奥 油彩
着る服の色が徐々に明るい色になり、春を実感しています。ホノカです。
今回は大人クラスの奥さんの油絵のご紹介です。ミオスでは最も早描きと噂されているそうですが、確かに授業の際にお見かけすると、いつも新しい作品を描かれていたように思います。また私の祖母より高齢だそうですが、ご自宅でもバリバリ制作されているとの事で、岩田先生のブログでご紹介されたこともつい最近のように思います。
そんな奥さんの作品は今回もバラエティ豊かに並んでいます。
上の写真は同じモチーフをニュアンスを変えて描かれたもので、描いている内容は同じながら、それぞれで異なった印象を受ける作品です。
はじめに、一番左の作品は小槌を持った鬼と一寸法師が出会うシーンですね。上の作品は映像を切り取ったような自然さを感じます。作品の中では、一寸法師が3体の小さい体で懸命に鬼に立ち向かう様子や、鬼の少し間の抜けた表情が、意図的では無い一連の流れに見えてきます。反対に下の作品では物語の挿絵のように、一瞬を意識した描かれ方が感じられます。上ではまちまちだった鬼の大きさが揃えられ、背景色もオーラのような光が当たっている表現に。一寸法師も1人でいることで鬼との対峙がより印象的になっています。
中央の作品は、作家の芥川龍之介の肖像をモチーフにしたものです。それぞれのパーツは上下の作品ともに同じ配置や形をしていますが、目だけが明確な違いをもって描かれていることが、印象の違いに影響しています。目の形は同じでも光の当たり方が違うことで、目尻に影が生まれ優しげな目つきになる上の作品と、影が無いことで表情が読み取れない下の作品。色使いだけでなくライティングによる違いが反映される面白みがあります。
そして一番左の作品は竹取物語のラストシーンである、かぐや姫が月に帰る瞬間の作品です。上は背景色のピンクの彩度が高く、描かれるモチーフたちもはっきりとした色が使われることで、かぐや姫の帰還という想像し得ない不思議な状況が描かれている印象に。下は背景の彩度が落とされ、代わりに月や富士山などのラストシーンに登場するモチーフの彩度が高くなったことで、月に帰ってしまうかぐや姫を見送る想いの強さが強調された作品のように違いを感じます。
こちらの作品は仏像や仏画を元にした作品たち。一番右の人物画は現在の大河ドラマからのお写真です。
これらを見ていると、奥さんの作品は青の使い方がとても素敵だなと感じます。一方では青が燃えさかる炎を引き立てる背景として活かされ、もう一方では精悍な顔つきに落ち着いた知性を感じさせる印象を与えています。もちろん描くモチーフが違うという点もありますが、それぞれ持たせたいイメージにぴったりとあった色が選ばれているのではないでしょうか。また、木や金属で作られている一色の仏像に色を与え、それを一つの作品として完成させている色の組み合わせ方も、一貫してモチーフへの印象を表現するという意思を感じます。
左の明王の仏像は、厳しさや険しさを伝えるように、赤や補色の緑も合わせて強い印象に。その隣の如来像は明度の高い暖色と、彩度が少し抑えられた背景。悟りを象徴する蓮のみが鮮烈なピンクで、穏やかな中でも凛とした雰囲気に。そして右側の菩薩を描いた作品は彩度の高い月を背に抱え、夜空と同じ色の服が着せられることで月がひときわ輝く夜という情景が見えてきます。最後に、左の人物画も青を中心に色が使われる中に赤や橙があることで、こちらを見据える瞳に熱い感情がある様に受け取れます。
一つのモチーフであってもそこに様々な可能性を見出し、その表現を実際に試していく姿勢に敬服です。私もこれからの作品を楽しみにしております!