
ハヤト 中3 左 / 鉛筆 中央 / 水彩 右 / コンテ
岩田です。3月に入り受験生も悲喜こもごも、4月からの身の振り方を決める時期となりました。
今回ご紹介するのは、中学3年生のハヤトの作品。
目指したのは大阪府立港南造形高等学校と、大阪商業大学高等学校デザイン美術コースの2校。大阪という場所故、情報も少ない中で、両校合格という結果を残したことは称賛すべきことです。
左手は大阪商業大学高等学校デザイン美術コースの受験再現作品ですが、正直まだ未熟といった感が否めません。
本人にとっては、第2志望の学校だったとはいえ、将来、クリエイターになることを目指すのであればデッサンは描けた方が良いですし、更なる努力が必要です。
本命の大阪府立港南造形高等学校はうって変わってお題を与えられ自由に創造し絵の具で描くという受験スタイル。
残念ながら再現作品の画像はありませんが、「季節」というテーマを与えられ人をモチーフに描いてきたとのこと。掲載している他2つの画像を見ると分かるように、彼の描く人物は不思議なリアリティーがあり、良い結果をだしたのも頷ける気がします。
話は変わって、受験と言えば私の卒業校である東京藝術大学の試験も始まっています。
各専攻、一次試験の発表もある程度終え、今頃は皆二次試験の課題に勤しんでいることでしょう。
アトリエの生徒ではないのですが、現在私が個人的にしばしばアドバイスをしている藝大受験生がいます。彼は残念ながら今年は一次試験で落ちてしまいました。私としても大変悔しい思いで一杯です。
あくまでも私の拙い経験からの言葉ですが、藝大の受験は本当にシビアです。一般的に「とても良く描けているなあ」という作品でもあっさり落とされてしまうことは良くあります。
専攻によって求められる資質の違いはあれど、デッサンに於いては、徹底して目の前のモノを観察した上で、そのモノに心を震わせ、自分が体現したそれを一枚の紙に真摯に再現しようとしているのかを高い次元で問われているのだと思います。
なまじ描画材の扱いに長けていると手が先行して動いてしまい、観察を怠ってしまったり、「合格したい」という気持ちが強すぎると、その意気込みから肩に力が入って視野が狭くなり、あたかも盲目となってしまうことがあります。
「デッサンをデッサンしてしまう」という言葉が時に使われます。
受験会場近くでは、各予備校が自校の宣伝用のパンフレットを配布しています。そこには前年の合格者が描いた参考作品などの優秀な作品画像が所狭しと掲載されています。
とかく受験生は「こう描けば受かるのか」といった思考で、そうした作品を目標にしようとする故、それらを表面的に真似したくなることがあります。
それは言わば、目の前のモノをデッサンしているのではなく、デッサンをデッサンしてしまっているのです。
そうした作品は、一見良く描けているのですが、やはりどこかうさん臭いものとなってしまいます。
とにもかくにも、そうした二次的な思考や概念といった障壁を全て取り払い、目の前のモノと一体になった時にこそ、真のリアリティが現出してくるのですね。
問われているのは「描き方」ではなく「見方」です。