モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

遊び心と説得力

2023-04-24 13:04:28 | 大人 油絵・アクリル


多田 油彩

佐藤です。本日は大人クラスより多田さんの油彩作品をご紹介いたします。

こちらは多田さんがご入会されてから、基礎デッサン終了後に描かれた初めての油絵です。主役の薔薇はもちろん、背景にもマチエールを効かせ、画材の魅力にあふれています。
マチエールは油絵の醍醐味の一つですが、「思い切って絵具を乗せるのに勇気がいる」とおっしゃる方も多くおられます。そんな中で、最初からこのようにためらいのない絵具の乗せ方が出来ているのは見事ですね!生き生きとしたタッチや色使いから、多田さんご自身も、油絵をとても楽しみながらこの作品を描かれたのではないか……という雰囲気が伝わってきます。

また遊び心(現実には見えない色使い)がありながら、説得力のある存在感も印象的です。
全体としては、ピンクの薔薇の背景を青色にすることで、色の対比効果が生まれて花の鮮やかさや美しさが際立っています。
花びらの中で光が当たっている部分には黄みの色、影になる部分に青みの紫色を使うことで、立体感や奥行きを表現されている点も良いですね。花びら自体はピンクなので、明暗に濃いピンクや明るいピンクを使用してしまいそうですが、光の明るさや温かみの表現に暖色の黄色を使うことで単調になるのを防いでいます。一方で青色は寒色であり、視覚的な奥行きを演出する効果があります。影に青みの色を使うと、光の届かない奥(花の中心部)を強調できます。
背景の中で、下にかなり暗い青、上に明るい青をグラデーションのように置いてあるのも、花瓶のどっしりとした重さと薔薇の軽やかさの表現に一役買っています。下の方に明度の低い色を置くことで、画面全体に安定感が生み出されていますね。

鮮やかで目を引くカラフルな色をただ隣り合わせたのでなく、絵に説得力を持たせるための工夫が垣間見えます。また大胆なタッチの一方で、緻密に作品の設計をされたと想像出来るのです。初めての油絵でここまで考え抜かれるのは素晴らしいですね。

次は山道の風景画に取り組まれていますが、色使いのセンスを存分に活かして描いて頂ければと思います!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする