たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

優越的地位って <フリーランス 独禁法で保護>を読みながら

2018-02-02 | 企業活動 コンプライアンス 公正取引

180202 優越的地位って <フリーランス 独禁法で保護>を読みながら

 

「京大の入試ミス」について大きく取りあげられた横に小さな記事が載っていて、最初気づかなかったのですが、入試ミスを取りあげるのは結構肩の荷が重いなと思ってふと目をそらすと、この記事が目につきました。

 

毎日社会面で<フリーランス独禁法で保護 不利な条件、企業側取り締まりも 公取委検討会>という渡辺暢記者によるものです。

 

ただ、「フリーランス」を取り締まりの対象にするとしつつ、契約問題が話題となった主な例は芸能界やスポーツ界の有名人の話ですね。なんとなくちぐはぐな印象を感じましたので、どのような取り組みを考えているのか、公取委のホームページを探った結果、当の検討会について一定の資料は検索できましたが、その方向性を示すような報告案などもなく、この記事は委員長ないしは関係者からのブリーフィングでしょうね。

 

ともかく記事の内容から入りましょう。

<企業と雇用契約を結ばずフリーランスとして働く人たちの労働環境改善を議論する公正取引委員会の有識者検討会(座長=泉水文雄神戸大大学院教授)は1日、企業側によるフリーランスへの不利な条件の押しつけなどが独占禁止法違反にあたる恐れがあり、公取委の取り締まり対象になりうるとの考え方をまとめた。フリーランスは独禁法と労働基準法の間のグレーゾーンとされてきたが、独禁法の保護対象となる方向となった。>

 

たしかにフリーランスは、使用者と支配関係にないという前提ですから、労働基準法の保護を受けられませんね。そうなるとパワハラならぬ、取引先という力の強い相手から「優越的地位」の乱用を受けやすい、受けるおそれのある立場と言えるでしょう。

 

で、「優越的地位の乱用」については、独禁法が禁止していますが、具体的な基準は公取委が<優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方>というガイドラインで示しています。

 

まず独禁法第2条第9項第5号の規定は、つぎのとおりです。

 

自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして 不当に,次のいずれかに該当する行為をすること。

  継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロに おいて同じ。)に対して,当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

継続して取引する相手方に対して,自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。

取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み,取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ,取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ,若しくはその額を減じ,その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施すること。

 

この規定を読んだだけでは、判断のしようがないともいえるでしょうから、その次に公取委の考え方を例を挙げながら示しています。ま、ざっくばらんにいえば弱い物いじめなんですが、それが資本の本質ですから、そこを微妙に「正常な商慣習」を基準にして不当な賭しているわけです。当然、この優越的地位とはなんぞやとか、正常な商慣習とはなにかとか、問題になるわけで、ガイドラインで示していても、争いの種になりますね。ただ、資本の本質的な性質を、渋沢流商いの本道みたいなものに近いものとの差もあるでしょうし、どんどんエスカレートしていく中では、公取委と業者との間のつばぜり合いは大変な物でしょう。

 

それはともかく、これまでフリーランスは対象外としてきた独禁法の運用を改めるわけですから、それだけフリーランスも増えたわけでしょうし、また働き方改革の条件整備をするためにも、必須の方針転換だと思います。

 

今回の動きは昨年夏から始まったようです。

<公取委は2017年8月、有識者検討会を設置。フリーランスが急増する中、どのような問題が起きているかなどを実態調査し、移籍・独立を巡るトラブルが多いとされる芸能人やプロスポーツ選手の問題についても聞き取りを行ってきた。>

 

たしかにSMAP騒動は賑やかだったですね。「のん」さんというは女優のことは知りませんでしたが、この種の例は多いのでしょうね。ラグビーやプロ野球なども当然、経営者側が一方的に定めて規約なり協約なりを選手に押しつけているわけですから、問題になって当然でしょう。他方で、アメリカでは当然のエージェント制による保護のあり方も考慮して良いかと思うのですが、日本にはなじまないのでしょうかね。ただ、最近はプロ野球選手だけでなくスポーツ選手も弁護士を代理人に立てるケースが増えてきたように思います。ま、これはアメリカのエージェントと同じではないですが、いろいろ手法を検討していい時期でしょうね。

 

でフリーランスについてはというと次のような記事となっています。

<検討会はフリーランスの置かれた現状について、企業側と待遇面の交渉をしにくい▽取引先の選択肢が少ない▽トラブルが起きた時に不利な情報を広められてしまう▽法律知識などに差がある--などと列挙。さらに、企業側による移籍制限や引き抜き防止、過度な秘密保持義務の強要といった乱用がみられ、>として、<検討会の報告書はこれらが独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」に抵触し、取り締まり対象になりうるとの見解を示した。>というのです。

 

具体的な不当な拘束的取り扱いなどがヒアリングで明らかにされたようです。

<これまでの実態調査ではフリーランスとして働く人から「他社の仕事を受けないように強要された」「スポーツチーム間で移籍すると一定期間出場ができなくなる」といった声が寄せられた。

 また、複数の芸能事務所の契約書のひな型には、芸能事務所側がフリーランスの芸能人との契約を一方的に更新できる内容になっており、引き抜きや移籍を事実上制限していた例も確認されたという。>

この内容だけからみると、どうもスポーツ選手や芸能人と言った限られた人たちのようにも見えますが、報告書が出てこないと、この記事だけで云々するのも問題でしょうね。

 

で<公取委報告書案 骨子 >が掲載されていますので、そのまま引用します。

・企業側がフリーランスに不利な条件を押しつけるなどした場合、独禁法の定める「優越的地位の乱用」などに触れる恐れがある。

・個別の行為が違反に該当するかは、待遇面の交渉のしにくさや、取引先の選択肢の少なさといった要素から判断できる。

・フリーランスや芸能、スポーツなどの分野は、問題となる行為が独禁法違反に当たる可能性を認識し、自浄に努める必要がある。

 

有名人といった人を対象とするだけだと、彼ら・彼女らは弁護士なりそれなりの防御手段をもちえますが、一般のフリーランスの人たちをきちんとカバーする報告書、そしてガイドライン作りをしてもらいたいものです。

 

なお、<法令・ガイドライン等(独占禁止法)>にはこの関連の法令・基準が掲載されていますので、参考のため引用しておきます。

 

また、当該検討会に関する情報は検索の結果www.jftc.go.jp/scs/web/sf1.wn にありました。

 

で、フリーランス一般に関する資料としては<フリーランス活用の背景と課題>という高橋俊介慶大教授のスライド用ファイルが、芸能界については<独占禁止法をめぐる芸能界の諸問題>という星野陽平氏のものがありましたので、関心ある方はご覧ください。

 

一言忘れていました。

#MeToo」を忘れてはいけません。独禁法は対象外というかもしれませんが、ある種本質的な圧力行為でしょう。対象に組み込む工夫をしてもらいたいですね。


もう一時間経過してしまいました。業務時間も過ぎてしまいましたので、本日はおしまい。また明日。


新規就農と研修のあり方 <ショベルカーが下校列突っ込む 女児1人死亡>などを読みながらふと就農者のことを思う

2018-02-02 | 事故と安全対策 車・交通計画

180202 新規就農と研修のあり方 <ショベルカーが下校列突っ込む 女児1人死亡>などを読みながらふと就農者のことを思う

 

今朝もNHKおはよう日本を見ていたら、ショベルカーが歩道に乗り上げ歩行者をなぎ倒し一人が死亡するショッキングな事件を目にしました。ちょっとしか見なかったのでどんなショベルカーかと思ったら、毎日朝刊記事に掲載されていた写真でみる一番小さいくらいのものですね。

 

事件の概要は毎日ウェブ情報<交通事故 ショベルカーが下校列突っ込む 女児1人死亡 大阪>によると

<1日午後3時55分ごろ、大阪市生野区桃谷1の大阪府立生野聴覚支援学校北側の市道で、ショベルカーが歩道に突っ込んだ。市消防局や大阪府警生野署によると、聴覚障害があり下校中だった小学部5年の男児1人と女児2人のほか、40代の女性教諭2人の計5人が巻き込まれて救急搬送され、同府豊中市の井出安優香(あゆか)さん(11)が間もなく死亡し、4人が重軽傷を負った。>とのこと。

 

運転手は<容疑を認め「信号が赤に変わる直前に止まろうと思ったが、ブレーキとアクセルを間違えた」と供述しているという。>

 

ところが、NHKの報道では防犯カメラにそのときの映像が映っていて、ショベルカーの進行方向の信号が赤色で、一端交差する道路からの車両が交差点に入った後、ショベルカーがまっすぐ進行せず、左に寄れて歩道に乗り上げ、信号機そばで待っていた児童や教諭たちをなぎ倒したようでした。

 

被害に遭った人たちは

<生野署によると、女児(11)と男児(11)、教諭(45)が腰の骨を折る重傷、別の教諭(41)が腰を打撲する軽傷を負った。同校によると児童らは事故直前に学校の北側にある正門を出て、交差点付近で信号待ちをしていたところをはねられたとみられる。教諭2人は児童らを見送るなどしていた。>とのこと。

 

信号待ちしていて、しかも歩道にいたにもかかわらず、ショベルカーに乗り込まれたのでは、交通ルールを完全に無視していますね。運転者には今のところ、薬物とか認知症とか、特別の運転に支障を来す健康上の問題があったわけではなさそうです。

 

ここからは私の勝手な推測であり、本題に入る一つの切り口です。ショベルカーは私自身運転したことがないので、どのような免許が必要か運転技術が必要かは詳しくないのですが、大型は別にして、小型の場合は割合簡単なようですね。

 

<ユンボには免許と資格が必要!>によれば

<小型車両系建設機械の運転の業務に係る特別教育

こちらの正式名称は、「小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育」と言い、特別教育とは、講習を受けることで取得することができる資格のことです。

この資格を取得すると、機体重量1トン未満のユンボ、ブルドーザーなどの運転が可能となります。>

 

今回の事故を起こしたショベルカー(ユンボとも呼称)はこの小型車両径建設機械になるのでしょうか。

 

この資格を得るには<特別教育>を受ける必要があるようで、

<指定の教習所にて以下の講習を受ければ取得することが可能です。>とのこと。

【学科】

・小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の走行に関する装置の構造及び取り扱いの方法に関する知識(3時間)

・小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の作業に関する装置の構造、取扱いおよび作業方法に関する知識(2時間)

・小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転に必要な一般的事項に関する知識(1時間)

・関係法令(1時間)

 

【実技】

・小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の走行の操作(4時間)

・小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の作業のための装置の操作(2時間)

 

注意したいのは、この教育での実技は整地・運搬・積み込み用・掘削用の走行操作や装置の操作ですが、一般道路での走行についてどの程度実技研修がされているか疑問を感じています。

 

基本はこれらの運転手が自動車の普通免許をもっていることを前提にしているから、一般道の走行にも支障がないということで軽視していないかということです。

 

なぜそれを気にするかというと、私自身、軽トラックを借りてなんどか運転しましたが、これは初めて乗るとひやひやものです。もちろんマニュアルクラッチですが、アクセルとブレーキのタイミングや踏み具合が慣れるまでに結構時間がかかりました(いや慣れたとは思えません)。

 

私自身、以前マニュアルクラッチの自動車を運転していたことがあり、それなりに自信が?あったのですが、軽トラックは別物ですね。とりわけ古い型のものは歯が立たないという感じです。それで新車の軽トラックを借りたのですが、それでもなんどかエンストを起こしました。ま、下手な証拠ですね。とはいえ最近のオートマチックしか乗ったことがない若い人には最初戸惑うと思います。

 

で、今回の事故の運転手、その点がどうだったのか、ありえない事故を起こした原因をしっかり調査して、二度とこのようなことがないように、使用者も運転者も、同種車両を運転する人たちも改めて厳重に注意してもらいたいと思うのです。

 

さてここからが本題です。最近ときおり『季刊地域』編集部編『田園回帰6新規就農・就林への道』を読んでします。ま、私は一度試してみましたが、大変さを実感したのと、他方でまだ道が開かれていると内心思っていますので、それぞれの取り組みを参考にしています。ここで登場する人たちは若い世代ですが、高齢者も結構やれますよと言うのをいつか実現したいと思っています。

 

その中で、浦部真弓氏が「オペレーター作業の実践、納屋の確保・・・独立と定着率を高めるために思うこと」というエッセイは興味深く感じました。

 

90年に浦部農園をはじめ、研修生を毎年受け入れ、すでに12人が就農し、ほとんどが非農家出身とのこと。

 

そして課題の一つとして、「大型農機の研修は自腹覚悟 受け入れ農家への支援が欲しい」というのです。

 

同農園では、実践的な研修を心がけ、トラクタやコンバインなどの扱いを徹底指導するといのです。頼もしいですね。しかし問題はあります。2年間の研修期間中一人当たり40万円くらい損害を出すそうです。破損させたり、故障させたり、いろいろあるでしょうね。

 

軽トラも話題になっています。「軽トラをつぶすくらいは、1回や2回ではない。シャフトを折っただの、エンジンを焼いただの、ベテランの農業者では考えられないようなトラブルは毎日のようだ。これは私もイメージできます。

 

さらに新規就農者にとってより困難な壁は、機械などを入れる納屋の確保ですね。これが大変で私の友人の子どもが脱サラで就農を始めたときも、この確保に多大の費用・労力をいったそうです。

 

浦部氏が指摘する具体的な問題への配慮が十分にされないと、若者が新たな農業を目指して参入することが厳しい現状を変えられず、旧来の慣行農法がある意味で維持され、適切な農地利用、土地の公益的利用に結びつかないことになる一つの要因ではないかと思うのです。