昨日よりの続きです。
借りたのは『旗指物(増補版)』(高橋賢一/著 新人物往来社 絶版)である。著者の高橋さんは、あとがきによれば歴史学者ではなく、たまたま国旗・外国旗を調べている内に、まるで命が爆発したカンブリア紀のように、軍旗が百花繚乱の体をなしていた戦国時代の旗指物にたどり着いたのである。
高橋賢一さん(1906≠P975 東京生まれ)は、ライフワークとして旗全般の研究に打ち込まれた。旗に関するエキスパートだったらしく、東京オリンピックには、旗の研究者として招かれ各国旗の考証をされたらしい。
そんな高橋さんのハートをわしづかみにしたに違いない旗指物。そのデザインの面白さは、予想通りのものであった。
商店街やスーパーで良く見かける「大売出」と書いた縦長の幟(のぼり)状のシンプルなものも、もちろんいくつもあるが、度肝をぬかれるもの、ナゾをかけている知的レベルの高度なものから意味不明な脱力ものまで、かなりのレパートリーだ。以下に列挙する。
赤い唐人傘(上下二段というのもある)、蝶の羽、団子(三つ串に刺した「だんご三兄弟」状のもの)、うちわ、扇子、禿(細い糸状のものが、カツラのように房?になったもの)、将棋の駒の「香車」、風車(かざぐるま、それも5、6個)、簾(なぜ、お公家さんのようなすだれ!?)、停エ(魔女か !。!)、ちょっと凝ったデザインの釣鏡(ドラキュラ対策か、白雪姫の継母か!?)。
それぞれが、いかにも安土桃山な、キッチュなデザインである。
もっと度肝を抜かれるのは、「死をも恐れぬ覚悟をもって戦に挑んでいる」という心意気もあらわな、普通はほとんど不吉ともいうべきデザイン。
たとえば、「髑髏(どくろ)」。びっくりしますよ、普通の人は。今でこそTシャツのデザインなんかで大人気だけど、戦国時代のこれはデザイン的にも、いかにも野ざらしにされた薄幸感満載の不気味系シャレコウベ。こんなの戦場で相見えたら、一気に戦意喪失である。
たとえば、五輪、位牌、塔姿なんかのデザインも、「いや、それはまだ早すぎるのでは・・・」と、敵側もドン引きしかねない。
「いろはにほへと」と書いた旗は、次に続く「ちりぬるを」を暗示しているそうで、いかにも上品で奥ゆかしい日本的な謎鰍ッだ。
でも不吉部門でもっとも目を引かれるのは、ふんどし一つで磔にされた武士が描かれた旗である。これは凄い!! いや、この旗ができるまでのエピソードはなかなか胸打たれる話でもあるのだが。
旗指物についてよく引用されているエピソードとしては、戦では邪魔になるからと、旗指物なしで勇猛果敢に戦い大活躍した武将より、赤い唐人傘で、しかもその傘のふちには金色の短冊がひらひらと付いた旗指物をした武将の方が目立っていたため、査定が高かったというのだ。それはズルいといえなくもないが、あえて作戦勝ちと言っておこう。
しかし目立てばいいというものでもなく、目立つことを重視したあまりド派手でかさばる旗指物は、やはり戦には邪魔なものには間違いない。旗指物のために動きが取れずに命を落とした武将もいたことだろう。
でもなあ、団子デザインの旗の下で命がけで戦うって・・・ちょっと笑えるなあ。
「この軍では戦に勝てば、思う存分団子を食わせてやるぞ!」という約束でもあったのであろうか? 団子で戦意高揚か? だんご三兄弟もびっくりな旗指物だ。 私の中では、そのミスマッチ感ゆえにャCントの高い物件なのである。
*旗指物については、ネット上できちんと分類され整理され解説されたページもありますので、ご興味を持たれた方は検索してみてください。
借りたのは『旗指物(増補版)』(高橋賢一/著 新人物往来社 絶版)である。著者の高橋さんは、あとがきによれば歴史学者ではなく、たまたま国旗・外国旗を調べている内に、まるで命が爆発したカンブリア紀のように、軍旗が百花繚乱の体をなしていた戦国時代の旗指物にたどり着いたのである。
高橋賢一さん(1906≠P975 東京生まれ)は、ライフワークとして旗全般の研究に打ち込まれた。旗に関するエキスパートだったらしく、東京オリンピックには、旗の研究者として招かれ各国旗の考証をされたらしい。
そんな高橋さんのハートをわしづかみにしたに違いない旗指物。そのデザインの面白さは、予想通りのものであった。
商店街やスーパーで良く見かける「大売出」と書いた縦長の幟(のぼり)状のシンプルなものも、もちろんいくつもあるが、度肝をぬかれるもの、ナゾをかけている知的レベルの高度なものから意味不明な脱力ものまで、かなりのレパートリーだ。以下に列挙する。
赤い唐人傘(上下二段というのもある)、蝶の羽、団子(三つ串に刺した「だんご三兄弟」状のもの)、うちわ、扇子、禿(細い糸状のものが、カツラのように房?になったもの)、将棋の駒の「香車」、風車(かざぐるま、それも5、6個)、簾(なぜ、お公家さんのようなすだれ!?)、停エ(魔女か !。!)、ちょっと凝ったデザインの釣鏡(ドラキュラ対策か、白雪姫の継母か!?)。
それぞれが、いかにも安土桃山な、キッチュなデザインである。
もっと度肝を抜かれるのは、「死をも恐れぬ覚悟をもって戦に挑んでいる」という心意気もあらわな、普通はほとんど不吉ともいうべきデザイン。
たとえば、「髑髏(どくろ)」。びっくりしますよ、普通の人は。今でこそTシャツのデザインなんかで大人気だけど、戦国時代のこれはデザイン的にも、いかにも野ざらしにされた薄幸感満載の不気味系シャレコウベ。こんなの戦場で相見えたら、一気に戦意喪失である。
たとえば、五輪、位牌、塔姿なんかのデザインも、「いや、それはまだ早すぎるのでは・・・」と、敵側もドン引きしかねない。
「いろはにほへと」と書いた旗は、次に続く「ちりぬるを」を暗示しているそうで、いかにも上品で奥ゆかしい日本的な謎鰍ッだ。
でも不吉部門でもっとも目を引かれるのは、ふんどし一つで磔にされた武士が描かれた旗である。これは凄い!! いや、この旗ができるまでのエピソードはなかなか胸打たれる話でもあるのだが。
旗指物についてよく引用されているエピソードとしては、戦では邪魔になるからと、旗指物なしで勇猛果敢に戦い大活躍した武将より、赤い唐人傘で、しかもその傘のふちには金色の短冊がひらひらと付いた旗指物をした武将の方が目立っていたため、査定が高かったというのだ。それはズルいといえなくもないが、あえて作戦勝ちと言っておこう。
しかし目立てばいいというものでもなく、目立つことを重視したあまりド派手でかさばる旗指物は、やはり戦には邪魔なものには間違いない。旗指物のために動きが取れずに命を落とした武将もいたことだろう。
でもなあ、団子デザインの旗の下で命がけで戦うって・・・ちょっと笑えるなあ。
「この軍では戦に勝てば、思う存分団子を食わせてやるぞ!」という約束でもあったのであろうか? 団子で戦意高揚か? だんご三兄弟もびっくりな旗指物だ。 私の中では、そのミスマッチ感ゆえにャCントの高い物件なのである。
*旗指物については、ネット上できちんと分類され整理され解説されたページもありますので、ご興味を持たれた方は検索してみてください。
染色工場を継いだ事から旗に興味を持ったとの事
実家には旗や旗指物の書籍が沢山ありました。
書いていただきありがとうございました。
コメントありがとうございます! 「旗指物って、なんだろう?」と、たまたま(仕事中に!)手に取った一冊でした。あまりに面白くて借りて帰り、じっくりと拝見して記事にしました。高橋さんのお孫さんからコメントをいただき、とてもうれしいです。