酔眼独語 

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中国版「所得倍増計画

2008-10-14 05:40:32 | Weblog
 中国の胡錦濤政権が農村部の経済発展策を強調した新方針を打ち出した。12日まで開かれていた中国共産党の三中全会で決めたもので、向こう12年で農民一人当たりの所得をいまの倍にするという“意欲的”なものだ。


 《中国共産党の第17期中央委員会第3回総会(3中全会)は12日、「農村改革推進の若干の重大問題に関する決定」を採択し、閉幕した。コミュニケによると、農村改革の目標として2020年までに農民1人当たりの収入を08年の2倍にするほか、社会保障制度を整備して都市・農村の一体化を達成するとした》=毎日電子版=


 内陸農村部と沿海部の経済格差は公式には3倍前後とされている。しかし、南部や東北に少し入ると、4~5倍の格差があるという。地域によっては明・清時代よりも悲惨な生活を送っているところもあるとされる。「農民の所得を2倍に」と言っても、元が限りなく低ければ何の解決にもなるまい。


 中国では地方と都市とを問わず当局の悪辣さや企業の横暴に対する抗議やデモが頻発、大規模なものだけで年間5~10万件に達すると推定されている。貧しい村部には抗議の方法さえ知らない農民がわんさかいるのである。生活レベルの向上は容易ではないだろう。


 手っ取り早いのは村部の人口を工業都市に移すことである。日本が東北などの人口を首都圏に集中させたように。しかし、食料不足が確実視される中、その政策は採れない。沿海部大都市の浮遊労働者を拡大させると、治安上の不安も抱える。


 農村を活性化するのは現在集団所有となっている農地の個人所有を認め、生産性拡大を促すしかない。でも、それでは社会主義の根幹が揺らいでしまう。一体どうして豊かにするというのか。

 《農村経済を活性化させるための具体策として、農村経営制度の安定化▽農地管理ルールの厳格化▽農村金融制度の整備--などを打ち出した。胡錦濤指導部が導入を目指す農地の請負経営権(使用権)の流動化策はコミュニケには具体的に盛り込まれていない》=毎日電子版=


 注目されていた「農地使用権」の拡大・流動化策さえ見送られている。「管理ルールの厳格化」は指導部の腐敗防止策なのだろうが、農民の締め付け強化に転じる恐れがある。酪農で見られた薬物使用など、中国製農産品への国際的批判に応えるためだ。


 仮に農村部の引き上げ策が上手くいくと、都市の浮遊労働者層との軋轢も生まれかねない。あちらを立てればこちらが立たず。中国も八方ふさがりに近い状況だ。一党独裁がどこまで機能し続けるのか。あの大国を統御する政治手法はほかにあるのか。今後の10年が正念場になるだろう。農民の所得倍増より、都市の貧困対策が緊急課題になるのではないか。
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