紙魚子の小部屋 パート1

節操のない読書、テレビやラジオの感想、お買い物のあれこれ、家族漫才を、ほぼ毎日書いています。

ハマる効用

2009-06-04 23:37:00 | ドラマ
 そろそろ転職して1年が経つ。昨年4月時点の私の密かな目標は「ウツにならない」という、なんともパッとしない旗印だったけれど、まさに「皆様のおかげで」目標達成できた。とくに職場関係の皆様には感謝したい。どうも、ありがとう!

 人生の中では、にっちもさっちもいかない時期というのがたまに(もしくはしばしば)ある。耐え忍んで身を縮めてやり過ごせる場合もあるけれど、大なり小なり傷ついて、どうすればいいかわからないまま、崖っぷちに追いやられてしまう場合もままある。

 落とし穴にはまるみたいに突然、あるいはじりじりと時間が経って行くのと同じ速度で何かが蝕まれてしまうような「崖っぷち」にいたときが何度かあった。
 私がいかにも幸運だったのは、たまたま私がそういう時期に長いスパンのテレビドラマ、もしくはマンガや小説にハマっていたことだった。

 ドラマ(の物語、もしくはキャラクター)がなければ、危ういところだったかもしれない。物語というものが、人生のクライシス的状況をかなり大きく割り引いてくれるのを、そして背中を押し、前進することを促してくれるのを、何度か経験した。

 もちろん現実世界においても、励ましや救いや慰めはあるのだけれど、そしてそれも有り難く、心強く、うれしいものではあるけれど、やはりそういうときには、自分の内面から持ち上がってくるものが、どうしても必要なのだ。

 「物語のチカラ」を河合隼雄さんは重要とみなされていた。それは、私にはいまだに説明不可能で謎に包まれているのだけれど、明らかに体験済みではある。

 ほかにも面白いようなタイミングで「崖っぷち」のときにやって来たり、降りて来たりする人(もしくは、ものやこと)があったりするので、人生はドラマチックだなあ、と思う。

亀は意外と速く泳ぐ

2007-03-23 08:57:03 | ドラマ
 Kちゃんの手づくり名刺を、昨日プリントゴッコで作成しながら観たDVDは、『スウィングガールズ』『のだめカンタービレ』主演の上野樹里が平凡すぎるほど平凡な主婦!?を演じる『亀は意外と速く泳ぐ』。監督は三木聡氏。

 全体のイメージとしては「シュールな笑いのセンスを持った高校生が文化祭上映に向けて、全力で『どや~!!』って感じでつくったみたいな」映画だった。ぎっしりと小ネタが入って、でもクールで淡々としていて、「え?」「え?」「ぷす」(=我家での笑いの擬音語)の連続。シュールかつ、ゆるい。そこが、なんとも。

 私にはツボだったので、Kちゃんにこの映画の小ネタのいくつかを披露したら、彼女にも「そこそこ」ウケていた。彼女には絶対観て欲しい!!(そして話題を共有して、今後の我家のネタとして取り入れたい)と切に思った。

 先日「ツタヤ」で予備知識無く借りて来たDVDである。決め手は上野樹里主演、毎日カメにエサをあげるのが唯一の日課である平凡な主婦がスパイ募集に応募するというストーリー、だめ押しはパッケージから漂う「間違いなく面白い!」オーラで迷う事なく即決で借りてしまった。

 いきなり、もう冒頭より可愛い。やられた。まいった。分厚い本のぱらぱらマンガでスタートなのだ。「その本」がもしかしてメインテーマ?、と見事にフックにひっかかってしまい、すんなり作品の中に入り込めた。

 上野樹里と蒼井優の対極コンビもなかなか。(蒼井優があえてミスマッチな役柄にチャレンジ!) スパイ夫婦も息の合った微妙さがいい。温水洋一さん店主のパーマ屋さん(という設定から笑える)の、いかにも田舎町にありそうな(うちの近くにもある!ある!)寂れ加減もいい!(しかし客がパーマをかけている間、たしかに店主はすることがないんだ・・・ま、客一人って場合だけれど)

 喫茶店で「腎臓」をつくる主人公スズメ(上野樹里)に感化される人も多いのでは? あのソラマメ形の造形はムズカシそう・・・しかしそれでも「やってみたい!」と思う人は多かろうと思う。ストローの袋で「動く芋虫」づくりはKちゃんの得意技なので、彼女は「腎臓」にもトライしそうだ。 

 もしかするとこの映画に対して、「内容が無いよう」と思う方もいらっしゃるかもしれない。でも、干瓢のように皮に内容がある映画かもしれないのだよ。

 シュールで笑えて楽しめて、意外に味わえる作品なのでした。平凡、万歳! あるいは平凡など何処にもない、とも言える映画だ。

 見終わったあといつもの景色が違って見える、不思議に楽しい気分になれる。借りて良かった!と思えた「亀は意外と速く泳ぐ」
 ちょっとばかり控えめながら、おすすめの1本です。

火星人が街にやってくる

2006-11-23 22:49:55 | ドラマ
 今日はH氏に職場まで車で送ってもらった。昨日のブログのB級映画の話から、アメリカの映画監督ティム・バートンの話になって、火星人が地球を襲撃する、不条理でおバカな映画『マーズ・アタック!』の話で盛り上がる。ストーリーがネタバレなので、ご了承の上でお読みください。

「ティム・バートンって、B級映画大好きやったねんて。青春時代にB級映画見まくらはったオタクらしいねんけど、ほんまに面白い映画つくらはるねん。な、Kちゃん? 『マーズ・アタック!』何回見たかなあ」
「3回ぐらい(ビデオで)違うかな」

「それでまた、ティム・バートン監督の映画やったら出演したい!っていう役者さんがわんさといやはるみたいやねん。『マーズ・アタック』は、他の映画やったら主演級の役者さんが脇役で、しかもどんどん火星人にやられてしまうんやで」
「へええ」と映画にはほぼ無関心なH氏が、珍しく興味を示した。

「しかもえらいヒトたちとかは軒並み、火星人にやっつけられちゃうんやけど、最後に地球を救うのは認知症のおばあちゃんとそのおばあちゃんのことが好きで世話をしている孫やねん。あと、ゲームが大好きなスラムの子どもとか」

「それ、新しい映画やの?」
「ううん、Kちゃんが小さかったときに借りたから、10年くらい前かな」

 あとで調べたら1997年公開と判明。

 同じ監督の『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』は山盛りにグッズが出ているくらい一般受けしているけど、『マーズ・アタック!』はけっこうブラックだし、バカバカしいし(火星人が宇宙船の中で『PLAY BOY』を読んでる所が、私は好き)、結末は脱力するし(いや、私はいろんな意味で何回見ても「いいなあーっ!」と思っちゃうんだけど)で、人を選ぶ映画なのかもしれない。

 『ナイトメア』も大好きで何回もKちゃんとビデオで見た。愛知万博にKちゃんと行ったときには、向こうから歩いて来る女性の日傘を見て、「見て、Kちゃん! 『ドラキュラ・ブラザーズ』(『ナイトメア』に登場する吸血鬼たち。常にこうもり傘を日傘にしている)みたいな傘さしてはる!」「ホンマや!」と日常会話に織り込めるまでになった。

 私はほんとはそれほど映画好きでもなく、一般の人よりよほど見ないけれど、『マーズ・アタック!』には、無条件降伏だった。しかしこの映画については、見る人の嗜好と思考を忠実に映す鏡みたいに、100人100様の感想があるんだろうと思う。

 世の中には不条理なこともいっぱいあるけど、「弱者」「無能」「役立たず」呼ばわりされたって、そんな事屁でもないよと口笛吹きながら生きてゆけばいいじゃん、もしかしたらいつかどっかで役にたってるかもよ、という気にさせてくれる。私にとっては、底抜けに「優しい」映画なのである。
 
 ちなみに映画のクロージングの音楽はトム・ジョーンズの『どうにかなるさ』。最高! 最後までひねってくださいます、ティム・バートンさま。

Death Note

2006-10-28 23:51:07 | ドラマ
 昨日はとびとびだけど、「Death Note」の映画をテレビで見た。ストーリーやディティールはともかく(なんせ「とびとび」なので、「そのできごとの前」に何があったのかも判然としなかったりする)、作者のテーマへの意図についてとても興味深く思った。

 「人の死を思うままに操れるとしたら?」

 これは凶悪な犯罪者に対して厳しい罰を望む集団心理への警告なのかもしれないと思ったんだけど。
 たとえ「罰としての死」だとしても、「殺す=生きる事を奪う」ことができるのだろうか。逆に「殺人への臨界点」が低くなっているからこその「死をもって償わせる」ことへの躊躇はあった方がいいのではないだろうか。

 それよりもむしろ、被害に遭われた方々への手厚い保護と、同様の犯罪を生まないための根本的な対処に力を入れていただきたい。目先の、付け焼き刃みたいな対処ではなく。

 「凶悪で反省なき犯罪者には、問答無用に厳罰を」の声がほとんどで、でもどうしてもその意見に釈然としなかったのは、どんどん「死ぬこと」や「生きる事」の意味が軽く薄くなっていくことに、背筋が寒くなるような、足元が崩れて行くような恐ろしさを感じたからである。

 死神の持つ「Death Note」を手に入れて、凶悪で救い様のない犯罪者の名前を書き込み、次々と死に至らしめる主人公ライトは、「これで犯罪のない平和な社会ができる」「世界が変わる」と喜ぶが、自分が追いつめられるにつれ、罪のない人間までをも「Death Note」に書き込んで殺してゆく。

 安易に他人の死を望む事は、やはり穴を2つ以上掘ってしまうことなのだ。しかも一度「Death Note」を使ってしまえば、どんどん加速をつけていくようでそれも浮ゥった。死神に「おまえは本物の死神以上に死神らしいな」と言われてしまう程、ライトの感情は希薄になってしまう。

 なんだかストーリーは頭の横を通り抜けて、メインテーマだけが、ずかずかと心に入り込んで来るようなドラマだった。 

 自分も他人も、最小限「生きていること」が尊重されるにはどうすればいいのか、国を動かすような賢い人々には、充分に考えていただきたいものである。このままじゃ、かなりヤバいのでは。

 と、たまに柄にも無く真面目なことも考えてしまうから、PCに接続拒否されてしまったりするのである。

太陽 THE SUN

2006-10-17 21:36:12 | ドラマ
やっと見に行けた念願の映画『太陽』。前もって情報や内容を見たり読んだりしていたので、自分なりに「こういう感じ?」と予想や期待をしていったんだけど、あれ? 違う?という感じだったのが意外だった。

 いや、見たり聞いたりしたことが違っていたんではなくて、それはまさにその通りではあったんだけれど、私に引っかかって来る所が、自分であらかじめ予想していたのとは違っていたようなのだ。

 まず、なんでこの映画が「日本で上映を危ぶまれた」のかが、実はわからない。私が無知なだけかもしれない。大正13年に戦争が起こる原因となった事件がアメリカであったと、この映画では侍従長=佐野史郎、昭和天皇=イッセー尾形が口にしているけれど、それすら知らなかったもんな。きっと日本の近・現代史に造詣が深い方々が見れば、より楽しめるのかもしれない。

 それからこれも知識不足なので、想像でしかいえないのだけれど、絶対、隠喩や暗喩がちりばめられた作品なんだろうな、と思う。
 なぜ昭和天皇が賞賛する生物が「平家蟹」なのか、なぜ夢の中の東京大空襲のときに「巨大な魚」が爆撃するのか、なぜ「チャーリー・チャップリン」が想起されるのか、机の上の人物像など、疑問は果てしなく続く。それについて消化不良のまま、あれこれ思いを巡らすのは、実は楽しい。

 以前、萩尾望都のマンガ『残酷な神が支配する』を読んで、これと同様の消化不良を起こした事がある。気になってしょうがなかったところ、ネットで彼女のファンが「ああかな、こうかな」と論を立てているサイトを偶然見つけて「おおお~」と感嘆した事があった。例えば「卵」はイースターを連想させ、死と再生のシンボルである、とか。マンガの裏表紙の写真にも、深い意味が隠されているとか、たしか4人の才女達が素晴らしく面白い解説を語ってくれていた。やっぱりいろんなこと知ってると、読みが違うわ~、と感心するやら、羨ましいやら。

 それにしても、海洋生物が大好きで、紳士的で、何か国語もマスターされ、賢明な鋭いことをおっしゃる昭和天皇が、反面とても無邪気に振る舞うのが微笑ましい。
 自然科学系の博士?がよばれたときも、「あなたのお友達もここに」と、机上のダーウィン像をぽんぽんとたたかれたりとか。よばれた博士も「おおダーウィン!・・・」とうれしそうに目を細めて微笑むのが、マニアックな研究者らしくていい。
 そういえば彼は昭和天皇に対して、他の人達より「おそれおおくも」といったかしこまった様子が見受けられなかった。

 「人間宣言」をすれば、自分は「現人神」から解放されるのだ、と信じていたのに、玉音放送の録音技師が自害してしまう。
 「子どもですら天皇陛下は現人神ということを知っている」戦中の状況は、すぐさま日本人の意識やからだの中で変わることはないのだろう。ラジオによって「言葉」は届いても、その意味がきっちりと国民の中に入って行くのか、という不安。昭和天皇の孤独と絶望を慰めるのは、やはり家族だけだったのだろうか?

 それにしても不思議な映画だった。静かで寡黙なひとびと。説明のされない画面。色の少ない映像処理。退屈になりそうなのに、逆にぜんぜん気が抜けない。

 それと美的感覚みたいなのが、いかにもロシアっぽくて面白かったなあ。バラのなかで昭和天皇の写真を撮ってみたり(その庭には、なぜか鶴が一羽放し飼いにされていた)。マッカーサーと昭和天皇の会食するレストラン??の趣味とかも、なんだかロシアのひとって、こういうのがゴージャスで上品だと思っているのかと先入観と偏見でみてしまった。いけないよなー、先入観とか偏見、って思いつつも。

 ところで昭和天皇の机の上にあったのは、ダーウィン像と途中引き出しにしまいこまれたナャ激Iン像と、あとひとつは誰だったのだろう? あー気になる!