酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

新聞勝ち組連合が動き出した

2008-10-02 06:03:01 | Weblog
 日本の新聞界三分の計(正しくは二分プラス毛色の違う日経)がいよいよ動き出したようだ。朝日と読売が印刷工場の共同利用に踏み切るというのだ。部数が低迷し、広告は未曾有の大不況で好転する兆しが見えない。そんな中で「新聞三国志」が幕を開ける。今後の展開やいかに。

 以下はこれを報じる両社の記事(電子版)である。読売を上にしたのは、たまたま「グーグル」の掲載順によるもので他意はない。ここで注意すべきは、読売は相互委託印刷を第一テークに置き、朝日は日経を含む三社の災害協定締結を記事の柱に据えている点である。


 《読売新聞グループ本社と朝日新聞社は1日、千葉県の朝日新聞船橋工場と香川県の読売新聞坂出工場で印刷を相互委託することに基本合意した。

 また、日本経済新聞社を含めた3社は、地震などの大災害や大規模システム障害が発生した際、ほかの社が新聞製作・印刷を代行する相互援助協定の体制を整えた。青森県弘前市の各社工場で11月から運用が可能となる。

 読売の内山斉社長、朝日の秋山耿太郎社長、日経の杉田亮毅会長が1日、東京・内幸町の日本プレスセンターホールで記者会見し、発表した》=読売=



 《朝日新聞社と日本経済新聞社、読売新聞社は1日、大地震や大規模システム障害の際に、相互に印刷を代行する、と発表した。報道機関の責務として新聞発行を継続するために、3社協力体制を整えた。まず、青森県弘前市の3社工場で11月にも運用を始める。

 朝日新聞の印刷工場は全国に24カ所。工場で障害が起きても、近くに日経や読売の工場があれば、代わりに印刷してもらうことが可能になる。今後、北海道や仙台市、名古屋市など、各地に広げる計画だ。

 また、朝日新聞社は読売新聞社との間で、(1)千葉県船橋市の朝日系列工場で読売新聞を印刷する(2)香川県坂出市の読売系列工場で朝日新聞を印刷する、ことに合意した。朝日、読売の相互委託印刷は初めてで、印刷開始は2011年から13年を予定している 》=朝日=


 災害協定はブロック紙や地方紙同士でも締結されており、大手三紙が提携するのは自然の流れだ。地方紙との提携もあり得るが、朝日の最小ロットでも30万部前後と推定される紙を、本紙や日経の合間を縫って印刷できるかとなると疑問点が多い。しかし、現在でも多くの地方紙に委託印刷している日経が加わった意味がもう一つぴんとこない。


 真の狙いは香川と船橋で始める相互委託印刷だろう。印刷工場の新設には膨大な金がかかり、将来計画を考える上でこの設備投資にはどの新聞社も頭を悩ませているはずだ。印刷工場を二社で分担し合えば、投資額は半分で済む。単純に考えただけでも大きなメリットが浮かぶ。


 この構想に加われない毎日と産経はジリ貧の速度を速めて、いずれ首都圏や関西圏に特化した地方紙になるのは間違いない(その前に姿を消すというケースも想定しうる)。幾分余力ができる朝日と読売は、ブロック紙と地方紙の平定に総力を挙げることになるだろう。ここには道州制問題も微妙に絡む。州都になれなかった県の主要紙は、かなり厳しいことになる。地方紙同士の統廃合もひょっとしたらあるのかもしれない。


 スタンスが問われるのは共同通信だ。地方紙と共倒れのリスクをどう回避していくのか。投資不況で日経も磐石ではない。マネーゲームを嫌気する風潮が高まれば、新聞の価値さえ毀損されかねない。広告の落ち込みはますますひどく、用紙費の再値上げが迫る地方紙は…。この三国志には英雄が不在だ。したがって、泥沼の戦いになる?

 中原が平定されたとき、残った新聞が新聞足りうる状態なのかどうかはまた別の物語になる。
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