170622 性犯罪への対応 <性犯罪被害者の声、国動かす ・・>などを読みながら
今朝は昨日の雨の影響でしょうか、その冷気が大地や大気に残る感じででした。TV放映では昨日は紀伊半島南端の新宮市など各地で豪雨災害があったようですね。紀伊山脈の影響なのか、あるいは梅雨前線や高気圧の位置関係のためなのか、紀ノ川沿いはあまり影響がなかったように思います。しかし、異常気象はいつどこでどのような事態になるか予測不可能なのが昨今の状況でしょうか。油断はできませんね。
午前中はある株主総会に出かけていましたが、時間があったら別枠でそれに触れたいと思います。すでに5時をとっくに過ぎていますので、まずは本日のテーマを見出しに決めて、これを簡潔にまとめられればと思いますが、わかりません。
さて、今日の毎日朝刊は<ぷらすアルファ性犯罪被害者の声、国動かす 刑法規定、110年ぶり見直し>との見出しで、110年ぶりの刑法規定の見直しを取り上げています。従来の「強姦罪」の規定を「強制性交等罪」という名称に改め、<法定刑の引き上げ▽被害者の性差解消(男性も被害者に)▽親による性虐待を罰する「監護者わいせつ罪」の新設>などにより、性犯罪に対して大きな見直しを行っています。
朝日新聞は6月16日付けで<性犯罪厳罰化、刑法改正案成立へ 強姦罪の名称改め>と報じるなど、報道各社は簡潔に報じていたと思います。それで内容を精査しようかと思って法務省のウェブサイトを見たのですが、それらしい発表が見つかりませんでした。テロ等準備罪については簡単なものがありましたが、刑法改正については審議会などの情報はあっても、法案そのものを記載したもの、解説したものが一切見つかりませんでした。ま、ざっとしかみませんので、なんともいえませんが、普通はどこの省庁でも所管の法案については相当詳細な情報が掲載されているのですが、不思議です。
とりあえず<衆議院の提出時法律案>を引用します。
刑法(明治四十年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
目次中「姦淫」を「強制性交等」に改める。
(以下、相当数の名称変更の改正が規定されていますが省略します。)
第百七十九条を第百八十条とし、第百七十八条の次に次の一条を加える。
(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第百七十九条 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
(以下も同様の趣旨で省略)
第二百四十一条を次のように改める。
(強盗・強制性交等及び同致死)
第二百四十一条 強盗の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強制性交等の罪(第百七十九条第二項の罪を除く。以下この項において同じ。)若しくはその未遂罪をも犯したとき、又は強制性交等の罪若しくはその未遂罪を犯した者が強盗の罪若しくはその未遂罪をも犯したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。
2 前項の場合のうち、その犯した罪がいずれも未遂罪であるときは、人を死傷させたときを除き、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思によりいずれかの犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
3 第一項の罪に当たる行為により人を死亡させた者は、死刑又は無期懲役に処する。
(以下も同様の趣旨で省略)
この法改正について、毎日記事は性犯罪被害者の要望と対比して、簡潔に要約しています。
<性犯罪被害者が求めた改正点
※○は実現、×は実現せず
(1)法定刑の引き上げ ○
(2)被害者の性差解消 ○
(3)親による性虐待を処罰する規定の新設 ○
(4)学校教師やスポーツ指導者の処罰規定 ×
(5)「暴行・脅迫要件」の廃止 ×
(6)年少者の性被害の時効停止 ×
(7)非親告罪化 ○
※(7)は反対する被害者もいる>
上記の(4)は類型的にも問題視できるように思えます。議論不足か、「共謀罪」法案の議論の中で、十分な議論を尽くす時間もなかった影響もあるでしょう。(5)は裁判例の中でより要件を緩和する解釈は期待できるようにも思うのです。(6)は理想的には最もと思いつつ、果たして時効制度とうまく整合性がとれるか難しい判断ですね。
<「男性が思う『嫌よ嫌よも好きのうち』は大きな間違い」「同意のない性行為は犯罪」。>というのは、至極ごもっともです。ただ、これを見て、映画Disclosureの核心的な一場面を思い出しました。女性の上司が部下で昔の恋人に性交を迫る、セクハラ・パワハラの場面で、なんども男性がNoというのを無視して強要する場面があり、その後男性がセクハラしたと左遷されそうになり、仲裁裁判を提起し、その審理の中で、男性側の弁護士が、NOと言ったのが何十回(偶然録音されていて数えた)といったのに対し、上司の女性がNO、NOというのは本気でないといった趣旨の弁解をしたのに対し、男性側弁護士はNOはNOだと言うのです。ま、このやりとりはものすごくおもしろいので、細々と言い出すといけませんのでこの程度にします。
たしかこの映画、カナダで見たのでもう20年以上前ですが、すでに女性によるパワハラ、セクハラが北米ではある程度あったのでしょうね。
ともかく上記で省略した条項の中で、重要なポイントがあります。いままでは女子が被害者として想定されていましたが、それを「者」として、男女いずれも被害者として想定したのです。性差はないのですね。むろんわが国ではほとんどといっていいくらい女性が被害者でしょうけど、今後は男性被害者も当然、でてくるでしょうね。
親や義理の親など監護者によるDVを絡めてた強制的な性交は実態として少なくないように思えます。これが18歳未満の者ということで、未成年者を監護する者だけを想定しているようですが、それで十分か、監護者の範囲を限定しすぎていないかは問題と思っています。
ま、私自身は、従来の強姦罪とか強制わいせつ罪とかをほとんど担当したことがなく、できればやりたくない、やるとすれば絶対にえん罪の可能性がある場合というスタンスでしたので、この分野の犯罪実態や処罰の状況はあまり知りませんので、この程度にします。
性犯罪が起こった場合の対応(むろん予防的機能もありますが)としての今回の刑法改正はそれなりに効果があると思います。他方で、やはり起こらないことが一番ですね。
<性暴力をなくすために/上 被害者の声、ようやく法に 悪夢、トラウマ 苦しみ知って>を初め
の連載記事は貴重な情報だと思います。
そろそろ一時間になりました。別の話題も少し取り上げたいので、この辺でこのテーマは終わりにします。