尖閣諸島国有化以来10年間、中国公船の尖閣海域侵入カレンダーを記録して参りました。この間、中国公船の行動はサラミスライスの如くエスカレートし続け、今では「尖閣諸島は、中国のものになってしまった」と言っても過言ではない状況になっています。
そこで今回、改めてその「エスカレート」振りをまとめてみました。
(表1下をご覧ください)
赤字は、直近の状況です。
Ⅰ 中国公船のエスカレートの実態について
(1)中国公船の所属の推移と武装化
公船の名前は、10年ほど前は「漁政」でしたが→「漁監」→「海警」→今は『海警』に。
『海警』は、4年前人民解放軍中央軍事委員会に所属し、習近平直轄。今では16ミリ機関砲を装備した旧フリゲート艦もあり、第2の海軍と言われています。
(2)尖閣海域(接続水域・領海)への侵入エスカレート(図参照)
ア 海域侵入について
・年間侵入日数と年率;
R1年276日(76%)→R2年333日(91%)→R3年334日(91%) →R4年327日
(台風避難による不侵入日を除き、侵入がほぼ常態化しています。)
・連続侵入日数の更新
R2年111日→R3年(2/13~7/19)157日
イ 領海侵入日数について
尖閣諸島国有化以降では、355日(R4年末)にもなります。
令和に入ってからは、年間領海侵入日数は、30日台におさまっていますが、その代わり、領海滞留時間が大幅に更新され続けています。
26時間(R2.5月)→30→39→58→64(R3.6月)→72時間45分(R4.12月)
日数では、 2日 → 3日 → 4日に及んでいます。
(日本漁船の操業時間に伴い、追尾・接近時間も長くなっています。)
ウ 交代の場所について
以前は、接続水域の外で公船の交代が行われていましたが、次第に接続水域内になり、今では日本領海内で堂々と行われています。
エ 「海警」の行動に変化
2020年6月を境に、通常パトロールから日本漁船追い出しへエスカレート。
領海侵入時間も、日本漁船がいない通常パトロールの時はほぼ1時間45分であったが、日本漁船がいるときは、その操業時間にあわせ、追尾時間も加わり領海内居座り時間は飛躍的に長くなった(イ参照)。
3)領海「侵入」ではなく、領海「侵犯」、また、中国「公船」ではなく、中国「軍船」と呼ぶべきである。
理由:国際海洋法条約(19条)では、「通航は、継続的かつ迅速に行わなければならない。」また、通航が、「沿岸国の平和、秩序、又は安全を害しない限り、無害とされる」と規定されています。
しかし、中国「海警」は、そのいずれにも違反しております。従って、明らかに無害通航ではない通航であり、「侵犯」と呼ぶべきでしょう。
また、公船ではなく軍船(八重山日報は艦船)と呼ぶべきでなでしょうか?
Ⅱ.中国公船「海警」に関する法的エスカレートについて
・2,010年7月1日 中国国防動員法施行
・2,015年7月1日 中国国家安全維持法施行
・2019年6月海警局を人民解放軍中央軍事委員会に編入
・2020年6月「海警」は、人民解放軍の指揮下で行動を共にする事が
可能となる。
*5月8~10日、「瑞宝丸」事件 発生。以後、日本漁船への接近・追尾が頻発する。
*12月「鶴丸」初出漁で、「海警」に付き纏われる。
・2021年2月1日「海警法」施行。武器使用が認めらる。
→特に接続水域では、中国の海上行動が新たな段階に突入して先鋭化し、
尖閣諸島の実効支配化に乗り出すと予想され、日本漁船の追い出し頻発。
同4月、「改正海上交通安全法」可決。違法船とみなした漁船の
拿捕や関係者に罰金を科すことが決められた。(9月1日施行)
同9月1日自国領海に侵入する外国船舶に対して申告を義務化