理想国家日本の条件 さんより転載です。
オバマの前で「中国が頼み」と言い切った朴槿恵
首脳会談でも韓国を引き戻せなかった米国
鈴置 高史氏 日本経済新聞社編集委員
2014年4月28日(月)転載、させていただいた記事です
4月25日の米韓首脳会談で、オバマ大統領は韓国の「離米従中」に歯止めをかけられなかった。
北朝鮮の核武装が現実味を帯びる中、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が最も期待する「止め男」は
習近平国家主席だからだ。
踏み絵は2枚
今回の米韓会談の焦点はただ1つ。「中国の指示通りに動くようになった韓国を、米国が
手元に引き戻すことができるか」だった(「『自殺点』と日本を笑った韓国の自殺点」参照)。
「韓国の従中」は米国にとって、もはや朝鮮半島という地域の課題にとどまらない。
シリアやウクライナでの弱腰で「オバマのアメリカ」は世界中の同盟国から信頼を失いつつある。
ロシアや中国はそれに付け込もうと画策する。
米中間で二股外交を展開する韓国を今、叱り飛ばしても引きつけておかないと米国の権威は
失墜し、覇権も揺るぎかねない状況だ。
ことに3月末に北朝鮮が4回目の核実験の実施を示唆したばかりだ。この実験が成功すれば
韓国の「従中」に拍車がかかる可能性が大きい。
今回、米国が韓国に迫った“踏み絵”は2枚。米国が主導するミサイル防衛(MD)への参加と、
機密情報の交換を約束する軍事協定を日本と結ぶことだ。
いずれも日—米—韓の3国軍事協力体制を強化する目的だ。そしてだからこそ、自身への
包囲網を作られると恐れる中国が強力に反対し、その中国に脅された韓国はこれらを拒否してきた。
あっけなく合意したが……
では、首脳会談で米国の要求は通ったのか。まず、MDの導入。10年以上も韓国が
逃げ回ってきたこの問題は、あっけなく合意に至った(注1)。
(注1)ホワイトハウスが発表した「Joint Fact Sheet」(英語)で読める。
もっとも、それを米国主導のMDと呼ぶのは難しい。
朴槿恵大統領は「韓国型ミサイル防衛システムである」と共同会見で明言し、米国が主導するMD
とは明らかに一線を引いた(注2)。
(注2)朴槿恵大統領の発言はここで読める(韓国語)。
半面、韓国政府は「米国や日本が構築するMDと連動すべく『相互運用性』を改善する」
(朝鮮日報「韓米首脳、初めて連合司令部をともに訪問」=4月26日)とも説明している(注3)。
(注3)ここで読める(韓国語)。
オバマの顔さえ立てれば
日本の専門家はこう読む。
- 韓国と米日の別個のMDを統合運用するのは技術的に不可能に近い。
- そもそも韓国が独自のMDを開発するのは経費、時間の面からいって現実的ではない。
- 「韓国型MD」の開発・導入を韓国政府が本気で言っているとは思えない。
- 米軍もまともに機能するとは見なしていないだろう。
韓国のハラづもりは以下であろう。
- 中国に対しては「構築するのはあくまで韓国独自のMDであり、
- 3国軍事協力体制に組み込まれたわけではない」と言い訳する。
- 米国には「相互運用性を向上させれば米国主導のMDに参加しているのと同じだ」と納得してもらう。
- 実態がどうであろうと、米国だってオバマの顔を立ててもらえれば文句はないはずだ。
- 我が国は敵ミサイルを捉える能力が足りない。米国のくれる衛星情報はあった方がいい。
米国から突きつけられた踏み絵を、韓国は別の物にすり替えて踏んで見せた。
米国も、それは分かっていて「合意」したのだろう。
大統領訪韓の目に見える成果が必要だったのだから。
早くも空手形?
そして、もう1つの踏み絵である日本との軍事協定。韓国はこれも米国に譲歩した。
しかし、早くも空手形になる雲行きだ。「Joint Fact Sheet」(英語)では以下のように記された。
- 米韓両国は北朝鮮の核とミサイルの脅威に対抗するため、
- 米韓日3国の情報の交換が重要であるとの認識で一致した。
軍事協定を結ぶとまで韓国は約束しなかったが、含みは持たせた。だが、朴槿恵大統領は
共同会見で記者の質問に以下のように答えた(注4)。
(注4)朴槿恵大統領の発言はここで読める(韓国語)。
- 従軍慰安婦問題に対し(日本が)何か実質的な提案を持って誠意ある努力をなした時に、
- 信頼の絆が生まれ「協力しよう」という動力となるであろう。
「慰安婦問題で進展がないと日本とは一切、協力しない——つまり、軍事協定は結ばない」
と言ったのも同然だ。
2013年9月に訪韓したヘーゲル米国防長官も3国軍事協力を求めた。朴槿恵大統領は直ちに
拒否したが、この時も「慰安婦」を言い訳に使った。韓国の姿勢も手口も全く変わっていない。
国防長官も"子供の使い"
仮に日本が「何か具体的な提案」を提示しても「不十分」と言い続ければ軍事協定の締結を
拒否できる、との思惑が韓国にはあるのだろう。「日本の謝罪は不十分だった」と後から言い出し、
謝罪や金銭を何度も要求するのが韓国の常道だ。
いずれにせよ、昨年は国防長官を"子供の使い"にされた米国。今度は大統領までソウルに送った。それでも韓国の姿勢を根本から変えることはできなかった。
オバマ大統領は訪韓を控えて実施した中央日報の書面インタビュー(4月25日)で、
韓国の「離米従中」に警告を発していた(注5)。
(注5)ここで読める(英語)。
米国も「頑固な朴槿恵」は十分に知っている。搦め手から攻めたのだろう。ハイライトは以下だ。
- (安全保障面で米国と強固な関係を持つ韓国が、特に経済面で、急速に
- 中国に傾いているという印象をオバマ大統領は持つかとの質問に答え)
- 朴大統領が中国との建設的な関係を深めることを我々は歓迎する。ただし、
- 韓国の安全と繁栄の基礎となっているのは依然として米国との同盟である。
「米国との同盟なしでは、ちゃんとは生きていけないぞ」と脅したわけである。
確かに、韓国側はここを突かれると弱い。
強大な隣国、中国になびきたいが、今現在、北朝鮮から守ってくれているのは
米国だからだ。経済面でも「米国傘下」だからこそ資本も技術も入ってくるのだ。
アジア回帰の実績を見せよ
困った韓国の指導層は、米国の弱点を突き返す理屈を検討したようだ。その一端が
顔をのぞかせたのが「親・朴槿恵」紙、朝鮮日報の「"信頼の危機"に直面する
オバマのアジア政策」だ。
筆者は朴斗植(パク・トシク)論説委員。オバマ訪韓直前の4月23日に掲載された。
記事に付けられた要旨は以下だ。
- 米国は「アジア回帰」「再均衡」といった外交的な修辞を総動員し、アジア重視を強調する。
- しかし、ほとんどは掛け声倒れだ。オバマの韓日歴訪は米国への不信感を払拭する機会だ。
記事の内容もオバマ大統領に手厳しい。ポイントは次だ。
- 米国のアジア政策に対する懐疑的な見方が米国内にも広がっている。
- 米国の言葉と実際の行動が異なっているからだ。
- 「回帰」や「再均衡」が現実のものになるのか予測できない。
- オバマ大統領が強い意志を示したことがないからだ。
オバマが「離米従中」をやめよ、と迫って来たら、
お前こそ「アジア回帰」の実績を見せよ、と言い返す作戦だ。
一方で、この記事には言い訳めいた部分もあり、また、同盟の破局まで示唆し
「泣き」を入れたくだりもある。以下である。
- 米国の意を迎える韓日間の競争は日本(優勢)に傾きつつある。
- 日本は米国が要求する政治、経済、軍事面での要求をすべて受け入れる態勢を整えたからだ。
- 韓日両国は対中関係で根本的な違いがある。日本は中国との覇権争いに
- すべてを投入する。一方、韓国は北朝鮮問題や統一を見据えて動かねばならない。
- 韓米同盟にこうした韓国の戦略的苦悶を受け入れる幅と深みがなければ、近いうちに本当の危機を迎えるだろう。
習近平に突然の電話
韓国にとって、米国への反撃の手法はもう1つある。「米国よりも中国の方が頼りになる。
米国があまりにうるさいことを言うなら、完全に中国側に行くぞ」との威嚇だ。
朴斗植論説委員の記事の「近いうちに本当の危機を迎えるだろう」という部分は、
まさにそれであろう。そして、韓国は「口だけ」ではなかった。
オバマ訪韓を2日後に控えた4月23日、朴槿恵大統領は突然、習近平主席に電話をかけた。
韓国各紙によると「北朝鮮のさらなる核実験はこの地域の核のドミノを引き起こす。
北に対する一層の努力をお願いしたい」と要請した。
これに対し習近平主席は「北朝鮮の核保有に反対するとの立場は中韓両国で
一致している」と韓国との共同歩調を示唆、朴槿恵支援の姿勢を明確にした。
やり取りは非公開に
韓国の通信社、ニュース1は「オバマ訪韓を前に朴大統領、習主席と電話」(4月23日)で
次のように解説した(注6)。
(注6)ここで読める(韓国語)。
- 米国は中国牽制のため、日本との新蜜月関係に韓国の参与を期待している。
- しかし韓国政府は北朝鮮との問題で、中国の調停者としての役割が必要だ。
- オバマ大統領のアジア歴訪を通じた、韓—米—日の3国同盟強化は我々としては負担となっている。
- 朴大統領は習主席との通話を通じ、米国との協調よりも中国とのそれが重要だという点を改めて強調したのだ。
今回の米韓会談では、首脳同士のやり取りは、会談前から非公開と決められていた。
北朝鮮の手前、結束を見せないといけないというのに、中国問題では米韓の間で
激しい対立が予想されたからだろう。
このため、どんな会話が交わされたかは漏れて来ない。ただ、2013年9月以降の国防長官、
副大統領、国務長官の訪韓時の発言から考え、オバマ大統領が「離米従中」を
諌めたのは間違いない(「『歴史は棚上げしろ』と韓国に命じた米国」参照)。
そして、朴槿恵大統領も「米国の無力化」「頼りにできる中国」などを挙げて反論したと思われる。
最大限サービスしたのに
実際、米韓首脳会談の後の共同会見で朴槿恵大統領は
「中国への厚い信頼と期待」を表明した。もちろんオバマ大統領の目の前でだ。
朴槿恵大統領は記者の質問に答え、以下のように語った(注7)。
(注7)ここで読める(韓国語)。
- 中国は北朝鮮の貿易の90%、経済支援の80%以上を占めているので、影響力は相当に大きいと思う。
- 現在の危険な状況下で、中国がリーダーシップを発揮し、
- 脅威が現実のものにならないようにしてくれることを望む。
北朝鮮には中国が最も大きな影響力を持つのは事実だ。
それ故にオバマ大統領も中国に対北圧力を期待している。
だが、同盟国たる韓国の「離米従中」を阻止するために忙しい時間を割いて訪韓したら、
自分の目の前で韓国の大統領が「中国頼み」をあからさまに表明する……。
オバマ大統領にとっては何とも不本意な出来事だったろう。
神戸大学大学院の木村幹教授は「韓国を自分の陣営に引きとめようと、オバマ大統領は
今回の首脳会談で、最大限の"サービス"をした」と評する。
戦時の作戦統制権の問題では韓国の虫のいい要求を受け入れ、委譲時期の延期に事実上、
踏み切った。
従軍慰安婦に関しても「ひどい人権侵害だ」と共同会見で語り、韓国の肩を持った。
「言うだけ番長」のオバマ
ただ、木村教授は「オバマ大統領の"サービス"を、韓国が評価するかは別の問題」とも言う。
確かにそうなのだ。4月26日の朝鮮日報の社説をオバマ大統領が読んだら、さぞ
大きなショックを受けたことだろう。
見出しは「米国は口先でアジアのリーダーシップを発揮できない」。要旨は次の通りだ。
- 今回の首脳会談は、北朝鮮が4回目の核実験を強行する動きを見せる中で開かれた。
- しかし4回目の実験を阻止する具体的な方策に関しては
- 「中国の役割」が強調されただけで、それ以上の内容は示されなかった。
- 朝鮮半島は今、米中対立と韓日対立、さらには北朝鮮リスクという重層的問題を抱え込んでしまった。
- オバマ大統領は2011年に「アジア回帰」を宣言した。しかし
- (言葉通りにアジアに回帰しなかったせいもあって)
- 共同会見で米国記者の質問はウクライナに集中した。
- 韓国を含むアジアの関係各国も韓国国民も米国のアジア政策に疑問を抱かざるを得ない。
- 現在、オバマ大統領にとって必要なのは言葉ではなく実践だ。このままでは
- 米国がアジアでリーダーシップを確保するのはますます難しくなるだろう。
中韓首脳会談で大勝負?
韓国の保守系紙の多くは平凡な社説を載せている。中央日報の「韓米同盟をアジア太平洋の
核心軸と再確認した会談」がその典型だ(注8)。米大統領訪韓へのご祝儀といったところだ。
(注8)ここで日本語で読める。
朝鮮日報の社説は相当に異例なのだが、政権との近さを考えると、朴槿恵大統領の本音を
代弁しているようにも見える。
今回、米国は「離米従中」に歯止めをかけるために大統領をソウルに送り込んだ。
だが、こうした社説が最大手紙に載ったことを考えると、それは空振り、いや、
逆効果になった感さえある。
朝鮮半島の勢力図を変え得る、次の首脳外交は習近平主席の訪韓だ。
まだ時期は「年内」としか決まっていない。
しかし、習近平は中国の影響力に自信を深めていることだろう。朴槿恵が北京を見つめながら、
オバマの攻勢から逃げ切ったのを確認できたのだから。
韓国が二度と米国側に戻れないよう、中国はここで一気に勝負に出てくるかもしれない。
転載、させていただいた記事です
オバマさんが、あそこまで韓国を持ち上げた事情が、ようやくわかりました。。
オバマ大統領が「慰安婦、重大な人権侵害」
日米韓を分断するな!
http://blog.goo.ne.jp/sakurasakuya7/e/77c91bc175a79e93c58862bb7ab165d2