テクニック」的な面を多分に含むのが難しいところです。
例えば、布は光をあまり反射せずに吸収するので、おそらく実際にはここまで綺麗にモチーフの色味が感じられた訳では無いと思います。ポットの肩に使った林檎の赤色も、実際にはもう少し下の位置にあったのではないでしょうか。
とはいえ実物通りでなくとも、絵としては誇張や遊びが含まれている方が面白みがあり、魅力的に見えるものです。(スマホでそのまま撮った写真より、フィルター加工した写真の方がカッコ良く見えてしまうのと同じですね)
ある程度描き慣れている方であれば、上述のような勘所を知っていてテクニックとして扱われているかもしれませんが、初めての油絵でここまで丁寧に追えるというのは、ひとえに山崎さんの観察力と色彩感覚の賜物だと思います!
現在、山崎さんは2作目の油絵に挑戦中です。絵の参考にされる予定の写真を私も拝見しましたが、ロンドンの鮮やかな夜景と地下鉄に続く下り階段のモノトーンの対比が印象的でした。
こちらもきっと山崎さんの色彩感覚が活かされた素敵な絵になるはず。今からとても楽しみにしています!