私の名前はキム・サムスン 〆９

　　第９話　「あなたは私があげた心をオモチャのように…」

父さんと話していたら、ちょっとだけ気分が晴れた。
迎えに来た姉さんは、ふられるのは当然だって言うけれど、
彼が好きな気持ちはどうしても止められない。

そんなサムスンに、ジノンの母から連絡が入った。
「明日の朝迎えに行くから家の前で待ってなさい」
サムスンが連れて行かれたのは、法事の席。
もちろん彼女を嫁と認めたわけはないけれど、
ジノンの心をヒジンから引き離そうという母の思惑がある。
当のジノンは、母に連れられてきたサムスンを見てびっくり。

ジノンの兄夫婦の事故に巻き込まれ、死んだバイクの青年は
オ支配人のひとり息子だった。
その縁で、ジノンは彼女をレストランの支配人にスカウトしたのだ。
退職し、ひとりぼっちになった彼女を心配してのことだった。

サムスンは、ジノンとデートでもしなさい、と置いて行かれる。
彼女とは別れた、という息子を、母は許さない。
とはいえ、ジノンもサムスンとヨリを戻す気は毛頭ない。
サムスンも辞職願いをジノンに叩きつけて、バスで帰ることにした。
ところが、ふもとのバス停で待っていたのはバラの花束を持ったジノン。
「パティシエのあなたへの花束ですよ」
「じゃひざまずいてよ」
心が動けば、辞職は撤回するというサムスン。
仕方なくジノンは膝をついて花束を手渡した。
ふふっと笑うサムスンは、それでも辞めると言い張った。
彼女のプロ意識の欠如を指摘するジノン。
確かにそれももっともだ、とサムスンは彼に２週間の猶予を与えた。

サムスンが社長と別れたという話は、あっという間に各方面に伝わった。
ジノンに、トイレで幼稚な仕返しをしたり、
後輩を誘って踊りにいったり、気晴らししようと思うサムスンだが、
ちっともすっきりしない。ちぇっ。

夜の庭、ブランコに座ってひとり泣いているサムスンを見つけた母は、
姉を問い詰めて事情を聞き出した。
ふがいない娘の姿に怒り心頭の母は、ジノンの家に怒鳴り込むと大騒ぎ。
「契約恋愛なのよ！恥かくだけよ！」
姉の言葉に、ますます怒った母は、家を売ってでも借金を返そうとする。
大事な娘がここまでコケにされて黙っている気はない。
とうとう店に怒鳴り込んで大暴れ。
サムスンは約束の２週間を待たず、退職することになった。
ジノンは必死で引き留めるが、母の怒りを鎮めるためには仕方ない。
心細げなイネのために、修業時代からの大事なレシピノートを手渡した。

サムスンも店を辞めるのは悲しく、心が残る。
ジノンも去って行くサムスンを見送って、ため息をついた。

（つづく）


うんうん、サムスンもフクザツだよね。
仕事は大好き、プライドもある。
でもお母さんの怒りは相当なもので、
自分を愛してくれるがゆえだとわかっているから、辞めざるを得ない。
せめて後任を探してからと思ったけれど、それも無理。
こんな形で辞めたくなかった。
仕事仲間もさすがに契約恋愛のことは知らないから、
社長と別れて辞めちゃうんだ～とフクザツ。
でも、何よ！そんなことぐらいで辞めるの？！と反感を買わないのは、
これまでのサムスンの仕事ぶりと人徳だね。

はぁ～、いちいちイラつくのはジノンとヒジンのいちゃつきっぷりっすよ。
膝枕で耳掃除とかさ～
お店で人目もはばからないキスシーンとかさ～。

腹立つ！

ま、ふたりにはなんの罪もないですけど。
ジノンには、あるか？
と言われれば、あるよーな、ないよーな。
契約は契約だし。
一応最初の取り決め通り、借金はチャラにしたわけだし。

お母さんの許せないところは、そこなんだけどねー。
人の心は契約でどーにかなるもんではない。
違反したから違約金払ってはい、おしまい、なんて割り切れるものではない！
きわめて正論です。
しかもサムスンは本気で相手の男を愛しちゃってるし。
ええい、腹立つ！
暴れるしかないよね、お母さんはさ。

ところが！
ジノンはヒジンとラブラブですけれど、
あちこちでサムスンのことを思いでしているんだよね。
「モモ」の話をするとき。
そして「その台詞インターネットで仕込んだの？」っていう時。
ふとした瞬間に、サムスンと過ごした記憶が顔を覗かせている、という印象です。
ヒジンと聞いた「オーバーザレインボウ」も、
へたしたらサムスンとの思い出が上書きされているんじゃないの～？

愛していたヒジンを憎んで恨んで音信不通で３年間。
うん、この３年は長いぞ。

ふと思うんですけど、世の中には遠距離恋愛向きの人と、そうでない人がいるんでしょうか？
私は確実にそうでない人。
流されやすいといえば流されやすい。よく言えば適応能力が高い。
確固たる理想の男とか、無いし。
意志……弱いし……。
遠距離でも大丈夫な人は自立してて立派な人なんだろうな～。
なんて意味なく落ち込みつつ、次回へ続く！

サムスン、恋愛問題にはへにょへにょのしおれたレタスみたいですけど、
仕事に関しては手抜きなし、イネちゃんによくしてあげて、カッコイイ姐御です。
このギャップが、アラサー女子の可愛さかもしれないね。